[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 20話 地球の女神 – 魂の商人の神々 (アンの視点)
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青年男性向け – ソフト – R18
第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)
第 20 / 28 話
約 9,900 字 – 15 場面 (各平均 約 660 字)
1/15.「わぁ!凄いです!」
アン達はエルダの仮面屋で仮面を購入するとお店を出て暗黒街に繰り出した。
「わぁ!凄いです!」
そこにはネオンが煌き多くの大人の神々が仮面を付け異性と腕を組んだり酔い肩を貸し合ったり楽しそうに並んで歩いたりしている秘密の夜の繁華街が広がっておりマナリスは初めて見る刺激的な光景とその世界に胸をときめかせた。
「確かに凄いわね……こんな世界が有ったなんて……」
普段お調子者なアンは意外にもこういう不慣れな場所では気圧(けお)されてしまい驚きつつも萎縮(いしゅく)してしまっていた。
「今から魂の商区に移動して私の行き付けの仲介屋へ案内したいんですがどうしますか……?」
レイナは自分がよく使っている仲介屋へアン達を案内したい。
「良いけどとりあえず途中お店とか見てくわよ!」
アンはいずれ仲介屋に行くとしても色々なお店を覗(のぞ)いてみたかった。
「それが良いかもしれませんね。レイナさんは相場(そうば)を御存じかもしれませんがわたくし達はあまり良く知りませんから」
マナリスとしても色々なお店を見てみる事で相場感を養(やしな)っておきたかった。
「分かりました。それではこちらです」
レイナはアン達の意向を汲(く)み取り仲介屋までの道のりでアン達の魂の相場感を養う方向で案内していこうとした。
2/15.「『』は初めてかい?」
そしてしばらくすると――。
「よっ嬢ちゃん達、暗黒街は初めてかい?」
――アン達は突然浮浪(ふろう)者のおじさんに通せんぼする様に話し掛けられた。
(この手の輩(やから)か……)
「な、何よ!」
アンは突然の事に身構えた。というのも意外にもアンは怖い輩には恐怖心を感じるタイプだったし何より最近おじさんの商人に扮(ふん)したレイナに勇者を毒殺されている為警戒心も強くなっていた。
「はい、初めてです」
そして警戒心が全くないマナリスは正直に答えてしまった。
(馬鹿正直に答えるなんて……!ここは私がちゃんとしないと……!)
「あの、ご用件は何ですか?」
レイナはアン達の案内役として責任感を持ち要件を訊いた。
「おお初めてかい。要件って程の事じゃないんだがおじさんが良い所に連れてってあげようか?」
(暗黒街に足を踏み入れて正直に答えるなんざなんて馬鹿なガキ共だ。借金漬けにするも良し路地裏で無理矢理拘束(こうそく)しちまうも良しだが)
「良い所……?」
アンは「良い所」が何なのか想像も付かなかった。
「どちらでしょうね。わたくしは想像も付きません」
マナリスもそこがどこなのか想像も付かなかった。
「ねぇ、おじさん。貴方のせいで来るのが遅れてしまいましたと仲介屋のクレトさんに言わなきゃならなくなりますがそれでも良いんですか?」
レイナはおじさんを牽制(けんせい)するべく大物の名前を出した。
「ク、クレトだと……!?ワ、ワシは知らなかったんだ……!もう話し掛けんから伝えんでくれ……!」
おじさんはクレトの名前を聞いて恐怖し退(ど)いた。
「ふん!行きますよ!」
レイナは鼻を鳴らすと再びアン達を連れて歩き始めようとした。
「あんた意外と頼もしいわね……!」
アンはレイナは頼りになるなぁと思った。
3/15.「助かりました」
「そうですね。助かりました。ありがとうございます、賢いリスさん」
マナリスはレイナに感謝した。
「ここで絡まれても毅然(きぜん)とした態度で応じ相手の罠(わな)に嵌(はま)らない事です。ここは暗黒街なんですから悪い人は大勢いると覚悟しておいてください」
レイナはアンとマナリスに大事な事を忠告(ちゅうこく)した。
「そ、そうよね……」
アンは改めて暗黒街は怖い所だと思った。
「分かりました。以後(いご)気を付けます。しかしあのおじさんは本当に悪い人だったのですか?」
マナリスは肝(きも)に銘(めい)じつつもあのおじさんが悪い人だとは思えなかった。
「悪いですよ。あの手のは仮面屋の近くで仮面屋から出てくる世間知らずの新参者(しんざんもの)を待ち伏せているものなんです。それにあの服装だと事業で失敗したりギャンブルか何かで大負けして破産して金目(かねめ)の物も自分の星も全部失(うしな)って帰る場所も無くこの暗黒街を彷徨(さまよ)っているという感じですね……酒に酔(よ)っているという訳でもなかったですし。もし私達があのおじさんに付いていってたら売られたり何されるか分からなかったですよ」
レイナはアン達に暗黒街の常識を教えた。
「それはヤバいわね……自分の星まで失っちゃうなんて……」
アンは自己評価が高く自分が女神である事に誇りを持っており自分のアイデンティティである「女神」を事業の失敗やギャンブルによって失ってしまうかもしれないと恐怖し自分は絶対に事業で失敗したりギャンブルはやらないと強く決心した。
「あのおじさん、どうにかして助けてはあげられないのでしょうか……」
マナリスは先程のおじさんを助けてあげたかった。
4/15.「『』で見てたのよ?」
「ちょっと!あのおじさん私達の事いやらしい目で見てたのよ?」
アンは先程のおじさんの卑劣(ひれつ)で卑猥(ひわい)な目線に気付いていた。
「ですが……」
優しいマナリスはそれでもあのおじさんの事が心配だった。
「大丈夫。この暗黒街は運営が定期的な取り締まり、まぁほとんど抜き打ちに近いけどそういうのが行われているからあの手の浮浪者はそういう時に保護されて親や子や友人知人が引き取りに来たり引き取られなくても地上で余生を過ごさせてもらえるから。他にもどっかのお店に就職したりとかね」
レイナは暗黒街で星すら失(うしな)った神々もちゃんと保護してもらっている事を教えた。
「へー」
アンはあのおじさんへの救済策がちゃんと有る事を知ってなんだか感心した。
「そうなのですね。それなら本当に良かったです」
マナリスは救いが有る事を知って安心した。
星すら失うギャンブル……一体どんな賭け事なのかしら……!
それを想像したアンは背筋(せすじ)が凍(こお)った。
というか妙にスリルを想像してしまっていた。
5/15.「俺達と『』行かない~?」
そしてアン達は――。
(うおー、全員胸がでけぇ……!特にお花の娘(こ)はすげぇ……!まぁリスちゃんは小ぶりだが……)
「ねぇ君達~。俺達と飲み行かない~?お腹空いてたらご飯でも良いよ~。奢(おご)るよ~?」
――チャラい神々のリーダー・マックスにナンパされた。
「え!?奢(おご)ってくれるの!?」
アンはタダの誘惑に弱かった。
「もち。君ノリ良いね~」
マックスはアンをノリが良いと褒めた。
「わたくし奢られるのは申し訳有りませんので割り勘が良いです。でもお酒は経験が無くて……」
マナリスはもし飲みに行くにしても相手に対して何もしていないのに一方的に奢(おご)られるのは申し訳無くて嫌だったしそもそもお酒の経験が無かった。
「お~。君優しいね~。お酒は大丈夫大丈夫。すぐ慣れてくるから」
マックスは割り勘で飲めるならカモがネギを持ってきたの如く非常に助かると思ったしお酒をどんどん飲ませて酔(よ)わせるつもりだった。
「あの、私達はこれから仲介屋のクレトさんに会う予定なので失礼します。行きますよ、みんな」
レイナはまたもやクレトの名前を出し牽制(けんせい)し通り過ぎようとした。
「お、おう……邪魔したな……」
ナンパ師達はクレトの名前に恐れをなし退(ど)いた。
6/15.「気を付けてください!」
「もうナンパに対して呑気(のんき)に奢りに反応したり割り勘を提示してたら駄目です!気を付けてください!」
レイナはアン達に注意した。
「だって奢(おご)ってくれるって言ってたんだよ……?」
アンはただで食事が出来るチャンスだったのにそのチャンスをレイナに潰(つぶ)されてしまったと不満だった。
「駄目です!あれの真の目的はお酒で私達を酔わせるか薬物で意識を失わせて好き放題する気だったに違いないんですよ?」
レイナは暗黒街の常識的にナンパしてきた連中の目的を推測した。
「うげっ……。気持ちわる……」
アンはナンパしてきた連中の目的を知って急に気持ち悪くなった。
「しかしリスさん、彼らが必ずしも悪意を持っていたとは限らないのではありませんか?」
マナリスは先程のおじさん同様にマックス達が悪意を持っていたとは思えなかった。
「あの手のナンパで泣きを見てる女の娘(こ)達は大勢(おおぜい)いるんですよ?だから警戒心を持つのは当然です。それに知らない人に付いていっちゃ駄目なんです。そして何より私達には予定が有るんですから目的を忘れてはいけません」
レイナはマナリスの言い分を否定するつもりは無いが常識を持ってほしいし目的も忘れてほしくなかった。
「そうですね。ごめんなさい」
マナリスは謝った。
「いえ、良いんです。それでは先を急ぎましょう」
レイナは自分の業(ごう)からしてマナリスに謝られる資格など持っていないと思っているしとにかく先を急ごうとした。
(私、ここ(暗黒街)で無能な働き者とお花畑の夫人の介護をし続けられるのかな……)
そしてレイナはあの浮浪者のおじさんの様に事業で失敗したりギャンブルで大負けしそうで誘惑にも弱いアンと浮浪者まで心配しナンパ師の悪意にも気付かない優し過ぎるマナリスの事を想うと先が思いやられた。
7/15.「着きましたよ」
「着きましたよ。ここから先が魂関連の商区です。魂専門の露店やお店、仲介屋やオークションハウスなどが有ります」
ついにアン達は魂を扱う商業地区に到着し大通りには露店が並びお客達は商人達から商品の説明を受けていたり値切りの交渉をしていたりと活気の有る光景が広がっていた。
「へー!賑(にぎ)わってるわね!」
アンは賑(にぎ)やかなのが好きでありテンションが上がってきた。
「そうですね、働き者さん。こちらで欲しい魂が手に入ると宜しいのですが」
マナリスはアンと同感でありながらも暗黒街についての事前調査で良い物は露店では手に入りづらい事を知っている為不安だった。
「きっと手に入るわよ!じゃあ早速見てくわよ!」
アンは早速近くの商品から見始めていった。
「は、はい……!」
マナリスはアンに付いていった。
「皆さん私から離れない様にしてくださいね?」
レイナはアン達に注意した。
「わ、分かってるわよ……!」
アンはレイナに子供扱いされている様な気がして不満だった。
「はい。気を付けます」
マナリスは素直に従った。
(アン、貴方が分かっていない事は分かっている……)
レイナはアンと同級生でありアンの「分かってるわよ……!」が全く信頼が無く分かっていない事を知っていた。
「お兄さん、これは何?」
アンは気さくに気になった商品について指を差しながら商人に訊いてみた。
*商品は小型の人形の形で並べて置かれている*
「お客さんお目が高い!どれも魔法の世界の奴らでそれは手品師一行(いっこう)だ!人々に楽しみをもたらす事間違い無し!今なら金100トンを1ゴールドで100ゴールドだ!」
商人のクリスはアンを褒めつつ伝えたい情報だけを教えた。
「これは?」
褒められたアンは気分が上がりつつ続けて他の商品についても訊いてみた。
「それもお目が高い!騎士団セットだ!国王や領主にとって役に立つ事間違い無し!今なら同じく金100トンを1ゴールドで100ゴールドだ!」
クリスはまたもや伝えたい情報だけを教えた。
「これは?」
アンは続けて訊いた。
p>「お客さん目利きの才能が有るぜ!これは治癒院セットだ!人々に治癒をもたらす事間違い無し!今なら同じく金100トンを1ゴールドで100ゴールドだ!」クリスは訊かれるのに内心怯(おび)えながらもまたもや伝えたい情報だけを教えた。
8/15.「どう思う?」
「夫人さんどう思う?」
アンはマナリスに訊いてみた。
「どれも宜しいと思いますよ」
マナリスはどれも良い商品だと思っていた。
「じゃあ全部買うわ!」
アンは全て買おうとした。
「毎度……!」
(こ、こいつら本当にカモかよ……!)
クリスは売れないと思っていたガラクタが売れてしまって驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
レイナは慌てて止めに入った。
「ちょっと何よ!リスなんちゃら!」
アンは気持ち良く買い物をしていたのに急に邪魔された気分で不快だった。
「あの、商人さん。手品師一行が詐欺集団や犯罪集団だったり騎士団が裏切り者だったり治癒院が高額治癒院だったりしませんよね?」
レイナは暗黒街の常識的にガラクタだと見抜いていた。
「な、な訳ねぇだろ……」
クリスは言い当てられて焦(あせ)った。
「賢いリスさん、他者をむやみやたらに疑ってはいけませんよ」
慈悲深いマナリスは道徳を説(と)いた。
「そ、そうだぞお客さん……!」
クリスはマナリスの論評(ろんぴょう)に乗っかった。
「みんな、ここは暗黒街ですよ?それも『露店』です。裏の無い商品が店頭に並んでいる訳が無いんです」
クリスは暗黒街の常識を説いた。
「てかよ、みんなそれを分かっててここに来てんじゃねぇのかよ?」
クリスは開き直った。
実際クリスの言っている事は正しかった。
9/15.「本当だったの……?」
「げっ、リスちゃんが言ってたの本当だったの……?」
アンは開き直ったクリスの言動を見てクリスの言っている事は本当なのだと思い知った。
「賢いリスさん、ごめんなさい」
マナリスはレイナに謝った。
「いや、謝らなくて良いですから。で、商人さん、私達は実はちょうど悪党や魔王の魂を集めているので裏の有る商品は歓迎しているんです。だから裏の部分を教えてくれませんか?」
レイナはマナリスに謝らない様に言うとクリスに実はそういう商品を集めているのだと明かした。
「な~んだ!そうだったのかよ!びっくりしたぜ!お客さんが言ったのはどれも正解だが付け加えるなら手品師の正体は某魔導国家が育成した工作員達で手品師に扮(ふん)して敵地に侵入し村や町ごと制圧していった外道な奴らだ。で、騎士団の連中も外道でクーデターを起こした奴らだ。特にこの騎士団長レナードは自分が領主になろうとして領内で内戦を起こした元凶。そして治癒院は高額治癒院だが小さな傷にも高ランクの治癒魔法で治癒を施(ほどこ)すぼったくりで高額な治癒料が払えない者を借金奴隷にして売り飛ばす奴ら、ってな感じだが……普通こんなの要らないよな……?」
クリスは商品の裏を全て包(つつ)み隠さず明かしたがどうせ買ってもらえないのだろうと諦めていた。
「私は凄く良いと思うんだけど夫人はどうかしら!」
アンはマナリスの意見を訊いた。
「わたくしもとても宜しいと思います!」
マナリスもアンと同感だった。
「じゃあ金100トンを1ゴールドで300ゴールドで全部買うわよ!」
アンは改めてクリスに購入すると告げた。
「ま、毎度……!」
クリスはモニターの画面でアンと共に決済すると全部売れた為撤収する準備を始めた。
10/15.「もう『』やめちゃうの?」
「ねぇ、てかもう売るのやめちゃうの?」
アンは驚いてしまった。
「まぁな。俺は俺でこの金で今からダンジョンコアを買いに行かなきゃいけねぇし」
クリスは上がりの1割を商人ギルドに収めてからダンジョンコアを買いに行くつもりだった。
「ダンジョンコアって何?」
アンはダンジョンコアが何なのか分からなかった。
「おいお客さんそんな事も知らねぇのに魔法の世界の商品を買ったのかよ……」
クリスはアンにちょっと呆(あき)れた。
「私は科学の世界だし魂はこの友達の魔法の世界で使うから良いの!」
アンは別に自分で使う訳ではないし問題無かった。
「そうか……。で、ダンジョンコアってのは魔物がいるダンジョンのコアになるやつでそれが有ればダンジョンを作れる代物(しろもの)だ」
クリスはアンはダンジョンコアについてを説明した。
「そう!で、もっと悪党とか魔王とか持ってないの?」
アンはクリスに悪党と魔王を所望(しょもう)した。
「そうだったな。お前達は悪党と魔王を集めてるんだったな。まぁ魔王は分からねぇが悪党なら入荷したら知らせてやるよ」
クリスは悪党なら入荷次第アンに優先的に販売しようと思った。
「頼んだわよ!名前は分かんないけど!」
アンはクリスに期待した。
「俺の名前は取引履歴に残ってると思うが名前はクリスだ。よろしくな」
クリスは本名を明かした。
*まぁクリスは勢いで付けた二つ名、圧倒的な力を持つ存在という「ジャガーノート」を名乗るのが恥ずかしくて出来なかった。*
「よろしくね!クリなんとか!」
アンはいつもの様に相手の名前を省略してしまった。
11/15.「『』が売ってるかもしれねぇぞ」
「お、おう……。あ、そうだ。勇者と魔王なら向こうの口下手(くちべた)な娘(こ)が売ってるかもしれねぇぞ。お店はまだやってるはずだ。二つ名は『沈黙の女神』らしい」
クリスは指を差しながら他の商人を紹介した。
「え!ありがと!恩に着るわ!じゃあ行くわよみんな!」
アンはクリスに感謝すると早速マナリス達を連れてその商人の露店へ行こうとした。
「はい。行きましょう。ご親切にありがとうございました」
マナリスはアンに返事をするとクリスに感謝した。
「ありがとうございました」
レイナもクリスにスパッと感謝するとアンの後を付いていった。
「良いって事よ。またな」
クリスはアン達に返事をするとどんなダンジョンを作ろうかなぁと考えながら撤収作業を進めた。
かくしてアン達はクリスの露店から離れた。
12/15.「貴方が『』?」
そしてアンはついに沈黙の女神の露店に着いた。
「貴方が『沈黙の女神』?」
アンは店主に二つ名を確認した。
(ど、ど、どうしよう……話し掛けられちゃったよぉ……)
「は、は、はい……」
店主のウィレミナはコミュ障ながら頑張って返事をした。
「やったわ!このお店よ!」
アンは目的のお店を見付けられて喜んだ。
「お店がやっていて良かったですね」
マナリスも嬉しかった。
「それではお目当ての商品をちゃっちゃと買いましょう」
レイナはクレトの仲介屋に行く予定もある為アン達の買い物を急(せ)かした。
「そうだったわね!ねぇ、さっき向こうのクリなんとかって人があんたのお店で勇者とか魔王とか売ってるって聞いたんだけどこれがそうなの?」
アンは向こうと商品を指差し訊いた。
(なんか高圧的で怖いよぉ)
「せ、せ、正確には、ゆ、ゆ、勇者とま、ま、魔王のた、た、卵達です……」
ウィレミナが売っているのは正確には勇者や魔王の卵達だった。
13/15.「え、どういう事?」
「え、どういう事?これのどこが卵なの?」
アンはウィレミナが何を言っているのか分からなかった。
「あ、あ、あの……そ、そ、それは……」
コミュ障のウィレミナには説明するのが難しかった。
「勇者学園とか魔王学園とかに将来勇者や魔王になる為に選ばれて通(かよ)っている候補生達って事ですか?」
魔法の世界の事にも詳しい秀才のレイナはなんとなく察し推測を訊いてみた。
「そ、そ、そうです……」
レイナの推測は正解だった。
「え、でも何でそんなもんを売ってるの?」
アンには勇者や魔王の候補生達を売る理由が分からなかった。
「ゆ、ゆ、勇者やま、ま、魔王にな、な、なれるのはひ、ひ、1人だけ。か、か、彼、か、か、彼女達は、は、はな、な、なれなか、か、かった………。だ、だ、だからか、か、可哀想で、で、で、それで、で、で、ほ、ほ、他のほ、ほ、星でゆ、ゆ、夢をか、か、叶えてほ、ほ、ほしくて、て、て」
コミュ障のウィレミナは頑張って売る理由を話した。
「素晴らしいです沈黙の女神さん!ぜひ買わせてください!」
慈悲深いマナリスはウィレミナの真意を知り感激しその意思を引き継ぎたかった。
「あ、あ、ありが、が、が、とうご、ご、ございま、ま、ます」
ウィレミナはマナリスがそう言ってくれたのが嬉しくて感謝した。
14/15.「『』はいくらですか?」
「ちょ、ちょっと待ってください!買うかどうかは値段を聞いてから判断しましょうよ!――店主さん、品物(しなもの)はいくらですか?」
レイナはマナリスのうかつな行動に割(わ)って入りウィレミナに値段を訊いた。
「ど、ど、どちら、ら、らも金ひ、ひ、100と、と、トンをい、い、1ご、ご、ゴーる、る、ルドと、と、として、て、て1000ご、ご、ゴーる、る、ルドで、で、です」
ウィレミナは頑張って値段を言った。
「え、勇者も1000?魔王も1000って事?」
アンは驚いて訊き返した。
「は、は、はい……」
ウィレミナはその子達の為にもその値段からは一歩も引くつもりは無かった。
「ねぇ、これって高いの?安いの?」
アンは相場が分からない為マナリスとレイナに高いか安いかを訊いた。
「勇者や魔王は人気であり特に勇者は世界の命運を左右する為高ランクの者なら1万ゴールドは下(くだ)りませんしその卵達であってもまとめて買えるのであれば十分安いと思います」
マナリスは勇者や魔王に詳しい為ある程度の相場感が有りお買い得だと思っている。
「私達は宇宙国家を統(す)べている様な貴族の神ではないのでそんな私達の軍資金を考えれば卵達を買って育成するのが現実的でしょうね。だから私も将来性を加味すれば十分安く『買い』だと思います」
合計2000ゴールドは大金だが先日の事でアンにはそれ程の慰謝料を払ってあるし買える金額ではあった。
「分かったわ!買いよ!」
アンは購入を決意した。
15/15.「あ、あ、ありが、が、がとう」
「あ、あ、ありが、が、がとうご、ご、ございま、ま、ます……」
ウィレミナは感極まって泣き出してしまった。
というのもウィレミナは――。
「何言ってるか分かんねぇよ!」
「ごめん。友達呼んでるからもう行くね」
「お前商人向いてないぜ?」
「なんだよ卵って。そんなのに1000ゴールドも出せねぇって!」
「勇者や魔王になってから売りに出すのが売る側としてのマナーじゃなくて?」
――などときつい言葉を言われ続け――。
(もう商人なんて辞めようかな……)
――もう辞めようかと思っていたところなのだった。
「泣かないで。私、二つ名は『働き者』。よろしくね?」
アンはウィレミナに自己紹介した。
「わたくしの二つ名は『楽園の夫人』です。宜しくお願い申し上げます」
マナリスもアンに続いて自己紹介した。
「私は『賢いリス』です。宜しくです」
レイナも自己紹介した。
「わ、わ、私の、の、のふた、た、たつ名は、は、はち、ち、ちんも、も、もくの、の、のめ、め、めがみ、み、みです。よ、よ、よろし、し、しくお、お、おねが、が、がいし、し、します」
ウィレミナも頑張って自己紹介した。
かくしてアン達はウィレミナのお店でも魂を買ったのだがアンはレイナから貰ったユウタの売買益(ばいばいえき)のほぼ全額を使い切ってしまったのだった。
後書き
クリスはかなりのダンジョン好きでダンジョンコアに目が有りません。
またクリスは自由奔放(ほんぽう)な運営方針とリーダー配置主義の為例えば英雄を配置しその英雄の名が世界に轟(とどろ)き他の者達も憧れて英雄を目指したり、その反対に大盗賊がその名を世界に轟(とどろ)かせ盗賊を目指す者達が現れたりし、またクーデターや侵略を目的とした敵国への干渉、治癒士の特権意識を背景とした高額治癒院開設などある意味賑(にぎ)やかで治安もあまり良いとは言えない状況です。
しかしクリスはこれ幸(さいわ)いにと悪党を減らし過ぎない様にしつつ暗黒街で売ってその稼ぎでダンジョンコアを収集し世界が栄(さか)える、というのを繰り返しているという感じです。
まぁダンジョンが出来ればその近くに町や都市が出来て冒険者産業やダンジョンで採(と)れる素材を使って職人産業なんかも栄(さか)えますからね。
そしてウィレミナの場合は勇者や魔王の卵達に活躍の機会を与えたくて売りに出した、という感じですがどの魂も夢を叶えられずに死んだ者達です。
ウィレミナは星の民(たみ)達からも「沈黙の女神」などと呼ばれていますがただコミュ障なだけでちゃんと世界を見守っているのです。
ちなみにクリスもウィレミナもなぜ暗黒街で商品を売っているのかというとやはり売りやすいからです。
というのも普通の歓楽街やアンが失踪した時のあの神々が入り乱(みだ)れる所でお店を出す事も出来るのですがやはり仮面も匿名も使えませんしみんな真面目ですから詐欺行為を働こうものなら即お縄です。また疑われただけでもアウトです。
その意味でも暗黒街は神々にとっても使いやすいのです。
なぜなら神々がトラブルになった時神は永遠に生きられるのでその確執も永遠に残る事になってしまうんですからね。
永遠に恨まれて嫌がらせが続くなんて地獄ですよ。
アーベルしかりアンリ達しかり。
まぁさすがに酷いと世界政府が動いて監獄にぶち込まれますが。
しかしカトラスの世界はカトラスが自由主義かつ自己責任主義なのでもう恨みを買ったらずっと恨まれて嫌がらせが続く訳ですからね。
だからこそ暗黒街は神々にとって匿名で利用出来る言わばネット空間の様な気楽に使いやすいものなのです。
話は変わりますがウィレミナがコミュ障になってしまったのは神託が思い通りにいかず世界大戦に発展してしまったからです。
それでウィレミナは誰かと話したり声を出すのが怖くなってしまったんです。
まぁ1つでも神託が下りるだけで世界中が大混乱になってしまったりもしますからね。
しかしコミュ障になってからというもの地上は安定したものの喋(しゃべ)る機会がさらに減りコミュ障に磨きが掛かってしまったという訳です(悲)