[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 3節 1話*幼馴染の女神


前書き

ついに新節突入です!

青年男性向け – ソフト – R18

第3節 幼馴染 (第1章 勇者の村)

第 1 / 19 話

約 17,900 字 – 24 場面 (各平均 約 745 字)


1/24. 幼馴染の「」の番がきた

マナリスさんとの後この世界に帰ってきた俺は異世界へ行く準備をしつつ女性達と会っていっているのだが幼馴染の優美華ちゃんの番がきた。

優美華ちゃんとは家が隣同士の幼馴染でお互いにちゃん付け君付けで呼び合う仲で俺にとって優美華ちゃんはメイドでありながらも正妻の様な位置付けだった。

そしてこの女性達とのデートは俺が異世界へ行く行かないに関わらず元から企画しているお祝いイベントだった。

優美華ちゃんは俺が執務室にいれば会いにくるとの事だったので俺は執務室で優美華ちゃんの事を待っていた。

すると扉をトントンとノックする音が聞こえた。

「裕太君、優美華だよ。お待たせ。入っても良いかな?」

もちろん構わないし俺が開けてやるか。

「もちろん良いよ。僕が開けてあげるね」

さて今日の優美華ちゃんはどんな服装かな。

デートをする予定なのでほぼ間違いなくメイド服ではなく本人が好きな可愛い系のコーデなのだろうとは思っている。

「うん」

優美華ちゃんは素直でいい子だ。凛穂なら「いえ……!私が開けます……!」となっていた事だろう。まぁそれは当番の時の事で非番の時はそうはならないかもしれないのだが。

「どうぞ、入って」

俺は扉をガチャっと開け優美華ちゃんに室内に入る様に促した。

「ありがとう裕太君」

いやぁ優美華ちゃんはいつも笑顔が素敵で可愛くて綺麗で接していると疲れが取れる癒し系の女性だ。

そして俺は優美華ちゃんが部屋に入ってくれば扉をガチャっと閉めたのだが優美華ちゃんがさっそく俺を抱き締めディープにキスしてきた。

「そう思ってくれていてありがとう裕太君」

たっぷりとキスすると優美華ちゃんが驚く事を言ってきた。

え……!?――まぁいい。これは昔からよく有る事なのだ。本人曰く「多分 言い直しですので気にしないでください」らしい。

でもなんか優美華ちゃんもアンやマナリスさんの様にその正体は神でヒューマンの心の中の事なら余裕で見透かせているとかなのだろうか。

「うん。そうだよ」

え……!?

優美華ちゃんはいつもの周囲にお花のオーラが放たれていそうなくらいの無垢な笑顔でそう言った。

……しかしここで色々訊くのは無粋な気がするし優美華ちゃんが女神だと分かったとたんに様呼びに切り替えるのも違うだろう。

2/24.「何でも訊いてね」

「うん。今まで通りでお願い。それと訊きたい事が有ったら何でも訊いてね。あと接し方も今まで通りが良いな」

ふむふむ。

「分かったよ。おいおい訊いていくし今まで通りに接する事にするね」

俺は別に優美華ちゃんが人間ではなかったとしても態度を変えるつもりは無い。

俺がそう心の中で思うと――。

「ありがとう裕太君……!」

――優美華ちゃんはちょっと泣き出してしまった。

まぁ自分が人外(じんがい)だと打ち明けるのは相当勇気の要る事だったのだろうと思う。

それに罪悪感とかも有るだろうしな。

「ゆ、優美華ちゃん。僕ので良ければこれまだ使ってないやつだから」

俺は優美華ちゃんにハンカチを手渡そうとした。

「ありがとう……!」

優美華ちゃんは俺のハンカチを素直に受け取り涙を拭(ぬぐ)った。

いやぁ助かる。

というのももし俺がハンカチを受け取る側だったら申し訳無さ過ぎて絶対に受け取らないからな。

「裕太君、私は裕太君が手を拭きたい時でも泣きたい時でもいつでも私のハンカチを使ってほしいな」

俺もそれが出来たら苦労しないんだがな。

「そう言ってくれてありがとう。ところで優美華ちゃんは今日も可愛くて綺麗だね」

俺は自分の本音について突かれる前にとりあえずカミングアウトされる前の気持ちに切り替えた。

予想通り優美華ちゃんは可愛い系のコーデで来てくれているしその事を褒めた。

「もう。裕太君ったら遠慮し過ぎだよ。でもそんな優しい裕太君が私は大好き。仕方が無いので私も気持ちを切り替える事にするね。あとハンカチは洗っておくよ。――フフ♡ありがとう。でも裕太君だって今日もカッコイイよ?」

そう言ってくれるのはありがたい。

ぶっちゃけ俺はベージュやホワイト、薄青色のタキシードといったフォーマルな服装が好きで普通のファッションが出来ないのが若干コンプレックスで崩せてもジャケパンまでなのだ。

3/24.「これから何したい?」

「優美華ちゃんがそう言ってくれて僕は嬉しいよ。さて優美華ちゃんはこれから何したい?」

ちなみに俺は優美華ちゃんとは一人称が「僕」で口調も優しい系の「アベル」で接している。

まぁこれは俺がアンの時の様に優美華ちゃんに訊いた時に優美華ちゃんがそうリクエストしたからだ。

そしてもちろん「アベル」自体は偽名なのだが俺の中では「アベル」イコールそういう一人称と口調という風に定義化されている。

しかしそんな「アベル」が出来上がってしまったのは高校時代の英語教師とのイメージプレイのせいなのだが、それは今はさておき俺は優美華ちゃんがどういうデートプランを告げるかを見守るとする。

「それじゃあまた抱き締め合ってキスしよ?」

ガタン!――俺はまるでバラエティ番組でお笑い芸人達が「そ、それかい……!」となった時などにひな壇から一斉に前のめりになって崩れ落ちる芸が脳裏をよぎった。

「フフ♡私もあれ好き」

優美華は思い出した様に微笑んだ。

「面白いよね。僕も好きだよ」

俺も優美華ちゃんと笑い合った。

というのも俺は結構ゲラなのだ。

「一緒だね♡じゃあ裕太君、する?」

俺はイタリアの一件もあり相手を気遣って積極的になれない時が有るから優美華ちゃんから言ってくれるのは非常に助かる。

「もちろん僕も優美華ちゃんとしたいよ」

俺は微笑んでそう返事した。

もちろん本音だ。優美華ちゃんは癒し系だし癒されるからな。

「フフ♡じゃあしよ♡」

優美華ちゃんはそう言うと俺の事を抱き締めてきた。

「うん。しようね」

俺もそう言うと優美華ちゃんの事を抱き締め返し再び甘く深くたっぷりとキスし合った。

4/24.「これ、受け取ってほしいな!」

「ねぇ、裕太君!大学卒業おめでとう!これ、受け取ってほしいな!」

優美華ちゃんは糸を引く様に唇を離すと片手に持っていた紙袋を俺に手渡そうとしてきた。

「ありがとう。ところで今開ける?それとも後で開ける?」

そして俺は優美華ちゃんからその紙袋を受け取ったのだが……――。

――しかしうわぁ……優美華ちゃんにお金を使わせてしまった事が本当に申し訳無さ過ぎる。

きっと自分のお給料で買ってくれたのだろうし俺はメイドをしてくれている優美華ちゃんにあまり満足のいくお給料をあげられている気がしないので非常に申し訳無く思っている。

まぁ優美華ちゃんが昇給を望んでいないしそれ以上のお金を受け取ってくれないのでどうしようも無いのだが。

「私はもう十分に満足してるから気にしないで!」

そうは言われてもなぁ……。

そもそも優美華ちゃんは俺に準ずる2位の学力を有しているのだから俺のメイドなんてする必要が無いのだ。

下手したら暗記問題が多いペーパーテストなら俺が優美華ちゃんに負けるまで有る。

「優美華ちゃんは今開けるのと後で開けるのとどっちが良いのかい?」

俺は優美華ちゃんのしてほしい方を選びたい。

「じゃあ今開けてほしいな!」

おっす。

別にプレゼントなんてくれなくても俺からすれば優美華ちゃんがいてくれているだけで贈り物だよ、って感じなのだがなぁ。

「フフ♡ありがとう」

しかし心の中の事が相手に筒抜けって便利だけどめちゃくちゃ恥ずかしいよなぁ……。

それに俺は今までの心の中の声が優美華ちゃんにも筒抜けだったのだと思うと優美華ちゃんの微笑みは意味深で何でも見透かされている様な気がしてきた。

「そんなに覗いてないから安心してほしいな!」

そ、そっか……。

しかし優美華ちゃんが俺の心の中を覗いている時に優美華ちゃんが不快になったり失礼に当たる様な事を言ってしまっていないだろうか……。

「大丈夫だよ」

なら良かった。

5/24.「それじゃあ開けるね」

「それじゃあ開けるね」

俺は優美華ちゃんが望む通りにしようと思った。

「うん♡開けてみて」

優美華は裕太の反応が楽しみだった。

そして俺は優美華ちゃんがくれた贈り物を開けた。

「あ、これは。ありがとう」

開けるとプレゼントの中身は金色と茶系のグラデーションのネクタイとポケットチーフだった。

俺はネクタイは奴隷な感じがして全く使っていないのだが、金色系のものは前から買おうかと悩んでいたのだ。

金色系のネクタイなら妥協して使っても良い、くらいの感覚だ。

まぁ純粋に嬉しくて笑みがこぼれた。

しかし優美華ちゃんはいつそれが分かったのだ?優美華ちゃんと来た仕立て屋で一瞬だけ見た記憶は有るのだが……。

「さっそく着けてみる?」

おー、それは面白いかもしれない。

「着けてみるよ」

俺は一旦手荷物を近くに置きネクタイを装着しようとするが――。

「私が着けてあげるね」

――優美華ちゃんが着けようとしてきた。

「分かったよ。お願い」

優美華ちゃんが着けようとしてくるのでここは抵抗せず素直に優美華ちゃんのしたい様にさせてあげる事にした。

「うん。任せてね」

優美華は嬉しそうに裕太にネクタイを着けていった。

まぁ優美華ちゃんは俺のメイドだししかし今非番の優美華ちゃんにそうさせてしまうのは憚(はばか)られるのだが当番の時はいつも優美華ちゃんがネクタイを着けてくれるからだ。

「はい。出来たよ」

俺は大人しく優美華ちゃんにネクタイを装着されポケットチーフも入れてもらった。

「鏡で確認してみてね」

優美華ちゃんはさすが有能なメイドなだけの事は有り手鏡の用意もバッチリだった。

6/24.「ありがとう『』」

「気に入ったよ。ありがとう優美華ちゃん」

俺は鏡を見て自分の身なりを確認したのだが思っていた以上にフィットしていた。

もしかしたらネクタイ恐怖症は若干克服出来たかもしれない。

「似合ってるよ」

優美華ちゃんがそう言って微笑んでくれた。

「じゃあ僕からも優美華ちゃんに。大学卒業おめでとう。――で、これがプレゼント」

俺も優美華ちゃんにプレゼントを手渡そうとした。

「わぁ!ありがとう!――今開けても良い?」

優美華ちゃんは素直に受け取ってくれたし嬉しそうで良かった。

「もちろん。喜んでくれるかどうかは分からないけど」

俺は優美華ちゃん達の様に相手の思考を覗く事は出来ないからな。

ドンピシャで相手の好みの物をプレゼントする事が出来ない。

「どんな物でも嬉しいから大丈夫だよ!」

それはそれで何か違う気がするが……。

「じゃあ開けるね!」

優美華ちゃんは今にも開けたそうにしていた。

「うん。どうぞ」

もちろん俺は優美華ちゃんが今すぐ開けたいのならそうさせたかった。

そして優美華ちゃんは紙袋からケースを取り出し中を見た。

「わぁ!腕時計なんだね!ありがとう!」

俺は優美華ちゃんにレディースの腕時計をプレゼントした。

まぁ高価過ぎても優美華ちゃんが犯罪に巻き込まれかねないと思い程々の物にしてある。

とりあえず高価な物を中々買いたがらない優美華ちゃんには俺がプレゼントするしか無いと思い贈る事にしたのだ。

「うん。でも申し訳無い」

俺が優美華ちゃんへのプレゼントに腕時計を選んだのは結局のところ俺の「エゴ」なんだろうしな。

7/24.「今身に着けてみても良いかな?」

「大丈夫だよ。裕太君。とっても嬉しいよ。ねぇ、今身に着けてみても良いかな?」

優美華は心の底から嬉しかった。

「うん。良いよ」

まぁ後回しにされるよりは今身に着けてくれる方が俺としては嬉しかった。

「こう、かな?」

優美華は自分で腕時計を身に着けるのが初めてだった為裕太に確認した。

「うん。それに似合っているよ」

俺は本音を言った。

「ありがとう!私も気に入ったよ!大事にするね!」

優美華は好きな人からプレゼントが貰えて本当に嬉しかった。

「僕も優美華ちゃんが喜んでくれて嬉しいよ」

俺としてはとりあえずプレゼントが上手くいった様で良かった。

まぁ犯罪の心配が無ければ4桁万円のトゥールビヨンのを贈れていたのだが。

そして俺が優美華ちゃんに腕時計をプレゼントしたのには優美華ちゃんに高価な物を買ってあげたかっただけでなく優美華ちゃんも大学を卒業した事だし俺のメイドなんていつまでもしている様な仕事でも無いだろうからな。これから社会に出ていく優美華ちゃんへの餞別(せんべつ)の意味合いも有ったのだ。

「裕太君、私は裕太君のメイドでも奥さんの様な存在として裕太君の側で支えていきたいの。だから私は裕太君から離れていくつもりは無いし裕太君と一緒にいられるなら腕時計だって高価じゃなくても良いんだよ?」

優美華は今の状態が十分幸せで他所(よそ)の会社に就職するつもりも無かった。

「ん~」

しかし俺は疑問に思う。そもそも俺は優美華ちゃんからそれだけ愛される程の事をしているだろうか?と。

「してるよ、裕太君」

優美華ちゃんが再び俺を抱き締めてキスしてきた。

8/24.「例えばどんな事をかい?」

「例えばどんな事をかい?」

してるとは言われても納得がいかなかった俺は優美華ちゃんに具体的な事を訊いた。

「例えば……幼い頃から上手く声も出せなかった私と一緒に遊んでくれたり私がいじめられそうになった時も助けてくれたり今も私の事を大事にしてくれてるからだよ」

優美華は幼い頃から優しく接してくれた裕太の事が大好きだった。

「僕の方こそ今でも側にいてくれてありがとう優美華ちゃん」

俺は優美華ちゃんの言った事で納得し優美華ちゃんに感謝すると抱き締め返し見つめてそう言うと――。

「私の方こそありがとう裕太君」

――優美華ちゃんも感謝してくれてついにキスし返した。

そしてそれをたっぷりと満喫した後――。

「優美華ちゃん、次は何がしたい?」

――俺は優美華ちゃんに次にしたい事を訊いた。

「えっと私も裕太君とドライブデートをして、ホテルでディナーを食べて、最後は裕太君の寝室で裕太君とその……Hな事したいな」

私も……!?

俺は優美華ちゃんの言った事の一部に耳を疑ったが――。

――優美華ちゃんのリクエストには俺も概(おおむ)ね同意だった。

「分かった。行こう優美華ちゃん!」

俺は優美華ちゃんをエスコートするべく左の手の平を差し出した。

「うん!裕太君!」

優美華ちゃんは俺が差し出した手の平に恋人繋ぎで応じてくれた。

かくして俺は優美華ちゃんと共にドライブデートに繰り出した。

9/24.「どうして『』をしてくれているのかい?」

そして俺は優美華ちゃんに訊いた。

「ところでどうして女神様の優美華ちゃんが僕の幼馴染でメイドをしてくれているのかい?」

アンみたく前世の俺が前世で引っ掛けた女だったりするのかなぁ……。

「話は長くなるけどいい?」

もちろん。

「先ず私は神クロノスにより拉致されてデスゲームに無理矢理参加させられたの」

優美華ちゃんはいきなりぶっこんできた。

「『神クロノス』って?」

俺はそれが誰なのか分からなかったから素直に訊いてみる事にした。

「人の命を軽視してゲームと称して殺し合いをさせている最低な神だよ」

優美華ちゃんはクロノスの話になると珍しく怒っていた。

おそらく優しい優美華ちゃんが本気で怒る程最低な神だったのだろう。

まぁ人を無理矢理連れ去ってデスゲームをしているぐらいだからどう考えても最低な神なのは間違い無いな。

「うん!最低だよ!でも今はちゃんと監獄に入れられてるから心配しないでね」

しかし罪の重さと罰が釣り合っていない気がするのだが……。

「私もそう思う!でも永遠に生きられる神々にとっては監獄生活ってとっても辛いみたいだから」

まぁ言われてみればそうだな。永遠に続く「無期懲役」みたいなものだろう。

「そうなの。それで長い監獄生活でおかしくなっちゃう神も珍しくないんだって」

ま、それは良い気味だな。俺としては罪の重さだけ罰を受けてくれていれば被害者達が多少は報(むく)われるだろうと思っている。

「私もそう思うよ。あんなに酷い事してたんだから……」

俺は優美華ちゃんの表情や口ぶりからその神もそのデスゲームも相当酷かったのだろうと思った。

10/24.「それにしても『』な目に遭ったね」

「それにしても神に拉致されて無理矢理デスゲームに参加させられるって大変な目に遭ったね」

俺はやはり神には人間には抵抗出来ない程の理不尽な実行力が有るのだなと、絶対に敵に回してはいけないとゾッとした。

「うん。大変な目に遭ったよ。私、その時は今とは比べ物にならないぐらいコミュ障で意気地無しで失語症で何もかもが怖くてデスゲームが始まる前怯える事しか出来なかったの」

俺は優美華ちゃんにはとびっきりの辛い過去が有ったのだなと同情しているのだがそれが俺の幼馴染でメイドをしてくれている訳と全く結び付かず困惑していた。

「でも今はすっかり治っているよね?」

俺は優美華ちゃんに「そんな辛い過去が有っても克服出来たんだね」と前向きになれる様に返事をしていこうとした。

「うん。ある人のおかげで治ったの。私がそうやって怯えていた時にその人が助けてくれたの」

治ったのは良かったねぇ。

「うん」

男の人だったり?

「そう」

あらやっぱり。

てか一体誰なんだそいつは……!なんだかちょっと嫉妬してきちゃったかも……!

俺はこれからどう頑張っても優美華ちゃんの心の中でその命の恩人みたいな人を超えられる気がせず絶望してきてしまった。

「フフ♡大丈夫。その男の人って裕太君の事だから♡」

え!?

「裕太君が私を助けてくれたの」

ん?

「それっていつの事?そんな記憶無いのだけれど」と俺は言いたいところなのだが。

11/24.「その時の『』が無いもんね」

「そうだよね。裕太君にはその時の記憶が無いもんね」

優美華は裕太が自分の事を忘れてしまっている事がやはり悲しかった。

残念ながらそうだな。

しかし優美華ちゃんは幸せな思い出を語る様に話しているが俺は優美華ちゃんに何か粗相をしてしまったのではないかと心配なのだ。

これはまるでお酒を飲んだ後昨晩の記憶が無く自分が何かとんでもない事をやらかしたりはしていないだろうか?と不安に駆られてしまう様なものだ。

「それでその後はどうなったのかい?」

俺は不安を抱きつつもその後(ご)の事を訊いた。

「フフ♡大丈夫だよ。裕太君は紳士だもん。ちなみに『優美華』って名前をくれたのも裕太君なんだよ?」

俺が優美華ちゃんに粗相をしていなかったと分かって安心したのだが「優美華」と名付けたのが俺だったとはな。

しかし俺は名付けが好きだなぁ……。

アンしかり凛穂しかり俺は親でもないのによく名付けをしている気がする。

しかし俺はそもそも優美華ちゃんがデスゲームに巻き込まれたのが前世の事なのか今世の事なのかさっぱり分かっていない。

「前世と言えるのかは分からない。ただ私達の体は確かに本物だったし殺し合いは本当に有った事。でも参加者でその時の記憶が残っているのは私だけ。それに場所もこの星じゃない。でも同じ科学の世界だけど遠くの銀河のとある星での出来事」

んー俺は魔法の世界に行ってたんじゃなかったのか?

俺のわずかながら残っている魔王説が完全に否定されてしまいそうなのだが。

「魔法の世界から戻ってきた後の事だよ」

その後か。しかしその後にそんな事が有ったなんてな。

12/24.「名前の由来は『』とか?」

「そうなんだね。まぁ僕が優美華ちゃんに粗相をしていなかったと分かって安心したよ。優美華ちゃんの名前も僕が付けていたんだね。それで……名前の由来は『優美華ちゃんが優しくて美しくて希少で高潔な花の様だから』とか?」

俺は自分だったら何を根拠に優美華と名付けるかと考えてみて正解かどうか訊いてみた。

「裕太君……!裕太さん……!」

優美華は突然泣き出してしまった。

どうやら正解だったらしい。

「裕太さん?――優美華ちゃん、よしよし」

俺は優美華ちゃんを優しく抱き締めた。

そして俺は贈られたばかりのポケットチーフを使うなら今だ!と思ったのだが優美華ちゃんは手で涙を拭いながらおそらく魔法の力を使い涙を除去していたので繰り出すのはやめた。

「私……デスゲームの時に裕太君の事を『裕太さん』と呼んでたの……」

そうだったのか。それならたった今さん付けで呼ばれたのも納得がいくな。

「それなら僕はその時優美華ちゃんの事を『優美華さん』と呼んでいたりする?」

まぁ出会った時が幼馴染ルートではなかったのなら「さん付け」なのも当然か。

「うん……」

やっぱりなぁ……まぁ今はとりあえず話を先に進めるか。

「それで、その後はどうなったのかい?」

俺は優美華ちゃんにその先の事を訊いた。

「う、うん……私の事を心配してコンビを組んでくれた裕太君は私が記憶担当で裕太君がそれ以外の全て担当でクリアしたよ。それも最高スコアで」

なるほど。その役割を分担していたのなら確かに戦えそうだ。

しかし2人だけのコンビでクリア出来るゲームだった事に感謝だな。

*(どういたしまして☆)*

13/24.「『』が有るのかい?」

それにしてもやっと色々と納得がいった。

「優美華ちゃんには完全記憶能力が有るのかい?」

優美華ちゃんは中々明かしてくれなかったが物覚えの良さには気づいていた。

なんせ優美華ちゃんも東大なのだ。

例えば東大の試験では例えば社会の問題では解説が入る。

まぁ出題者が受験生が詳しいところまで知っているとは思っていないのだろう。

まぁ我が校の受験生ならこの程度の事は既にご存じだと思うが?という様な枕詞が付いていそうだが、そしてその様な問題では受験生には問いに対する正確な事実の記述が求められる。

こういった問題はまるで官僚力・学者力を問われている様な印象を受ける。

ぶっちゃけ俺も細かい所までは把握していない解説も有ったのだが優美華ちゃんは出題者を試す様にその道の研究者としか思えない様な解説の解説を行い120点の回答をしていた。

まさに知識マウントだ。

「うん。裕太君の言う通りだよ。その後は一番良い部屋に通されてそこで私は裕太君からモールス信号を教わったの」

あぁ、失語症だったからモールスで会話しよう、って?

「そう。こんな風に手を繋いで親指でモールスしてた」

優美華ちゃんは片手でもう片方の手を繋ぎモールスしてみせた。

「なるほど。我ながらそれは良いアイデアだね」

前世?まぁ前世って事にするか。前世の俺も中々やりよるなぁ。

「うん。私もその発想は無かったよ」

まぁそもそもモールスは知ってる奴が少ない問題も有るかなぁ……。

14/24.「で、その後はどうなったのかい?」

「で、その後はどうなったのかい?」

気になるなぁ。

俺にとっては非日常の話だから刺激的に感じられる。

まぁ女神アンの勇者になってそのお友達の女神マナリスさんの世界を救う事になったりとそれだけでも大分(だいぶ)非日常的だと思うのだがここへきて俺は女神である優美華ちゃんから俺の前世のデスゲームの話を聴いているのだ。

「その後は私と裕太君は力を合わせて心理戦やミステリールーム、ボードゲーム、剣や銃を使った戦争フィールドのサバイバルを勝ち抜いていったよ」

心理戦ねぇ。

俺は人狼ゲームとか結構好きなのだが命を懸けた騙し合いとなると負けたら終わりな訳で話は変わってくると思う。

というのも人狼ゲームなどの心理戦は麻雀などと一緒で確率、つまり運次第なところが有る。

つまりプレイヤーがいくら実力者だろうと他者を完全にコントロールする事が出来ず効率的かつ合理的に戦って勝率を高める事が出来ても非常に運が付いている人がいたり各プレイヤーに判断が任せられている以上どうする事も出来ない理不尽さが有りまぐれで負ける可能性があるゲームは命を預けるには「怖い」のだ。

「裕太君もその事を心配してたけど幸いな事にどのゲームもチームを組んで挑む事が出来たから何とかなったの」

という事は運ゲーにはならない様な配慮でも有ったのだろうか。

「じゃあ心理戦ではプレイヤーの表情や仕草といった機微の変化を優美華ちゃんに記憶してもらって僕がそれを分析したりとかかい?」

俺ならそうする。

っていうかそうでもしないと勝てないと思う。

例えば声の大きさなどを以前のと比較したりして相手が嘘を吐いているか本当の事を言っているかを判定する。

「うん。そういう事してたよ」

やっぱりね。いずれにせよ優美華ちゃんが無事で良かった。

俺は最悪の事態を免れる事が出来たという事だからな。

「うん……それは感謝してるけど……」

喜ばしい事だろうに優美華ちゃんは全く嬉しそうではなくむしろとても悲しそうだった。

15/24.「それでその後はどうなったのかい?」

「それでその後はどうなったのかい?」

俺は優美華ちゃんにその先の事を訊いた。

「そして最後まで勝ち抜いた私達はついにクロノスと相対して……ファイナルゲームになったの……」

そしてまた優美華ちゃんは泣き出してしまった。

「よしよし。別に優美華ちゃんが悪い訳ではないんだから泣かないで」

俺は優美華ちゃんには常に幸せで笑顔でいてほしいし泣いてほしくはなかった。

「で、でも……」

優美華にとっては本当に悲しい出来事だった。

「それでそのファイナルゲームとやらの内容は何だったのかい?」

俺は優美華ちゃんを優しく抱き締めそのファイナルゲームとやらの内容を訊いた。

「ファイナルゲームは……開始を告げられると部屋の中央に丸いテーブルが現れて……その丸いテーブルには一丁の拳銃が有って……クロノスから世界中からこのゲームの為に天才達を拉致した事を明かされて……それで……テーブルの拳銃で相手を撃てって言われたの……それがファイナルゲームだって……」

なるほどね。俺は全てを察した。

「勝者が神になれるゲームで僕は君を勝たせる為に自分で自分を撃ったんだね」

そうせざるを得ないよなぁ……。

「そう……役立たずの私が死ねば良かったのに……裕太君が死ぬ必要なんて無かったのに……」

んー。

「優美華ちゃん、自分を役立たずだなんて言わないでよ。優美華ちゃんがいなかったら僕なんて最後まで勝ち進められなかったと思うよ?」

チームプレーっていうのは大事だからなぁ。

「裕太さんなら1人でも勝ち進められたよ……それに私なんてお荷物だったはずだし……」

優美華はその時の自分をお荷物だと思っていた。

んー。

16/24. さらに気になるのはその後の事だ

さらに気になるのはその後の事だ。

「それでその後はどうなったのかい?」

俺はその後の事を優美華ちゃんに訊いた。

「その……私が優勝って事で神になれたのだけど……裕太君が……」

ん……!?

俺はもう用済みのはずなのだが……。

「僕がどうしたのかい?」

優美華ちゃんの様子がおかしい。

「そ……その……クロノスに……グブッ……!」

優美華はその時の事を思い出し急に吐き気を催してしまい口元を手で抑えた。

「嫌な事を思い出させてしまってごめんね優美華ちゃん。その件はそれ以上言わなくて大丈夫。せっかく食べた物を吐いてしまうよ」

俺は自分がどんな目に遭ったのか気になって仕方が無いのだが優美華ちゃんの体調を考えればそれ以上無理に話してほしくはなかった。

まぁ優美華ちゃんが嘔吐しそうになるぐらいだからおそらくクロノスは俺の亡骸(なきがら)に相当酷い事をしたのだろう。

俺としてはそういう事は良い意味でも悪い意味でもきちんとお礼をしたい。

俺は優美華ちゃんを優しく抱き締め背中をさすった。

17/24.「ごめんね裕太君……」

「ごめんね裕太君……私その時怖くて何も出来なくて……」

優美華は裕太に申し訳無さ過ぎて謝った。

「優美華ちゃんは何も悪くないから大丈夫だよ」

実際優美華に非は無いしな。

間違い無く全てクロノスとやらが悪い。

すると突然優美華ちゃんの手が光った。

「裕太君、今念の為に魔法で口内から食道まで綺麗にしたから安心してね」

優美華は裕太を安心させる為にも念の為にも魔法で食道まで綺麗にしたのだった。

「気を遣ってくれてありがとうね優美華ちゃん」

まぁ俺は多少嘔吐臭くてもなんとか耐えられるとは思うのだが……。

「私裕太君にそんな思いさせたくないもの。それにそんな事したら裕太君に嫌われちゃうしお嫁に行けないよ……」

そこまで思い詰める程ではないとは思うのだがなぁ……。

まぁしかし魔法で何でも綺麗に出来るなんて羨ましいなぁ……優美華ちゃんもアンもマナリスさんも口臭ケアだとかデンタルケアだとか自力でパーフェクトに出来てしまうって事だもんなぁ……。

「うん♡そうだよ」

優美華ちゃんもそれが便利な自覚は有る様だ。

「ねぇ、裕太君が魔法を使ってほしい時に言ってくれたら私がどんな魔法でも使ってあげるよ?」

そういう提案をしてくれる優美華ちゃんはやっぱり優しい子だ。

「フフ♡だって私は裕太君の事が大好きだもん」

優美華は裕太の事を心底愛している。

「僕も優美華ちゃんの事が大好きだぞ」

俺も当然ながら優美華の事を愛している。

「ありがとう♡」

俺はさっきまで泣いていた優美華が笑顔になってくれて嬉しかった。

18/24.「」していた事が有ったって事なのかなぁ。

しかし優美華ちゃんもお掃除魔法を使えるという事は今までもお掃除魔法で綺麗にしていた事が有ったって事なのかなぁ。

「うん。有ったよ」

やっぱりね。

「ところで裕太君、私にいつでもキスして良いんだからね?」

優美華ちゃん曰(いわ)くいつでもキスして良いらしい。

「ちなみに僕もいつでも待っているからね」

俺も優美華ちゃんの台詞(セリフ)をお返しで言ってみた。

「じゃあ……チュッ♡」

大義名分を得た優美華ちゃんが早速キスしてきた。

「臭(にお)いする?」

優美華は裕太に臭いがするか訊いた。

しかしそう訊かれてもするだなんて言えない場面だが臭いは全く無かった。

「大丈夫だったよ」

俺は本音を言った。

まぁ優美華ちゃんは女神様なのだから当然といえば当然の事なのだろう。

「なら良かった!私心配だったから……」

まぁそれが乙女心というものなのだろう。

アンならうっかりも有り得るが優美華ちゃんならミスなどしないだろうからな。

*(そうなのよねぇ……アンなら臭いだけ取り除いて他は全て残っていたりしてしまいそうなのよねぇ……あの子ったら頭隠して尻隠さずなんだもの……)*

アンはパーティー用の食事を勝手につまみ食いしその際の食器は片付けたものの口の周りにソースが付いていた事からつまみ食いの犯人であるとすぐに分かり大目玉を食らった事など数多くの失敗談が有りティアラはアンならやりかねないと頭を抱えた。

しかし俺が嘔吐未遂をしていた側なら臭いが無いと分かるまではキスなど安易に出来ないな。

俺こそ優美華に嫌われてお嫁に行けなくなってしまう。

「私だって裕太君が臭くてもちゃんとキス出来るよ?」

優美華からすれば問題は無かった。

「僕は優美華ちゃんに無理も我慢もしてほしくないからその時は言ってね……」

俺は絶対そんな事にならない様にしようと固く心に決めた。

「うん♡そうするね♡」

一方で優美華は裕太への愛を証明する様に裕太のどんな姿も受け入れたいと思っていて誰かに迷惑が掛からない場面なら仮に臭くても思うところが有っても言わない様にしようと固く心に決めたのだった。

もちろん鼻毛が出ていても自分と2人きりの状況なら絶対に言うつもりが無いのだった。

19/24.「」していた事が有ったって事なのかなぁ。

「それでね、その後クロノスは裕太の体と一緒にどっかへ行っちゃって……でも私は副官の天使に助けてもらいながら天界の事を勉強して、世界神ティアラ様にも協力してもらってアンさんと交渉してやっとこの星で裕太君の幼馴染になる事が出来たの」

優美華は悲惨な過去の出来事を忘れてはいないが願いが叶った事が何よりも嬉しかった。

しかしその後はそんな感じだったのかぁ。

まぁ事態が好転した様で何よりだ。

「大変だったね」

俺は優美華ちゃんの苦労を労った。

「裕太君こそ最後まで私の事を捨てずに守って戦ってくれてありがとう。それにお疲れ様でした」

優美華ちゃんも俺に感謝し俺の事を労ってくれた。

粋な演出だ。優美華ちゃんは手を繋いでいる俺の手にモールスでも感謝を伝えてくれた。

まぁ俺にはその時の記憶が全く無いので何もしていない事で感謝されるという様な違和感が有る。

「優美華ちゃんこそ僕の相棒として共に戦ってくれて、また会いに来てくれてありがとう」

俺も優美華ちゃんに感謝し親指でモールスを返した。

いやぁいざという時に備えてとモールス信号の勉強もしておいて良かった。

「こちらこそまたこんなふつつかな私を受け入れてくれてありがとう」

優美華ちゃんは相当嬉しかったのか泣いていたが俺と優美華ちゃんは相手に感謝する様に手を繋ぎ幸せそうに微笑み合った。

まぁ俺の方こそ優美華ちゃんに感謝なんだがな。

幼馴染の優美華ちゃんという存在は俺には大きいのだ。

優美華ちゃんがいなければ俺の登下校はボッチだったかもしれないし家族ぐるみの付き合いも無かったかもしれない。そう考えるとゾッとする。

という訳でこれは結果論だが俺はクロノスという存在に無理矢理デスゲームに参加させられ最後には酷い目に遭わされた様だがこんなに優しい優美華ちゃんと出会えて心底良かったと思っている。

「私も裕太君と出逢えて良かったです」

優美華ちゃんはまた泣き出してしまった。

まぁ本当に俺と出逢えて良かったと思ってくれているのだろうし俺としてもそう言ってくれるのは嬉しい。

20/24.「『』出来たんじゃないのかい?」

「よしよし。でも優美華ちゃんはどうして僕の幼馴染なんかになったのかい?神様になったのなら自分の理想の世界を作るなり自分の理想を詰め込んだ最強のイケメンを作り上げてイチャコラするなり出来たんじゃないのかい?」

そして俺は泣き出してしまった優美華ちゃんを優しく抱き締めて頭をよしよしと撫でたのだがふと疑問に思った事を訊いてみた。

大抵の人間は自分が神になれたら早速その力を使い自分の欲望や願望を叶えていく事だろうに。

「私が裕太君の幼馴染になったのはそれが私の夢だったから。――あの時どん底にいた私に裕太君だけは優しくしてくれて『僕が優美華さんと同じクラスにいたらクラスの事は僕がどうにかしてあげられたのに、って思うよ。学級委員長としていじめっ子にコラ!ってね』と言ってくれたの。――それである時裕太君から『良ければ僕に優美華さんの夢を教えて』と言われてその時に私が抱いた夢が裕太君の幼馴染になって、共に過ごして、いつか裕太君の愛人でも良いから裕太君と結ばれる事だったの。出来れば側室でも良いから結婚する事だけど。――最後の時裕太君からは『僕の分まで、皆の分まで幸せに生きていってほしい』と託されてる。――でね、私にとっての幸せがこの裕太君との日々なの。――だから私はもう裕太君っていう理想の男性と出会えて一緒の世界にいるんだからそんな事をする必要は無いしするつもりも無いんだよ?」

しかしなるほどなぁ。

優美華ちゃんは昔から時々自分の夢についてを話したり俺の夢がどうなのかなど訊いてきたりしていたから優美華ちゃんが夢にこだわっている訳とその根源が分かり俺は納得した。

そして俺はその時の俺が優美華ちゃんにどの様な夢を語っていたのかが非常に気になり――。

「ちなみに僕はその時優美華ちゃんに自分の夢の事を何と言ってたのかい?」

――優美華ちゃんに訊いた。

というのも俺には夢が無いのだ。

全く無い。

それに夢程ではないにしても自分のやりたい事としては自分の会社を今よりも大きくする、欲しい物を手に入れる、やりたい事をやってみる、ぐらいしか思い浮かばない。

まぁ強(し)いて言うなら謎のお姉さん?に会いたかった事ぐらいか。

「『願望で良いなら、優美華さんが幸せになる事』とは言ってたけど『例えば腕時計や車を集めたり、売上高に固執して事業を拡大させたり、名声を高める為に積極的に表舞台に出たりとかね』や『もし結婚出来たらしたいですか?』という私からの質問には『したいとは思うけど。――じゃ、ほら、明日に備えてもう寝よう!』って言ってたよ」

そうか、その時の俺も今の俺も考える事は大方同じの様だな。

しかし最後のなんか大分「逃げ」を感じる。

まるで優美華ちゃんからの好意に気付いているがそれ以上の関係に発展してまわない様にと話をそらしているが如くだ。

21/24.「『』って時系列的には具体的にいつの事なのかい?」

そして俺はここで――。

「あと、そのデスゲームって時系列的には具体的にいつの事なのかい?僕にはその記憶が無くて全く分からないから」

――ついに後回しにしていた「そもそもいつの事?」を繰り出した。

俺が何歳の時にデスゲームに参加させられたのかがそもそも分かっていないしな。

というか俺の魔王説をなんとか復権させる為にも詳細まで知っておきたいのだ。

「何年前の事かって事?」

優美華は裕太が何を知りたいのか確かめる様に訊いた。

「そういう事だよ」

俺が産まれる前の出来事なのかイマイチ確定していないからな。

「えっとデスゲームとしては裕太君の場合だと大学卒業の後アンさんが執務室に会いに行った時にクロノスが登場して裕太君を連れ去ったみたいなの。でもその時にはクロノスの拉致事件が判明して世界神様の判断で世界が緊急停止になったの」

じゃあ前世の俺はアンとのあのやり取りが有る前にクロノスに連れ去られたって事か。

「うん。それで私と裕太君は会場で出会って勝ち進んで私が神になった後はクロノス事件の後処理が有って裕太君の体が元に戻るまではずっと停止状態だったんだけど私がアンさんと交渉してお互いに幼馴染の人生をやり直したって感じだよ。だからこの星としては裕太君の今の年齢の分やり直したって事」

そうかぁ。デスゲームの後は優美華ちゃんが俺と幼馴染という設定で世界をやり直し今度はクロノスに邪魔されずに無事アンが俺に話してこられたって事か。

「うん。そういう事」

なるほどね。

直近?の出来事については分かってきた。

22/24. 大いなる疑問がまだ有る。

しかしここで大いなる疑問がまだ有る。

それは俺がいつ「女好き」になったのか?という事だ。

アン曰く俺は6000年前の時点で奥手だったし優美華ちゃんの話を聴いた限りだとざっくり言って20年前の俺も奥手の様だ。

というのも今の俺だったら初日には優美華ちゃんを抱いているのであの奥手ぶりは今の俺からしたら全く考えられないのだ。

そして俺が女好きになったのが今世なのか前世なのか、はたまたその間に俺の記憶に無い何かがあったのだろうか?

――謎は深まるばかりだ。

少なくとも有ったかもしれない魔王時代に女好きになった訳ではないらしい。

しかしだとしても魔王時代の影響が少しは有ったって良いと思う。

というのもこの科学の世界ではどう考えても不可能だがもしなれるなら俺は本当に魔王になりたいのだ!

魔王なら好き勝手に振る舞えそうだしな。

良い子ちゃんでいるのは疲れた、と俺は自分の心の奥底からミシミシとその様な強い何かを感じている。

しかし俺の夢や願望については冷静に自分自身を見つめてみればまぁ少なくとも優美華ちゃんもアンもマナリスさんも皆を幸せにしたいというハーレム願望は有るのかもしれない。

23/24.「私も『』に入れて?」

「裕太君、お願い。ハーレムは作って良いし私も裕太君のハーレムに入れて?」

……え!?

「お願い、裕太君」

優美華は裕太がハーレムを作っても構わないどころかむしろ作ってほしいと思っていてそれに自分も入れてほしいと本気で思っている。

「優美華ちゃんには独占欲とか嫉妬とかそういうのは無いのかい?」

俺は優美華ちゃんから定期的にハーレムを作る様に言われているのだが優美華ちゃんに何のメリットが有るのか全く分からないのだ。

「もちろん有るけどでも裕太君に対してはそんなに感じてないの。妥協(だきょう)してでも裕太君と一緒にいたいから」

優美華は既に妥協していたのだった。

まぁそこまで言ってくれるのはありがたいのだが。

「裕太君だったら私の事も平等に愛してくれるって信じてるし人生を楽しんでほしいから」

優美華は裕太の事を信じており愛人が増えても今まで通りに自分の事を愛してくれるのならそれでも構わなかった。

それに何より裕太に人生を謳歌してほしかった。

というのも優美華は裕太が人生を退屈そうにしているのを知っていた。

まぁ俺の性格的には誰も見捨てる事はせず平等に愛し続けるだろうし確かに人生を楽しく感じてはいる。

「楽しいでしょ?――それに私は裕太君にとって都合の良い女の子のままで良いんだから。私は女神だから避妊だって100%出来るんだよ?」

優美華はぎゅっと温もりを感じる様な優しいハグをしてきた。

いやいや、都合の良い女の子って……てかピルを飲んでいると言っていたが今までそれで避妊してたのか……!

「うん。私女神だから基本何でも出来るもん。でもこれからは避妊しないんだよね?」

どういう訳か大学を卒業するまでは避妊しそれ以降は避妊しないという誰が決めたのか愛人達の間で共有されている謎ルールの事か……。

「裕太君もそのつもりで良いんだよね?」

ま、まぁな……。

「やった!」

優美華は心底嬉しそうにしていた。

24/24.「色々と『』が有ったの」

しかし俺としては別に俺の大学卒業後にこだわる必要も無かったのだがな。

とっくに卒業している愛人達だっているのだしな。

しかし「出して。でも避妊はするね」というのもおかしな話だが。

「ごめんね。色々と事情が有ったの」

事情ねぇ。

誰だよ!そんな変な文化を俺の周りで流行らせたかルールを敷いた奴は……!

*(もう!裕太もあの泥棒幼馴染女も一体どこにいんのよ……!全然覗きも居場所の探知すら出来ないなんて一体何がどうなってるのよ……!――って……ヘックシュン……!もう……!私は陰口叩かれる様な事なんて何にもしてないのに……!どうして私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないのよ……!)*

アンは全力をもって裕太と優美華のデートを覗き見ようとしていたのだが優美華による類まれなる妨害魔法により居場所の探知すら出来ていなかった。――そしてアンはその様子に呆れている凛穂の傍で盛大にくしゃみをしたのだった。

「それじゃあそろそろ帰るかい?」

もう夜も深まって冷えてきたしな。

という訳で俺が帰宅を提案すると――。

「うん♡それじゃあ帰ったら子作りしようね♡これでデートが終わりな訳無いもんね?」

――優美華ちゃんは絶対に断れない凄(すご)みと黒笑要素が足された様な笑顔でそう言ってきた。

こ……こわ……。

ま、優美華ちゃんは愛人でも側室でも良いと言ってくれているので遠慮は要らないか。

「うん。それじゃあ帰ったらいっぱい愛し合おうね」

俺は腹を括った。

「うん♡ちゅっ♡」

かくして高級ディナーの後(あと)車から綺麗な夜景を見ていた俺と優美華ちゃんは寝室で愛し合うべく自宅を目指し車を発進させた。


後書き

優美華は優しいお嬢様系の「ザ・幼馴染」という感じです。

ちなみに優美華はクロノスから力を引き継いでいるとはいえ特訓に特訓を重ねており実質不老不死の大魔法使いの域に達しておりアンとは比べ物にならない程強くなっています。

まぁ魔力操作に長(た)け扱える魔法の数も多くなったものの科学の世界には魔力を含んだ魔獣が入手出来る様なダンジョンが無い為食物由来の体作りは出来ていません。

しかし優美華はアンが約束を反故(ほご)にする様なら主人公との幸せを守るべくアンの勢力と戦争する覚悟が出来ています。