[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 11話 暗殺道具職人の女神 – 憂鬱 (ソニアの視点)
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青年男性向け – ソフト – R18
第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)
第 11 / 28 話
約 6,400 字 – 9 場面 (各平均 約 710 字)
1/9. 私は『』
私は暗殺道具を作って売っている女神ソニア。
このお婆ちゃんな見た目は変装魔道具によるもの。
そりゃ暗黒街と言えど本当の姿で顔出しで暗殺道具を売る訳にはいかないもんね。
それにしても、ん~あの娘(こ)は一体誰を殺したいんだろう。
まぁ何となく分かってる。
あんな優等生そうな娘(こ)が暗殺道具を買うなんて大体復讐か嫉妬が相場。
でも切羽(せっぱ)詰まっている感じは無かったからきっと嫉妬。
そして神を殺せるか訊いてこなかったから殺したい相手は神じゃない。
って事は……自分が下に見ていた女神が優秀な勇者を手に入れて調子に乗っているものだから殺したくなっちゃった、とか?な~んちゃってね。
私は別に捜査官じゃないし私が作った暗殺の魔道具を買ったお客さんが誰を殺そうと知った事じゃない。
それに私の暗殺道具を買ったお客さんが必ずしも殺しを実行する訳じゃない。
殺しの目前(もくぜん)まできて日和(ひよ)ってやめちゃうお客さんだっている。
でも別にそれでも私は構わない。
だって私は誰かを殺したい人にその誰かを殺せる道具を売ってあげるだけだから。
ソニアはソニアで独自の正義感を持って暗殺道具を作り売っていた。
2/9.「調子どう?」
そしてしばらくすると――。
「お婆ちゃん、調子どう?」
――友達から声を掛けられた。
「元気だよ。アンリちゃんはどうかい?」
ソニアは体の奥まで沁(し)み込んでいる自然なお婆ちゃんの演技で返事をした。
「私も元気だよ。ヴイ。で、早速だけどいつものやつお願い」
アンリはソニアのお店で買い物がしたかった為「いつものやつお願い」という合言葉を使った。
*ソニアは一流の暗殺道具職人でありそして「お店持ち」でもあるから貴族や裕福な神相手に商売をしているだけでも十分な稼ぎが見込める為本当はこんな薄暗い所で露店を開く必要は無いのだが慈愛の精神を持って貧乏な神でも買える様に露店を開いている。* *そしてその際は当然ながらお店を留守にしている為お店にソニアがいない時は「いつものやつお願い」と言いに行く必要が有った。*「良いよ。来ておくれ」
ソニアは露店を畳(たた)むと自分のお店にテレポートしアンリも付いていった。
3/9.「で、何が欲しいの?」
「ふぅ~で、何が欲しいの?」
ソニア物を置くといつもの様に変装を解きアンリに要件を訊いた。
「とりあえず『科学・対人・短剣・柄(つか)木(もく)・地味・消えるやつ』」
アンリは業界用語で目的を果たすと消滅する短剣を注文した。
*暗殺者と暗殺道具職人は冒険者と鍛冶屋の様にお互いに良好な関係で二人三脚でやっている事が多い。*「科学なんて珍しいね」
アンリは最高の暗殺者であり次の仕事が魔王もSランク冒険者も出てこない科学の世界のターゲットな事に驚いた。というかそんなアンリがそんな仕事を引き受けた事に驚いた。
「うん、珍しい。でも断れないから仕方無い」
アンリは強いターゲットの暗殺しか引き受けないのだが世界神のティアラとカトラスからの依頼でありあんなに凄(すご)まれては絶対に断れなかった。
「アンリが断れない相手って……」
ソニアはアンリとは長い付き合いでありアンリが気に入らない仕事は引き受けない事も知っている為アンリが断れない存在を想像し恐怖した。
「ソニアは知らない方が良い。考えない方が良い。とりあえず用意出来そ?」
アンリはソニアを巻き込みたくなかった。
「出来るけど……てか何で柄(つか)木(もく)?柄(つか)木(もく)なんて木刀(ぼくとう)案件以来だよ」
ソニアはアンリからの注文の条件の1つが柄(つか)木(もく)な事に驚いた。
「文明レベルがね。とりあえず文明初期のやつでお願い」
アンリはソニアへの情報共有についてもその内容まで最新の注意を払っている。
「強度想定は?」
戦闘に使うのか、あるいは強力な相手に使う場合は相当の強度が必要になる為強度についてはちゃんと把握しておく必要が有った。
「2、3回耐えられたら大丈夫。相手は人間」
アンリとしては仮に相手が剣で応戦してきたとしても2、3回耐えられれば十分だと考えていた。
「そ。で、消えるのは魔法でいいの?」
科学の世界では一般人に見える形での魔法の使用が禁止されている為それについても確認しておく必要が有った。
「うん。あと消えるのは時間差で」
アンリは時間差で消える短剣が欲しかった。
3/9.「でもぐさりで殺せるかなぁ……?」
「分かったよ。1時間で消える様にしておく。でもぐさりで殺せるかなぁ……?」
ソニアはアンリとは違って科学の世界のターゲットを殺す為の道具も扱っている為科学の世界の人といえども丈夫な事は知っておりただ刺すだけで殺せるとは思えなかった。
そしてソニアがそう気になったのはアンリが直接剣を振るった場合は確実に仕留められるのは分かっているのだがアンリは最高の暗殺者でありそう言われる所以(ゆえん)として自ら剣を振るだけでなく相手を確実に仕留める為に他者を即席の暗殺者として仕立て上げるケースが有りその場合は大体現地の人材が使われる為剣の心得が有るに越した事は無いが例(たと)え素人(しろうと)を使ったとしてもその様な現地の人がその短剣を使ってちゃんとターゲットを仕留められるのか?と気になったのだった。
「科学の人ってそういうので即死だと思ってたけど……なんか不安になってきたから毒も買う」
アンリはソニアが科学向けの暗殺道具を扱っている事も知っているし自分の認識が常に正しいとも思っていないからソニアの直感を信じて念には念を入れる事にした。
*暗殺者界隈(かいわい)では科学の世界での暗殺は非常に簡単でありわざわざ自分達が出向くまでも無いと考えられている。* *ただし科学の世界といえども神やその神に仕えている天使達を相手にする場合は話は別で科学の世界の神や天使が必ずしも雑魚(ざこ)という訳ではなく魔法の世界に嫌気が差して引っ越した武闘派の神もいれば天使が元Sランク冒険者だったりという場合も有り科学の世界は魔法が無い分魔王などといった強敵がいないという意味で平和な為腕が鈍っているとしても侮(あなど)れないという認識。*「そうしときな。――じゃあ、毒ならこれなんかどう?私が最近作ったやつ。効き目抜群。神も殺せちゃうけどこのアクセサリーを付けさせておけば神でも人でも平気。もちろん毒を盛(も)った相手が死んだら毒も消える。ただ魔導部分は残るよ。科学の奴らには見えないけど」
ソニアはあの(娘)に売った毒を見せて商品紹介をした。
「良いよ。それにする。でもアクセサリーは要らない」
アンリはソニアが職人としてその性(さが)で職人としての二つ名を残したい事を知っているからそれは認めた。
*毒の成分を調べればどの職人が作ったのかが分かる様になっている。*「そ。毎度(まいど)」
ソニアはアクセサリーは自信作だった為売れなかったのは残念だった。
4/9.「お金はこんなんで良い?」
「お金はこんなんで良い?」
アンリはお金を提示した。
「どれどれ……?――って……金100トン1ゴールドで100万ゴールドの10分の1と魔法の世界の銀河と科学の世界の銀河の10分の1ぃ……!?」
ソニアはその金額に目が飛び出そうになった。
*金100トン=天界の1ゴールド=1兆円=石油1億バレル*
「うん。約束。1割」
アンリは注文の内容に関わらず今回もいつも通り1割を支払いたかった。
「銀河がそれも2つが報酬って……そりゃ断れないよね……」
ソニアは依頼主の肩書きが想像付いた。
「そう……でもこれは『今までありがとう料金』だから」
アンリは駆け出しの頃の付き合いが有るソニアに感謝していた。
「もう辞めちゃうの……?」
ソニアはアンリの口ぶりから暗殺者業を引退してしまうのではないかと察した。
「うん。もう辞める」
アンリはこの仕事を最後に引退しようと思っていた。
5/9.「『』なんて気にしちゃ駄目だよ」
「嫌がらせなんて気にしちゃ駄目だよ」
ソニアはアンリが嫌がらせされている事を知っていてそれが原因で辞めてしまうのではないかと思った。
*アンリの師匠はあのアベルを暗殺しようと付け狙っていた事で有名でありその弟子であるアンリもアベルのファン界隈から執拗(しつよう)な嫌がらせを受けている。* *その嫌がらせというのは隣に宇宙国家を作られ侵略戦争を仕掛けられるというもので全方位から攻撃をされ続け辞めようにも辞めたら国が持たない為その為辞めるに辞められずティアラとカトラスから移住先の銀河を手に入れられる手筈(てはず)が整った為この仕事を最後に足を洗おうと思っていた。* *もちろんソニアの師匠がアンリの師匠のお抱えの職人だった為アンリ程ではないものの嫌がらせを受けている。*「でも師匠も目が覚めないし……とりあえず辞める」
アンリはこの稼業を続けるモチベーションを失っていた。
「じゃあ私も辞める」
ソニアもアンリが辞めるなら自分も辞めたいと思った。
「え……ソニアも辞めちゃうの……?」
アンリはソニアの決断に驚いた。
「うん。だって友達だもん」
ソニアはアンリを友達だと思っていた。
「ソニア……感激」
アンリは友情に感極まった。
「アンリちゃん」
ソニアとアンリは抱き締め合った。
6/9.「師匠の方はどう?」
そして少ししてからアンリは――。
「師匠の方はどう?」
――ソニアの師匠の事を訊いた。
「相変わらず。ずっと寝てる。――アンリちゃんのお師匠さんは?」
ソニアもアンリの師匠の事を訊いた。
「うちも同じ。目が覚めない」
アンリも悲しそうに返事をした。
「この仕事を辞めても一緒に探し続けよ?」
ソニアは前向きだった。
「うん。探そう」
アンリはソニアの前向きさに元気を貰った。
7/9.「ところで『』2つもどうするの?」
「ところで銀河2つもどうするの?」
ソニアはアンリが報酬に銀河2つも貰ったらどうするのか気になった。
「お引越ししたら大きくして復讐しに行く」
アンリはやり返すつもりだった。
「良いね。協力するよ」
ソニアも望むところだった。
「ありがとう。頑張ろう」
アンリはソニア感謝した。
「うん。その為にも暗殺頑張ってね」
ソニアはアンリを応援した。
「もち。――で、短剣はいつ取りに来たら良い?」
アンリは短剣の受け渡しがいつになるか訊いた。
「物は有るんだけど柄(つか)を交換しないといけないからとりあえず1時間が目安かな。もっと掛かるかもしれないけど。早くて数十分。出来たら呼ぶね」
こだわりが出てきたり問題が起こると時間が掛かってしまう事も踏まえある程度余裕を持って伝えた。
「うん。分かった。じゃあまたね」
アンリは毒をポケットに入れるとテレポートしようとし――。
「うん。また来てね」
――ソニアはテレポートしていくアンリを見送った。
8/9.「速報です」
そして数十分で柄(つか)を交換し受け取ったアンリはその武器を持ってターゲットのいる世界へと潜入していき時は流れ――。
「速報です。世界神ティアラ様のお気に入りにして最近ティアラ様主催の異例の成年パーティーが開かれ高ランク勇者を所有し最優秀新人女神賞にも輝いた女神アン様のその勇者が何者かに刺殺されその魂が連れ去られてしまったとの事です」
――速報が入ってきた。
あ……!アンリちゃんがやったって事なのかな……!確認しないと……!
ソニアはアンリの事が気になり――。
「ねぇ、アンリ。聴こえる?」
――念話を飛ばした。
「聴こえる」
アンリは返事をした。
「今ニュースやってるけどあれアンリがやったの?」
ソニアが単刀直入に訊いた。
「あれは私じゃない。先を越された」
アンリは大層残念そうに返事をした。
「えーそ、そんなぁ……」
ソニアは辛そうなアンリに同情し落胆(らくたん)した。
「毒殺だった……ソニアのと同じやつ……」
アンリはソニアに明かした。
「あ……じゃああのお客さんの仕業(しわざ)かも……」
ソニアには心当たりが有った。
「そう……でも先を越されたのは私の責任。ティアラ様には毒の職人の事は黙っておくから」
アンリはソニアの事はちゃんと隠し通すつもりだった。
「うん、お願いね」
ソニアはアンリの気遣いに感謝した。
「もち。じゃあまたお店に買いに行くね」
アンリは念話を終えようとし――。
「うん。待ってるね」
――ソニアも念話を終えた。
アンリもソニアもお互いに引退する必要が無くなり内心(ないしん)ほっとしていたのだった。
9/9.「『』は眠り就くんだって」
そしてソニアは師匠の事を思い出した。
「ソニア、パトリシアは眠り就くんだって。だから私も眠りに就くわ。だからお店の事はお願いね」
そしてソニアは師匠の事を思い出した。
「どうしてお師匠まで眠りに就くの……?」
ソニアは師匠のハンナの口ぶりからして普通の眠りでない事は分かっていた。
「だって私はパトリシアの友達だから。パトリシアを1人にはさせられないの」
ハンナはパトリシアと運命を共にするつもりだった。
「どうして……どうして……」
ソニアは泣き出してしまった。
「泣かないで。大丈夫。またいつかきっと会えるわよ。アンリと仲良くね。そして『アベル』を探して」
ハンナは泣きじゃくるソニアを宥(なだ)めながらアンリの事を頼みパトリシアの目覚めのヒントとなる者の名前を告(つ)げた。
「うん。分かった……」
かくしてソニアはハンナの言い付けを守る事を決意した。
そして今もなお――。
師匠、私頑張ってるからね……!
――ハンナの目覚めを待っているのだった。
後書き
アンリの師匠はアベルを暗殺しようとしていたのでその頃から嫌がらせが続いているという感じです。
また神々の嫌がらせというのは宇宙に進出している国の場合は隣に国ごと引っ越しされて侵略を仕掛けられるという感じです。
そしてアベルファンクラブを敵に回してしまっているので周囲を包囲され侵略側は他の会員達から支援も受けられるという鬼に金棒の状態です。
それでも凄腕なのでその稼業の収益で抵抗出来ていたのですが先を越されてしまったので銀河も手に入らず引退も出来ずという感じになってしまいました。
そして話は変わりますがソニアの師匠ハンナはパトリシアの目が覚めれば自分も覚める様にしておりパトリシアには無断でしています。
言ったら絶対に止められてしまうし眠りに就きたいパトリシアを眠りに就かせてあげられなくなってしまいますからね。
ちなみにアンリとソニアの師匠は表向きは修行中とか引退中とか一次離脱中という様になっていますが実際は眠りに就いてしまっており師匠達の名誉に関わるし弱みにもなるとしてその事を公(おおやけ)には公表出来ずにいます。
またアンリもソニアも師匠達がアベルを狙っていた事は知っておりアベルと親しかったティアラとカトラスに頼る事も出来ずにいます。
でもティアラはパトリシアのアベルへの恋慕(れんぼ)と今眠りに就いてしまっている事、また目を覚ますにはアベルの口付けが必要だという事が分かっていてアベルが手に入り次第パトリシアを助けるつもりでいます。
また暗殺ギルドのギルドマスター・オスカルもアンリの師匠の件を勘付いていてアンリとソニアの為にもティアラとカトラスの依頼にぶつけたという感じです。
また話は変わりますがアベルの過激なファン達による執拗(しつよう)な嫌がらせにあっているのは他にもいるのでした(笑)