[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 14話 闇オークションの神 – 最高記録 (アーベルの視点)

前書き

青年男性向け – ソフト – R18

第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)

第 14 / 28 話

約 15,700 字 – 23 場面 (各平均 約 680 字)

1/23. 私は「」

私は闇オークションの支配人、神アーベル。

私のオークションは高級な品々を扱っておりVIPな顧客を幾多抱えているのが誇りです。

「支配人、ハイランクの出品物が規定数に達しました」

支配人の補佐エイヴリルがVIPオークションを開けるだけの出品物が集まった事をアーベルに報告した。

*アーベルの闇オークションではある程度まとまった数のハイランク品が集まるとVIP向けのオークションを開く仕組みになっている。*

「分かりました。それではとっておきのVIP達に招待状を送ってください」

アーベルはエイヴリルにVIP達に招待状を送る様指示した。

オークション屋としての腕の見せ所です。

「もう送りました」

やはりこのアシスタント、ほんと分かっています。

かくして闇のオークションの招待状がVIP達に配られた。

2/23.(あら、やっと来たわね)

そしてティアラは招待状を受け取った。

(あら、やっと来たわね。――この時の為に暗黒街を見逃していたと言っても過言ではないし盛大にパーティーをして正解ね。――ふふ、あともう少しでアベルは私のもの)

ティアラは招待状を手に取ると開けて裏面の品物一覧に目を通した。

*招待状の裏面には出品物が出品順に記載されていて招待客が落札したい物に目星を付けられる様になっている。*

そしてオークションの招待状は出品物の価格帯に合わせて配られる。

それもそのはずで安い出品物しか無いのに貴族の神々を呼ぶのは失礼にあたってしまうからだ。

つまり世界神のティアラにも届いたという事は世界神のティアラに見せられる程の商品が入荷したという事を意味していた。

そしてティアラは自分の手を汚さずにアベルを殺させる為あえてパーティーを盛大にし大々的に宣伝し様々な事情や感情により殺してくれそうな神々を招待していたし全て上手くいっていた。

ちなみに闇のオークションは神々の秘密の娯楽の側面があり出品物はその時まで明かされずまるで仮面舞踏会のように仮面を付けドレスコードをしっかりして出席しなければならなかった。

(ふふ、楽しみです)

かくしてティアラは闇のオークションに出席するため準備に取り掛かった。

3/23.(ついに来たか!)

そして招待状はカトラスにも届いた。

(ついに来たか!マジで良い魂が入荷したら招待しねぇとぶっ殺すぞ!ってアーベルの野郎を脅(おど)しておいて正解だったぜ!)

カトラスもアベルの魂をオークションで競(せ)り落とすつもりでアンのパーティーを大々的に宣伝し多くの悪事に手を染められる神々に声を掛けていた。

さすれば当然パーティーの出席者もその雰囲気も野心と策謀が渦巻きギラギラとしてしまう訳だ。

(服装はあれでいいか)

カトラスは戦勝記念の際にアベルがプレゼントしてくれたナイトドレスと仮面とオペラグラスを持っていた。

(ぜってぇに手に入れてやる!!!どんな手を使ってでも、全員ぶっ殺してでも手に入れてやる!!!!!!)

かつて狂犬女神と恐れられ封印していた昔のカトラスの姿がそこにはあった。

かくしてカトラスも闇のオークションへの出席を決意し準備に取り掛かった。

*ティアラは科学の世界、カトラスは魔法の世界を支配しており暗黒街は中立なのだがどちらも自分の世界の事なら自分に優位性が有る為アベルの魂をとりあえず自分の世界に置いておきたかった。*

4/23.「それとこちらがその一覧表になります」

そして話は規定数報告の直後に戻る。

「それと支配人、こちらがそのハイランクの出品物の一覧表になります」

支配人補佐のエイヴリルが出品物の一覧表を手渡そうとしてきた。

「忙しいので後(あと)で気が向いたら目を通してみます」

私は忙しいんです。

まぁ例の鬱陶(うっとう)しい団体からの嫌がらせのせいですが。

*アーベルは勇者アベルの大ファンであり自分もアベルの様な勇者になりたいと思って自分に「アーベル」と名付けたのだがアベルのファンクラブに入ってすらいないのに無許可で自分にその様な名前を付けたとしてファンクラブから快(こころよ)く思われておらずまぁそれだけならまだ良かったもののアベルに全く出会えない為仕方無くベルシリーズ(名前に「ベル」が付く勇者達のシリーズ)をこの仕事の役得で収集しているのだがそれも有って「アーベルがアベルを隠し持っているかもしれない」などという根も葉もない噂が独(ひと)り歩きし「アベルを返せ!」と執拗(しつよう)な嫌がらせに遭(あ)い続け余裕の無い状態が続いていた。*

そして結局アーベルはその一覧表に目を通す事は無かった。

5/23.「支配人、本日は大盛況ですね」

そして闇オークション当日。

「支配人、本日は大盛況ですね」

エイヴリルはアーベルに今日のオークションは盛り上がっている事を話した。

「その様ですね。まぁいつもの事ですよ。頑張っていきましょう」

アーベルは異様な熱気は感じていたが「いつもの事」だと思っていた。

*アーベルは某団体からの嫌がらせが最近酷過ぎて全くニュースを見ておらずまさか自身が大ファンのアベルの魂が出品されるとは微塵(みじん)も思っていない。*

「はい!今日も貴族の連中から大金を巻き上げてやりましょう!」

エイヴリルはいつも以上にやる気だった。

このアシスタント、ほんと分かっています。

*オークション屋はお金持ちに大金で落札させる事が矜持(きょうじ)という空気が有る。*

*またアーベルのオークション屋は取り分が10%であり売り上げは落札価格次第の為やはりお金持ちに大金を使わせてこそだった。*

6/23.「珍しくお揃(そろ)いの様だね」

そしてリーズが会場入りした後(あと)会場前でティアラとカトラスは合流したのだが――。

「おや、レディー達。珍しくお揃(そろ)いの様だね」

――神レオンハートが声を掛けた。

「うげっ、この声はレオンハートか……」

カトラスは苦手な奴に遭遇しげっそりとした。

「ちっちっちっ、ここでは二つ名で呼びたまえ」

レオンハートは実名を言われるのは嫌いではなかったがここは暗黒街の為ルールに則(のっと)り二つ名で呼んでほしかった。

「貴公子さん、私達に何の用かしら?」

ティアラは黒笑で要件を訊いた。

「美しいレディーがいたから声を掛けた。ただそれだけの事だけど?」

レオンハートにとってナンパと呼吸はもはや同じレベルだった。

「そ。じゃあそこをどいてくれるかしら?」

ティアラはレオンハートからのナンパをいつもの様に軽くあしらおうとした。

「いや、ちょっと待ってくれよレディー達。いやぁ、僕は珍しい物が出品されると聞いて観光客として来たんだけど、それが本物かどうか心配だったんだよね。でも君達を見て確信したよ。例の噂は本当だったんだね」

レオンハートの中で疑惑は既に確信に変わっていた。

「さて何の事かしら?」

ティアラはとぼけてカトラスを見ると――。

「あたしもわっかんねぇなー」

――カトラスもとぼけ返した。

7/23.「そこをおどきになって……!」

すると突然――。

「そこをおどきになって……!」

――金髪ロングでドリルヘアーの女性が怒鳴りながらティアラ達の間を抜けていった。

「は?なんだあのアマ。どっかで見た覚えが有る気がするけどよ」

カトラスは突然の無礼な態度に憤(いきどお)っていた。

「あのレディーは君達もよく知ってるあのアベル君のファンクラブの会長だよ。名はベルティーユ。僕は美人の事は声までちゃ~んとデータベースに記録しているから間違い無い!」

レオンハートは声や髪型や言動などでその女性が誰なのか分かっていた。

*ここは暗黒街でありオークションに出席するVIP達は全員ドレスコードを守りもちろん仮面も付けている。*

「あーあのアベルは出版社が殺しただの今も暗殺者から命を狙われているから助けろだのオークションの支配人が隠し持ってるだのほざいてる連中の親玉って事か?」

カトラスのもとにもその団体から定期的に問い合わせがきているしデモ活動なども見た事が有るから「めんどくせぇ奴らだなぁ」という印象で何となくは知っていた。

「そうね。ちなみに私も隠し持ってると思われてるわ。もちろん貴方もよ、カトラス」

ティアラの場合は恋敵(こいがたき)候補として記憶していた。

「え!?あたしもかよ!」

カトラスは自分も疑われていたと知り驚いた。

「まぁ彼女達はそりゃあもう全方位に喧嘩を売っているぐらいだからね。もちろん僕だって隠し持っていると思われているし。まぁただの可能性の1つに過ぎないから気にしない事だよ」

レオンハートはファンクラブの子達に同情しており多少の無礼は見逃す方針だった。

「そ、そうかよ……」

レオンハートが大人な対応を見せ付けてきた為カトラスは怒(いか)りが落ち着いてきた。

8/23.「それにしても君達はまだ『』みたいだね」

「それにしても君達は仲違(なかたが)いしたと思っていたけどまだ仲は良いみたいだね」

レオンハートはティアラとカトラスはやっぱりまだ仲が良いのだなと思った。

「うっせぇぞ!」

実際は狡猾(こうかつ)になっただけでお互いに死闘を繰り広げる覚悟は出来ている。

「おや、ごめんごめん。さて、本題に入ろうか。――僕はね、大トリの出品物に宇宙の半分を差し出すつもりだ」

レオンハートはティアラとカトラスに小声で驚愕の一言(ひとこと)を言い放った。

「おい、お前……」

カトラスは絶句してしまった。

なぜなら世界神がいち勇者の魂の為に持ち得る資産の内の半分を差し出すという事だったからだ。

「だから私達に勝ち目は無いと?」

ティアラは冷静にレオンハートの真意を訊いた。

「その通りだよ。それでは邪魔したね」

「超能力と魔法の貴公子レオハー」の二つ名にして超能力の世界神レオンハートはそう言い残すと会場へと入っていった。

「おい、あいつ本気か?」

カトラスはティアラにどう思うか訊いた。

「きっと本気よ。あの様子だと魂も確認済みで私達関係無く確信に至(いた)っていたはず。そしてきっと世界の半分を差し出しても元が取れるとみているに違いないわ」

ティアラはレオンハートの事をレオンハートも世界神まで上(のぼ)り詰めただけの事は有り頭がきれる策略家だと認めている。

「そこまでして何がしてぇんだ?あいつは」

カトラスはレオンハートの野望が何なのか思い付かなかった。

「さぁね。まぁ気を取り直して行きましょ」

ティアラは勝利を確信しており正直どれも些細(ささい)な事だった。

「おうよ!」

カトラスも勝利を確信しており正直どれも些細(ささい)な事だった。

かくしてティアラとカトラスは会場へと入っていった。

9/23.「あたしはこの席だな!」

そしてVIPエリアに入り――

「あたしはこの席だな!」

――カトラスは着席した。

「――しかし席も隣だったとわね……」

ティアラは苦(にが)笑いした。

「ま、オークション側の気遣いってやつじゃねぇの?知らねーけど」

カトラスは的(まと)を得ていた。

というか正確には機嫌を良くしてもらうというのもそうだしカトラスが暴れた場合の宥(なだ)め役や阻止役としてティアラが期待されているというのも有った。

「てかそもそもだけど何で貴方がここにいるのよ?」

ティアラもカトラスも待ち合わせをしていたのは事実だが「アベルの墓の前で会おう」という約束だったのに2人ともオークション会場に来ていた為化かし合いになっていた。

「てめぇこそ墓の前で会うんじゃなかったのかよ」

カトラスは嘘を吐(つ)いていたティアラに責められるのは不快だった。

まぁ自分も嘘を吐いていたし堂々と責める事も出来なかった。

「まぁお互いにオークションに来るのは分かってたでしょ?」

勝利を確信しているティアラは敗北確定の可哀想なカトラスを責めるつもりは無かった。

「まぁな。お前もオークションに来ると思ってたしな」

勝利を確信しているカトラスも敗北確定の可哀想なティアラを責めるつもりは無かった。

しかしマウントは取りたかった為ティアラよりも早く会場の前にいてティアラが来れば「おせぇよ!」とマウントを取りそして来なければ勝利の愉悦(ゆえつ)に浸(ひた)るつもりなのだった。

10/23.「ところで貴方は『』何を落札しに来たの?」

「ところで貴方はこのオークションには何を落札しに来たの?」

ティアラは白々(しらじら)しくもそもそも論をぶっ放した。

「何をって……あたしは剣とか武具、かなぁ~?」

カトラスは当然の如くとぼけた。

「いや貴方カトラスしか使ってないわよね」

ティアラは冷静に突っ込んだ。

「うるせぇ!あたしは教えてやったんだからてめぇも教えろ!」

(答えろティアラ!)

カトラスはティアラの目的を訊いた。

「私はおしゃれなオブジェ、かしらね~」

(アベルの魂だなんて言える訳無いでしょ!)

ティアラも当然の如くとぼけた。

「いやお前オブジェに興味ねぇだろ!」

カトラスはティアラが「宝石目的」と言ってくれた方がまだ納得出来た。

「いや、ほんとよ」

実際ティアラはオブジェに興味は無いのだがアベルの置き物だけは本気で買い集めている。

「へいへい」

(ティアラ!やはり間違いねぇ、アンのとこの勇者はアベルなんだろ!そうなんだろ!)

カトラスはティアラが「貴方だってね~」と言ってこないあたり本当の事を言っているのだろうと察した。

11/23.「しっかし嫌な『』がすんな」

「しっかし嫌な気配がすんな」

カトラスはただでさえ異様な環境なのだがその中でも妙な気配を感じていた。

「僕ではないよ?」

レオンハートは無実を示す様に言った。

*世界神達は最も眺(なが)めの良いVIPエリアに案内される。*

「てめぇの事じゃねぇよ!」

カトラスは即突っ込みを入れた。

「まぁ色んな世界の世界神や大貴族達が集まってるからそりゃ変なのも交(ま)じってるわよ。レオハーみたいに」

ティアラはいつもの事だと思っていた。

「ま、そうだよな!」

カトラスは納得した。

「だから僕を変態扱いしないでくれ……!レディー達にそう言われるととてもショックなんだ……」

イケメンナルシストのレオンハートはイメージを非常に気にしている為本当にショックを受けている。

「あら、だってここにいる誰よりも大きな野心を持ってるのが貴方なんじゃないの?」

ティアラはレオンハートの野心をえぐった。

(ぎくっ……!)

「あ、ははは……冗談を言わないでくれよ……2」

レオンハートは焦(あせ)った。

「まさかてめぇ、サーティーン様をぶっ殺す気か?」

カトラスも見えてきた。

「そんな事する訳無いだろうレディー達……物騒な事は言わないでくれ……」

レオンハートも多元宇宙の女神サーティーンに勝てるとは思っていなかった。

「あらそう。考え過ぎだったみたいね」

ティアラはレオンハートはアベルを使って何かを成し遂げる事で多元宇宙神になろうとしているのだろうと察した。

「そうそう。考え過ぎだよ」

レオンハートは過激派の神ではない為言われた事にショックを受けつつも誤解されなくてホッとした。

「ちっ。つまんねーの」

カトラスはレオンハートが下剋上を目指しているのだとしたら見直したというのに事実は違ってがっかりした。

12/23.「『』じゃないから気にしない事よ」

「まぁさっきの話に戻るけど気配は殺気(さっき)じゃないから気にしない事よ」

ティアラはその気配が殺気ではない為気にする必要は無いと思っていた。

「まぁそりゃそうなんだけどよ……気色わりぃっていうかよ……」

カトラスはずっとゾッとしていた。

「全然気色悪くないと思うけど」

ティアラは共感していた為そこまで不快ではなかった。

(必ずお助けしますアベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様アベル様)

「いやきめぇだろ……」

カトラスはこの手の気配は心底不快だった。

「僕も愛されたいなぁ……愛って素晴らしいっ!」

レオンハートは嫉妬的に不快だったがやはり同情しているしその気持ちの純粋さに感心してすらいた。

「てかてめぇは黙ってろよ……」

カトラスにはやはり愛だの恋だのは苦手だった。

「嫌だね。どうしてこの僕が黙ってないといけないのさ?」

レオンハートはおしゃべりが好きな為好きなだけ喋(しゃべ)っていたかったし誰にも止められたくなかった。

「なんだと……?」

カトラスはレオンハートに眼(がん)を飛ばしながら喧嘩を売られればいつでも買う準備が出来ていた。

「そろそろ始まるみたいよ」

ティアラは開幕を察した。

「お?」

カトラスはついに始まるのかと壇上を見た。

13/23.「レディースエンジェントルメン!」

そして客席が満員になり場が落ち着くと暗くなり壇上が照らされた。

「レディースエンジェントルメン!今宵は私が支配人を務めるVIP向けの特別な秘密のオークションにお集まりいただき誠にありがとうございます!今宵もこの私が司会を務めさせていただきます!」

遠くの客はオペラグラスを持ち客の視線をアーベルが一手に集めていた。

「それでは早速(さっそく)ハイランクの品々が出展されるVIPの為の秘密のオークションを始めさせていただきます!」

アーベルがそう言うと拍手喝采が起こり闇のオークションが始まっていった。

「これはとある銀河を荒らし回った宇宙海賊の女海賊王の魂。これを手に入れればお住まいの銀河に立派な海賊団が出来あちこち荒らし回ってくれる事でしょう!入札開始は金100トンを1ゴールドとして1000ゴールドから!また出品者は軍人の魂との交換なら割引に応じるとの事!」

「宇宙海賊……私は要らないわ。それにしても出品者は戦争中かその準備で軍人の魂がたくさん欲しいのね。一体誰かしら……物騒ね」

(へっくしょん……私の事噂してるの誰……まぁいいや。そんな事より軍人の魂を買わないと。ヴイ)

ティアラは宇宙海賊に興味は無かった。

「宇宙海賊か!面白ぇじゃねぇか!買った!1万!」

カトラスは女の戦士に目が無かった。

それにカトラスの世界は実力主義の為強者を求めていた。

*軍人の魂とは軍人としての資質を持ち多くの場合将来軍人を目指してくれる魂の事。*

*また1ゴールド=1万人*

*また1万とは要するに1億人分に相当するという事であり宇宙に進出した文明では一般的な宇宙戦艦の乗組員がだいたい1万人程(*米軍の空母の乗組員が5000人程*)でそれが1億人分という事は艦隊1万隻分の乗組員数に相当し1万の艦隊1個に相当する人数。これは小隊が10隻、中隊が100隻、大隊1000隻、旅団が1万隻、師団が10万隻という編成下では1個宇宙艦隊旅団に相当している。

「現在1万、1万です。お、そちらのお客様は10万。現在10万です」

やはりこの場に集まっているのは色んな世界の世界神や銀河神達であり自分の世界に重要人物を引き入れようとしたりコレクション欲求で集めようとする者達を相手にするとなると一筋縄ではいかなかった。

「貴方このままだと負けちゃうわよ?」

ティアラはカトラスを煽った。

「う、うるせぇ!20万だ!20万!」

カトラスは大胆にも1桁アップで対抗した。

「現在20万です。他にいませんか?」

アーベルは客に訊いたが――。

「それではあちらのお客様が20万ゴールドで落札です!」

――誰も競争者は現れずカトラスが落札し拍手喝采され――。

「よっしゃあ!やったぜぇ!」

――カトラスはガッツポーズした。

(海賊如きに100万なんぞ何を考えておる馬鹿女めが)

ジョルジュは憤(いきど)った。

「あら良かったわね」

ティアラは一応カトラスを褒めてあげた。

*本当はもっと白熱する出品物だったのだがカトラスが入札に参加した為その声がカトラスのものだと分かった者達はカトラスに鉄拳制裁されるのが怖くて萎縮し手を挙げられずにいたのだった。*

14/23.「お次は銀河一の美貌を持つ『』の魂!」

そしてそれでも闇のオークションは続いていった。

「お次は銀河一の美貌を持つ娼婦の魂!これを手に入れれば男達を色々な意味で満足させてくれる事でしょう!入札開始は金100トンを1ゴールドとして1000ゴールドから!また出品者は貴金属の金銀銅との交換なら割引に応じるとの事です!」

アーベルは娼婦の魂の入札を始めた。

「2000!」

「5000!」

「1万!」

「5万!」

「10万!」

「11万!」

「15万!」

「20万!」

「21万!」

「25万!」

男の神々が必死に入札をしていった。

「うげ、女の娼婦ってなると熱気がすげぇな」

カトラスは男達のあまりの熱気にゾッとした。

「まぁそういうものよ」

(彼へのプレゼントにどうかしら?銀河一の娼婦が彼を女好きにしてくれるかもしれないわよね……)

ティアラもアベルを女好きにする為にも入札に参加しようかと考えていた。

「40万!」

レオンハートも入札に参加した。

「そこのお客様、40万ゴールドです!」

アーベルはレオンハートを手で差した。

「おい、お前も参加すんのかよ……!やっぱ変態じゃねぇか……!」

カトラスはがさつだがスケベな事は妙に苦手だった。

「いや、僕は変態じゃないけど。一応慰安っていうか、ね~」

勝利を確信しているレオンハートは娼婦の魂をあれだけ世界の為に頑張って戦ってくれたアベルへの贈り物にしようと思っていた。

「けっ。もっとマシな嘘吐(つ)けっつーの」

カトラスは心底反吐(へど)が出ていた。

15/23.「7、70万です!」

「7、70万です!」

(手土産も無く彼を迎え入れるというのは無粋(ぶすい)というもの。軍資金はファンクラブの方々も出してくださっていますし余裕でしてよ)

勝利を確信しているベルティーユが入札価格を更新した。

「ほら、ベルティーユ嬢まで銀河一の娼婦にご執心(しゅうしん)の様だよ」

レオンハートはカトラスをからかった。

「うっせぇ!あのアマも変態ってこった!」

カトラスには男共もレオンハートもベルティーユも変態としか思えなかった。

(ア、アベルにはあたしさえいれば、い、良いんだかんな……!)

戦闘狂のカトラスも心はすっかり乙女だった。

(彼だって楽しみが無いから死を選んでしまったのかもしれない……それに娼婦が少しでも彼を女好きにしてくれるんだったら……!)

「100万!」

ティアラが大台に乗せた。

「お、おい……お前まで……!」

カトラスは呆(あき)れた。

しかし銀河一の娼婦の競売ともありそれで終わる事は無く――。

「150万!」

「200万!」

「300万!」

「500万!」

「750万!」

――白熱した。

(高過ぎますわ。勇者の入札じゃあるまいし。付き合い切れませんわ)

男の神々達もベルティーユも桁が違ってきた為諦めた。

(娼婦の入札に女が参加するオークションが有るか!この馬鹿共が!それに銀河一の娼婦なんぞごろごろおるわ!)

銀河持ちで無類(むるい)の女好きで変態としても知られるジョルジュは狙った獲物は絶対に手に入れる質(たち)であり食い下がるつもりは無かった。

「おいおい、姫様よぉ750万だってよ~負けちまうんじゃねぇか~?」

今度はカトラスがティアラを煽(あお)った。

「1000万!――大丈夫です」

ティアラは更なる大台に乗せた。

16/23.「そんなに出しても『』に魔王は倒せないぞ?」

「良いのかい?そんなに出しても娼婦に魔王は倒せないぞ?」

ここからの値段は勇者の領域でありレオンハートはティアラに冷静になる様に言った。

「良いわ別に。1500万!」

ティアラからすればアベルが喜んでくれるのなら安い物だった。

「2000万だ!」

(どこの田舎もんだ馬鹿女め。ワシよりも良い席に座りよってからに)

ジョルジュは全く降りようとしないティアラが不快だった。

*ジョルジュは小山の大将が大好きでありその為自分よりも高位の存在の事をあまり知らずその為科学の世界神のティアラと張り合っている事やその隣に魔法の世界神カトラスや超能力と魔法の世界神レオンハートがいる事も分かっていなかった。*

「3000万!」

「5000万だ……!」

「6000万!」

「ちっ7000万……!」

「1億!」

ティアラは1億の大台に乗せた。

「なんと1億ゴールドになりました!そしてそちらの7000万のお客様、いかがですか?」

アーベルはジョルジュを煽った。

(ぐぬぬ……ワシに恥を掻(か)かせよってからに……覚えておれよ……)

ジョルジュは首を横に振り降参の意思を示した。

「それではあちらのお客様が1億ゴールドで落札です!」

ティアラが1億で落札し会場全体から拍手された。

「てか娼婦の魂なんて何に使うんだよ。それに1億ゴールドって」

カトラスはティアラに娼婦の魂の使い道を訊いた。

*1億ゴールドは1垓円(1000京円の10倍)に相当し1兆恒星の銀河持ちの貴族の場合支配下の全ての恒星系から1兆円ずつ徴収しないとその額にならない。*

「そうだぞー普通は勇者の購入に使う金額じゃないかそれはー」

レオンハートも呆れた声で言った。

「まぁ良いじゃない。ちゃんと使い道は有るんだから」

勝利を確信しているティアラにはそれも些細(ささい)な事でほんの余興(よきょう)に過ぎなかった。

「せいぜい後悔しねぇ様になぁ」

カトラスはティアラの好きな様にしろという感じで言い放った。

17/23.「次が最後の『』です!」

そしてついに――

「レディースエンジェントルメン!長らくお待たせいたしました!次が最後の出品物です!」

――大トリの番になった。

「いよいよね」

ティアラは気合を入れた。

「ああ、そうだな」

カトラスも気合を入れた。

というか場の皆がついに真剣勝負という様に気合を入れた。

「最後を飾る出品物は世界神ティアラ様が直々(じきじき)に成年パーティーを開いた程のお気に入りの女神アンが所有しアン氏を最優秀新人女神賞へと導いた最高級の勇者。しかし惜(お)しくも同氏に毒入りの果実酒を飲まされ――」

とアーベルが言うと「はっはっはっ!」と場に笑いが起こった。

「――暗殺された悲運の勇者!その美しい魂の輝きをとくとご覧ください!オープン!」

出品物は最高級の織物(おりもの)で隠されながら台車で運ばれてきて「オープン!」という掛け声の直後にスタッフ達が織物を引くと――。

「おー!」

――その魂の凄まじい輝きに歓声が上がったが誰もが食い入る様に見入(みい)った。

*魂の色は性格が良い程白くなる。*

*そして魂の輝きはその者が持つ資質として持つ魔力量によって変わる。*

*つまり聖なる勇者の色で世界神フリードを打ち倒した程の魔力量を示す様に凄まじく光り輝いている。*

(す、凄い……)

エイヴリルも驚いてしまった。

「ちょっ、ちょちょちょちょっと。こ、これはい、一体な、な、何ですか……?」

アーベルはエイヴリルに念話で慌てて訊いた。

「え?出品物に決まってるじゃないですか」

エイヴリルは冷静に返事した。

「ど、ど、どうしてオークションを開催する前に言ってくれなかったんですか……!」

アーベルはこんな魂が出品されるならオークションになど出さず出品者と個別に交渉して買いたかった。

「あの、支配人には写真付きの出品物一覧表はとっくに渡してますよね?」

エイヴリルにとっては今更何を言ってるんだこの人は、という感じだった。

し、失念していました……大失態ですよこれは……。

某団体からの嫌がらせが酷くて心に余裕が無かったとはいえアーベルは酷く自分を責めた。

「支配人、欲しかったらとりあえず場を進めてオークションの後に個人で交渉してください」

エイヴリルはアーベルの言動からして絶対に欲しい出品物に出逢ったのだろうと思いいつもの様にしたらいいと提案した。

18/23.「ここは譲(ゆず)ってくんねぇか?」

「ありゃ確かにすんげぇけど普通の勇者だな。でもあたしはちょうど人手不足だから買うつもりなんだけどよ、おめぇも色男(いろおとこ)もここはあたしの面子(めんつ)を立てて譲(ゆず)ってくんねぇか?」

カトラスは焦(あせ)りながら棒声で白々しい長台詞(ながぜりふ)を繰り出した。

「私だって今人手不足で困ってるんだから譲(ゆず)ってくれてもいいと思うけど?」

ティアラも焦(あせ)りながら人手不足論に乗っかった。

「君達ブラフが下手過ぎやしないかい?あれが普通の勇者の魂の訳が無いじゃんか。僕はあんなに光り輝いてる勇者の魂を見た事が無いよ。いずれにせよ今大事な事はあの魂にいくら出せるか、だよ。いやぁ、あれはフリード様と相討ち出来ちゃうね。もう間違い無いよ」

レオンハートは確信の中の確信に至(いた)った。

き、綺麗です……私は勇者のベルシリーズをコレクションしていますがこれ程の魂は……いや、これ程の魂が有るのですか……?

アーベルはいまだに信じられず――。

「エイヴリル、加工はされていませんよね?」

――エイヴリルに偽装など加工をされていないか訊いた。

「されていません。検証しましたが本物です」

エイヴリルは再確認する様に調査報告を読みながら返事した。

そ、そんな……。

「光度は?」

アーベルはエイヴリルに光度を訊いた。

「もう、資料は配布済みなんですから。えーっと光度はS5つです。驚きですよね。私は最初何の冗談かと思いましたよ」

そ、そんな……。

これは元世界神フリード級です……そのフリードに匹敵する者はこの世界に……。

アーベルはそこまで考えるとついに論理的にその魂が誰なのかを理解した。

アベル様……。

かくしてアーベルは闇オークションの支配人としての集大成を見せる様に全力をもって挑む事にした。

(間違い有りません……!あれはアベル様です……!)

ベルティーユも核心に変わった。

そもそもベルティーユはファンクラブの情報網(もう)を使いアンの資料も確認済みであり勇者が1人も死なせない様に動いていた事とティアラとカトラスの動きが活発になりティアラとプリシラが視察と称してアンの星に入り浸(びた)っていた時点で十中八九アベルだと見抜いていた。

(おほー何の勇者か知らんが凄いな。たまには男も悪くないかもしれん)

ジョルジュも別の意味で興味を持ってしまった。

19/23.「おい!『』早くしてくれ!」

そしてアーベルがどうしようかと考えていると――。

「おい!司会早くしてくれ!」

「早くせんか!」

「早く入札を始めてください!」

――お客達急(せ)かされてしまった。

「いやぁ、申し訳有りません。あまりに白く輝いているので眩(まぶ)しくて頭が真っ白になってしまったもので」

とアーベルが言うと「はっはっはっ!」と人笑いが起こり――。

「それでは入札を始めさせていただきます!入札開始価格は金貨100トンを1ゴールドとして1000ゴールドからです!」

――光度などの説明を一切せず1000ゴールドから入札を始めた。

「支配人説明省(はぶ)きやがった……!」

アーベルはいつもなら値段を吊り上げる為にこれでもかと魅力を話しまくるのだが今回はその真逆で本気さにエイヴリルは驚いたのだった。

(やっと勇者の魂が買えるにゃ!)

リーズは待ちわびていた勇者の魂の入札が始まると同時に開口一番で――。

「3000ゴールドにゃ!」

――軍資金全額を提示したのだが――。

「はっはっはっは!」

――あまりの低さに会場が笑いで包まれた。

まぁリーズ以外は皆(みな)大貴族であり皆金貨100トンを1ゴールドとして100億ゴールドは下らないと思っていた。

「現在3000ゴールドです!」

アーベルは司会進行を進めながら――

素晴らしいです。どうにかしてあの娘(こ)から買いたいですね。

――頭をフル回転させてどうにかして手に入れる方法を模索(もさく)した。

なぜならアーベルがいくら背伸びをしても会場に無数に集まっている世界神をはじめとした大貴族達とのマネーゲームは分(ぶ)が悪いからだった。

そしてその直後に――。

「10億!」

「100億!」

「80億!」

「110億!」

「1000億!」

「50億!」

「30億!」

「120億!」

「25億!」

「100億!」

「115億!」

――皆(みな)思い思いに金額を提示し始めアーベルはコントロールが出来なくなってしまった。

20/23.「1兆恒星の銀河よ」

そして――。

「1兆恒星の銀河よ」

ティアラが銀河を口にすると場は静かになった。

*天の川銀河が恒星2000億から4000億。アンドロメダ銀河が恒星1兆。*

「銀河が出ました!現在1兆恒星の銀河」

アーベルは久しぶりに銀河が出た為興奮してきた。

*銀河の提供は世界神がよっぽど欲しい人材や物が有る時にしか出さない奥の手の様なもの。*

*また王国で例えるなら1兆恒星の銀河は王都に準ずる大都市であり侯爵や国によっては公爵ぐらいの価値が有る。*

「てめぇいよいよ正体を現しやがったな!じゃああたしは銀河団だ!」

カトラスも本気を出し始めた。

つまり世界神同士の削り合いという死闘の幕開けだった。

「貴方だってさっきは人手不足だの言ってた癖に。それじゃあ私は超銀河団よ!」

ティアラも譲(ゆず)る気は無かった。

そして入札価格が更新される度(たび)に会場が大きくどよめいた。

「僕も負けてられないね。超銀河団100個!」

レオンハートも参戦した。

「おい、銀河団だの超銀河団だの超銀河団100個だの一体どうなってんだよ……」

宇宙の大貴族達ですら、というか世界神達ですら身を削(けず)る様な世界神ティアラ達の戦いには付いていけず困惑していた。

「じゃああたしは宇宙の10分の1だ!」

「なら私は宇宙の3分の1よ」

「僕は先程君達に宣言した通り世界の半分を賭ける!」

レオンハートはついに世界の半分を差し出そうとした。

「もういいわ。私はこの地位共々(ともども)世界の全てを差し出す。だからこれで終わりにしてちょうだい」

(私はアベルと宇宙の片隅で夫婦でスローライフを満喫するのよ♡ふふふ♡)

ティアラは決着を付けるべく全てを差し出そうとしたのだが会場が困惑する様に大きくどよめいた。

「あたしも同じだ!地位も世界も全部くれてやる!」

(あたしはアベルと一緒に夫婦で冒険者パーティーでもやってみっかな!)

カトラスも全てを失ってでもアベルが欲しかった。

「僕も君達の思いの強さには完敗だ……」

レオンハートも敗北を認めた。

「どうするんですか支配人……!」

エイヴリルは必死に支配人に判断を仰(あお)いだ。

21/23. さてどうする……!私はどうしたら良い……!

さてどうする……!私はどうしたら良い……!

アーベルはエイヴリルに助けを請(こ)われながらも必死に思考を巡らせた。

そして思い付き――。

「そちらのお二方(ふたかた)はVIPの落札者の為の部屋にどうぞご案内いたします。皆様どうか盛大な拍手を」

――案内を告げ――。

「客室はあのお二方をVIP室へお連れしてください」

――念話で部下に指示を出した。

つまりアーベルはティアラとカトラスを別室へ案内しようとした。

「お、これは一緒に落札って事か?」

カトラスは安堵した。

「どうかしらね~まぁ一応案内に従ってみようかしら」

ティアラはとりあえずアーベルの指示に従う事にした。

そしてティアラとカトラスは拍手されながら別室へ案内されていった。

22/23.「『』誠(まこと)にありがとうございました!」

そしてついにホールから邪魔者達がいなくなった為――。

「それではレディースエンジェントルメン、本日の闇オークションは終了いたします!ご来場誠(まこと)にありがとうございました!退場の際は案内に従ってください!」

――アーベルは本日の闇オークションの閉幕を宣言した。

そして退室などが始まる中(なか)――。

「それではそこのお嬢さんはこちらに来てください」

――本当の落札者と2人きりになろうとし別室へ連れていこうとした。

「入札はどうなったにゃ!」

リーズは自分が落札出来たのか不安で訊いた。

「その話をこちらで」

アーベルはとりあえずリーズを別室へ連れていきたかった。

「はいにゃ!」

リーズは席を立って素直に付いていくつもりだった。

「ちょっと……!ティアラ様達はどうするんですか……?」

支配人補佐のエイヴリルは想定外の展開にアーベルに念話で理由の説明を求めた。

「後(あと)で説明します。とりあえず今日はもうお開きです」

アーベルは開催中にエイヴリルに騒がれても困るから今はあえて言わない事にした。

「わ、分かりました……!」

エイヴリルもとりあえず幾度と無く異常事態を切り抜けてきたアーベルの指示に従った。

「エイヴリル、別室Xにお客様をお連れしますのでクレト様達も急いでお連れしてください。もちろん他(ほか)のお手続きも完了させてください」

アーベルはエイヴリルにクレト達を連れてくる様に言った。

*アーベルの闇オークションでは落札者は閉幕後にVIP用の部屋へと案内されそこで出品者を交(まじ)え交換を行っている。*

「は、はい……!」

エイヴリルは指示に従った。

「あとエイヴリル、このオークションは本日をもって無期限休業します」

アーベルはエイヴリルには休業を宣言した。

「えー!?」

エイヴリルは突然の事に驚いた。

「私がいない間の対応は任せます。貴方が私の代理です。本日もいつも通りに手続きを進めてください」

アーベルはエイヴリルを代理人にした。

「えー!?」

エイヴリルはまたもや驚いた。

「もう給料は振り込んであります。エイヴリルは1時間後に従業員の皆さんに、そして1日後に関係各所にご報告してください」

アーベルは少しでも時間を稼ぎたかった。

「わ、分かりました……!」

エイヴリルはアーベルの指示に従うしか無かった。

23/23.「それを『』に売ってくださいませんか?」

そして契約成立後――。

「ところでお客様、それを私に売ってくださいませんか?」

――アーベルはリーズに交渉を持ち掛けた。

「いくらで売ってほしいにゃ?」

リーズは値段を訊いた。

「金100トンを1ゴールドとして100万ゴールドでいかがですか?」

アーベルは金額を提案した。

*金100トン1ゴールド=1兆円=石油1億バレル*

*また100万ゴールド=100京円*

「んー嬉しいにゃけどさっきは銀河だの宇宙全体など言ってたにゃよ?」

リーズはお金の嗅覚(きゅうかく)も鋭(するど)かった。

「それでは……1兆ゴールドでいかがでしょう!これが私のお財布の中の全財産です……!どうかお願いします……!」

アーベルは必死にお財布の中の全財産を提示した。

「凄過ぎて分からないにゃ……――」

リーズはその金額が大き過ぎてさっぱり分からなかった。

「――けど……――」

そしてリーズは――。

*「ママぁ……!ママぁ……!」*

――いざという時はお金なんて役に立たなかった事を思い出し――。

「でも駄目にゃ。本当に役に立つのは実物(じつぶつ)資産にゃ!」

――女神ベアトリスから学んだ知識に従うのだった。

「そうですか……分かりました……ならばせめて私にその勇者の活躍を見届けさせてはいただけませんか?」

アーベルはせめてアベルと思わしき勇者の活躍をこの目で見たかった。

「見守りたいって事かにゃ?」

リーズには伝わっていた。

「そうです!どうか!」

アーベルは人生で初めて心の底からお願いをした。

「女神様に相談するにゃ!私も頑張って説得するにゃ!」

リーズはアーベルの希望を叶えてあげたかった。

「はい!どうか宜しくお願い申し上げます!」

アーベルはリーズの心遣いに感謝し――。

――かくしてアーベルは自身のオークションで最高記録を叩き出すと稼業を一時休業しベアトリスの魔王の世界へと渡り――。

(もう!支配人の馬鹿野郎~!)

(ぜってぇぶっ殺してやる!覚悟しとけぇ!)

(ふぅ、なんだか背筋(せすじ)がぞくっとしましたけど気にしない様にしましょうか)

――エイヴリルはVIPルームで放置されアーベルに騙(だま)された事を知ったティアラ達によって支配人のアーベルに押し付けられた事後処理で過去一で地獄を見るのだった。

後書き

まぁ神々にとっての「勇者」とは「推しのアイドル」ぐらいの価値が有りますからね。

まぁもちろんアイドルに興味が無い人もいるのでそういう人は「勇者」は別に……という感じです。

でも「勇者」がいれば確かに役に立ちますからね。

「勇者」は興味の無い神々にとっても関心事(かんしんごと)ではあるという感じです。