[R18] 女性を愛する天才の俺様、異世界を救う (JP) – 1章 1節 7話 科学の世界神 初恋(ティアラ視点)
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R18
第1節 地球の女神(第1章 勇者の村)
第 7 / 12 話
<何でも訊いてくださいね♪>
これは世界神と天使達がモニターでアンとユウタの様子を見守り始めた時の事。
「皆、せっかくですしわたくしに訊きたい事があれば何でも訊いてくださいね♪」
世界神は左右に座っている天使達を見ながらそう言った。
「はい、よろしくお願いします」
1号がそう言うと女神に仕える天使達は皆1号に続いてそう言った。
場の空気感は楽しい女子会らしさがあった。
「こちらこそよろしくお願いしますね♪」
あの子に仕える天使達は本当に皆良い子達ね。
この子達にならあの子を任せられるわ。
かくして天使達は世界神の計らいで気楽に何でも質問出来るようになった。
<勇者っていうのはね!>
そして女神が世界神一同が困惑する事を言った。
「勇者っていうのはね!この世界の為に私の言う事を何でも聞いて私に尽くす存在の事よ!当然私の為に死ねるわ!」
あの子は本当にお馬鹿なんだから……勇者にそんな事までする義務がある訳が無いでしょう……それにそんな事を言ったら勇者になってくれる訳が……。
世界神達は女神が失言してしまったと思ったのだが――。
「分かりました。私で良ければ女神様の勇者にならせてください」
えーーー!?
――世界神も天使達も青年が勇者になる事をあっさりと受け入れた事に驚愕した。
<何なのでしょうか?>
そして1号が口を開いた。
「世界神様、僭越ながらさっそくお尋ねさせていただきますが、『勇者』とは何なのでしょうか?勇者とは本当に女神様がおっしゃっているような存在なのでしょうか?」
1号が世界神に尋ねると天使達の視線が世界神に向いた。
「訊いてくださりありがとうございます。わたくしの知見の範囲内でお答えしますね。勇者とはわたくし達神にとってわたくし達に代わって地上で人々を導く存在の事です。そしてあの子が言っていた事についてですが勇者は別に神が言う事を全て聞く必要は無いですし尽くす必要も有りませんし、当然神のために死ぬ必要もありません。回答は以上でよろしいでしょうか?」
あの子はあの青年に自分本位な勇者像を教えてしまったのよ……。
「分かりやすかったです。ありがとうございました」
伝わったようで良かったわ!
でもあの子の天使達は皆番号で呼ばれていて……。
あの子が我儘で天使達もあの青年もごめんなさい……しかしわたくしも昔はあの子のようだったのです……。
かくして天使達は世界神の口から正しい勇者像を知る事が出来たが世界神は自分の過去を思い出してしまった。
<私はこの星の女神よ!>
そしてこれはかつて星神だった世界神が勇者と初対面した時の事。
「私はこの星の女神よ!早速だけどあんたを私の勇者にしてあげるわ!!」
(め、女神様ぁっ!?で、わ、私が女神様の勇者にっ!?そもそも勇者とは何ですか!?)
「初めまして、女神様。あの、『勇者』とは一体何ですか?」
そんな事どうでもいいのよ!
「口答えしないの!私の言う事は絶対よ!じゃ、今から私が指差す方角へ私をその馬に乗せて走りなさい!」
……。
今思い返せば昔のわたくしはとんでもなく我儘な女神でした。
わたくしが育った世界は剣と魔法とスキルが存在した世界です。
それもとてつもなく実力主義で神々ですらやられるのは明日は我が身という様なくらいの熾烈な競争があり、わたくしを叱ってくれる神など誰もいませんでしたから……。
<一度帰宅させてもらえないでしょうか>
「すみません、女神様。私の帰りを待っている家族がいるのです。ですから一度帰宅させてもらえないでしょうか」
……。
「ふざけんじゃないわよ!私は忙しいの!あんたね、私の言う事を聞かないとあんたもあんたの家族もこの世界の皆が死ぬことになるのよ?それでもいいの?」
……当時の私は別にそんな事も無いのに無理やり彼に言う事を聞かせてしまったのです……ごめんなさい、アベル……。
「承知しました。それでは私の手をお取りください」
馬に乗った彼はわたくしに手を差し伸べてくれたのですが……。
「嫌よ!馬鹿じゃないの!私が自ら乗る訳無いじゃない!あんたが私を乗せなさい!」
昔のわたくしの馬鹿馬鹿馬鹿ーー!
かくしてかつて星神だった世界神は勇者と行動を共にし始めた。
<わたくしにもそんな頃が>
そしてアンがユウタに名前を授けてほしいと言った。
「ところでね……私も名前が無いの……だから今度はユウタが私の名前を考えてちょうだいよ……」
ふふ♡わたくしにもそんな頃が有ったわね♡
神は自立していなければならないという方針の世界が多くどの神も最初は名前を授かっていないものです。
ですから成年の儀式として勇者を任命した際に名前を授けてもらうのが一般的、いえ、もはやそれも込みでの儀式です。
「私決めたわ!私の名前はたった今から『アン』よ!ユウタもこれからは私の事を『アン様』と呼びなさい!」
<それを疑問に思うのはごもっともです>
アンがそう言うと1号から尋ねられた。
「なぜアン様には今まで名前が無かったのですか?」
1号は皆の代わりに率先して質問していた。
「それを疑問に思うのはごもっともです。それではわたくしがそのご質問にご回答させていただきますが、多くの世界では神は自立していなければならないという方針がございます。そしてわたくしの世界も例外ではなくわたくしの世界で生まれた星神は最初に名前を授かっていないものです。つまり自分で見つけなさい、という事なのです。そして人口が増えてきて建国フェーズに入ればついに勇者を任命しその勇者との交流の中で自分を見つめ直し、名前を授かったり自分で名付けるなどして自分の判断で決めていくものなのですよ」
わたくしがそう言うと天使の皆さんは納得したように頷いたりしていました。
「教えてくださりありがとうございました」
1号がそう言って世界神に感謝した。
……もしわたくしが彼女達に解説しなければアンが教えるのはいつになっていたのでしょうか……。
それを考えただけでも非常に恐ろしいです……。
それにしてもフフ、わたくしの時はどうだったかしら。
かくして天使達は世界神の口から自分が仕える女神アンに名前が無かった訳を知る事が出来たが、世界神は自分の時はどうだったかを回想した。
<お出掛けよ!>
そしてこれはかつて星神だった世界神が勇者から自分の名前を提案された時の事。
「ちょっと!早く支度しなさい!今日は城下町にお出掛けよ!」
これがわたくしにとって最初のデートでしたね。
「承知しました。今すぐ参ります」
アベルは私が言った通りに早く身支度してくれましたね。
<行くわよ!>
「ほら!行くわよ!」
わたくしはあの時は何もかもが強引で――。
「はい」
――アベルの気持ちも尋ねずに街に連れ出してしまっていた事を反省しています。
<一緒に歩いてあげるわ!>
その日は週末で、デートで腕を組んだり手を繋いだりして街中を歩いているカップルが多かったのでしたね。
それを見て私もしたいと思ったものでした。
「童貞のあんたが本当に本当に可哀想だから、私が腕組んで一緒に歩いてあげるわ!」
……わたくしの上から目線が甚だしかったです。
どうして素直になれなかったのでしょうか……。
「ありがとうございます」
……。
<私とのデート楽しい?>
わたくしがいくら嫌味や無理難題を言っても不平不満を一切言わずに何でもしてくれた彼の言動が信じられなかったわたくしは――。
「ねぇ、私とのデート楽しい?」
彼の気持ちを確かめるような事も尋ねたんでしたね。
――わたくしは何もかもが未熟でした……。
「楽しいですよ」
わたくしはあの時のアベルの優しい微笑みが今でも忘れられません。
「嘘吐き……」
わたくしは自分が我がままな事を自覚していました。
「嘘ではありませんよ」
あの時のわたくしは彼の言葉を信じられませんでした。
「だってずっと敬語じゃない!敬語で喋ってるカップルなんて周囲に一組もいないわよ!」
未熟だったわたくしは他者と比較して一喜一憂していましたね……。
<君の好きな物を僕に教えて>
「それじゃあ悲しませてしまったお詫びに僕が何かプレゼントしてあげるから、君の好きな物を僕に教えてほしいな」
今思えばわたくしは彼の優しさにどっぷりと甘え過ぎていました……。
「それは良いけど……私の事名前で呼んでよ……」
……。
「僕に君の名前とプレゼントしてほしい物を教えてほしい」
……。
「私に名前なんて無いわよ!バカ……!――プレゼントはきらきらしてる物が良い……」
わたくしったらもー!!これは本当にわたくしの黒歴史です!!!!
そもそもその頃のわたくしには名前など無く名前で呼んでほしいと言ったのはとても理不尽でした。
それに人目も気にせずに怒鳴ってしまって、待ちゆく人々は立ち止まってわたくし達は視線を向けられていましたね……。
浮気や粗相などをして彼女に叱られたと周囲に誤解されてしまった彼の方がとっても辛かったはずです。
でも彼は何も不平不満を言わずに吞み込んでくれたんでしたね……。
<一緒に探しに行かないかい?>
「じゃあ僕が君の名前を考えてあげるし君が好きなきらきらしている物を一緒に探しに行かないかい?」
彼はとても優しかったです……。
アベル……。
「ええ!行くわよ!行ってあげるわよ!」
私がそう言って機嫌を良くしたら「な~んだ」と待ちゆく人々は再び歩き始めたのでしたね。
<きらきらがいっぱい!>
そしてわたくしと彼は宝石店に入り――。
「きゃー!きらきらがいっぱい!」
――色々な宝石を見て回ったんでしたね。
「うん、きらきらがいっぱいだね」
彼の優しさが辛いです……。
<私これ欲しい!>
「ねぇ、私これ欲しい!」
わたくしは値段の事も考えずにお姫様が被るようなティアラを選んでしまいました。
「お客様お目が高い!それは王室御用達の宝石職人が日夜丹精を込めて造られた現王妃がお被りになられているティアラと同モデルの物です!ちなみに個数に限りがある限定品ですよ!」
(ふん、身なりは悪くはないが、せいぜい騎士爵か裕福な商人のお坊ちゃんか、それなりの冒険者風情といった程度だろう。どうせ買えんのだからさっさと身の丈に合った宝石を選んでくれたら良いものを。――いや、主導権を握っているのはこの馬鹿そうな嬢ちゃんの方か?)
<あったまきた!>
「あったまきた!わ・た・し のアベルならこんなの余裕で買えるわよ!だって勇者なのよ?」
あの頃のわたくしはなんて軽率だったのでしょう……。
「お、お客様!そうとも知らずに申し訳ございませんでした!」
私の心の声がつい口に出てしまっていたのか!?
(勇者……じゃあ聖教会の神輿か。しかし現勇者は法王庁にいるはずだが……)
「分かったのなら良いわよ!で、これはいくらなの?」
あの手の高価な商品には「要相談」という値札が付いているものなのです。
それはお店によって「この商品を売るお客様を選ばせていただきます」や「お値段が高過ぎるが故にその時の貴金属の取引価格といった物価によってお値段を決めさせてください」といった意味合いがあるものなのです。
私がそう言うと宝石商は不敵な笑みを浮かべていましたね。
<でお譲りさせていただきます!>
「大金貨100枚のところ!特別に70枚でお譲りさせていただきます!」
あの頃のわたくしは何も知りませんでした。
きっと彼は本当の値段が大金貨70枚だった事を知っていたはずです。
いえ、あれはあえて店頭の一番目立つ場所に並べておく事でお客の金銭感覚を狂わせるための物だった事すら見通していたはずです。
ですからそもそも当初から非売品で「大金貨70枚」すら定価でぼったくり価格だったという事も知っていたはずです……。
でもわたくしは騙されて踊らされていたのです……。
<やったわ!>
「やったわ!アベル!特別に大金貨70枚にしてくれるんだって!」
そもそもわたくしは大金貨1枚がどれ程価値のある物なのかすら知らなかったのです……。
「それは良かったね。それじゃあ買わせてもらおうかな」
彼は何の迷いも無く買ってくれたわ……。
「毎度ありがとうございます!」
(これだから馬鹿な貴族相手の商売は辞められない……!)
そして後で知ったの。
彼の故郷の家と土地が売りに出されていた事を……。
何にも知らなかった昔のわたくしの馬鹿馬鹿馬鹿ーーーー!
ごめんなさいアベル……。
世界神は心の中で泣いた。
<早く被せなさい!>
そしてあの頃の世界神は早速――。
「早く被せなさい!」
――アベルに被せてもらおうとした。
あの時のわたくしはアベルに被せてほしかったのですよね……。
ですがわたくしは命令口調で……。
「うん。今被せてあげるね」
彼はティアラをわたくしに優しく被せてくれたわね……。
「どう?似合ってるかしら?」
……。
「とっても似合っているよ」
彼はとても優しい笑顔で褒めてくれました。
「当然よ!世界一美人の私になら何でも似合うんだから!」
あの頃のわたくしは本当に馬鹿でした……。
<でどうかい?>
「僕もそう思うよ。――そうだ、名前は『ティアラ』でどうかい?」
あぁ……♡
「どうして『ティアラ』にしたいの?その理由次第よ!」
……。
「君がティアラよりも可愛くて美しくてキラキラしているから。君がティアラのティアラって意味で」
この時にわたくしは完全に心を射抜かれてしまったのでしたね♡
「良いじゃない!気に入ったわよ!褒めて遣わすわ!これから私の事はティアラ様と呼びなさい!」
あの頃のわたくしの馬鹿馬鹿馬鹿ー!
かくしてかつて星神だった世界神ティアラはアベルとデートし敬語も解け大金貨70枚の価値があるティアラと「ティアラ」という名前をプレゼントされた。
<良かったわね>
そしてモニターで見守っていた女神アンと勇者ユウタが初対面を終えた。
「一先ずあの青年があの子の勇者になってくれて名前まで交換出来て良かったわね」
あの子が、いえ、アンが上手くいって良かったわ。
失言してしまった時はどうなるかと思ったけれど、あの青年が、いえ、ユウタさんが寛容な勇者で良かったわ。
そもそもアンがユウタさんの前にテレポートで現れた時に怖がられて逃げられてしまったり、敵だと思われて襲われてしまったり、正体を明かした際に信じてもらえなかった可能性だって有ったのです。
ですがまぁそれは普通の魂の場合です。
ユウタさんは勇者の資質を持っていたのですから心配は不要でしたね。
「はい、良かったです」
天使達も安堵している様でした。
<重なって仕方が無いのです……>
しかしわたくしにはかの青年がアベルと重なって仕方が無いのです……。
アベル……アベルに会わせて……アベルは今どこにいるの……アベル……アベル……アベル……。
かくしてティアラはずっと心の奥底に封印してきた初恋の恋心で心の中が掻き乱され始めた。
後書き
後に色々と分かってきますがティアラはこの時点で既にもう色々と限界突破しています(意味深・笑)
作中では多くは書きませんでしたがそもそもティアラは勇者不要主義者でした。
しかし天使からの再三の勇者任命要求に「うっさいわね!分かったわよ!」と折れたという格好です。
そして人見知りと好き嫌いが激しいティアラのために世界中で勇者候補を探し回り選抜者に天使達による人間性チェックなども行われ合格したのがアベルだったという訳です。
これだけ全肯定ならあの我儘なティアラとでも何とか上手くやってくれるだろう、という判断でした。
*目的地から近かったのもあります。
ちなみにアベルは都市辺境の村出身で少年期に稽古で駐在騎士を圧倒し、魔獣の迎撃で貢献したのを機に推薦状を貰い、アッシュクロフト都市伯の騎士団に入団しアッシュクロフト騎士爵を叙勲されています。
*騎士爵名を見て分かるとおりアベルは伯爵位と同名の従属爵位を与えられており、アッシュクロフト伯爵とプリシラという名の伯爵令嬢に内側に取り込まれる感じで気に入られていました(意味深)
そしてちなみにこの場合の騎士とはその国では王家や貴族が召し抱える優秀な戦力か要職者の事です。
そしてその時その世界は魔王軍の脅威とヒューマン陣営の内部分裂の危機に直面しており、アベルはティアラに導かれ(無理矢理誘導され)聖教直属の多国籍都市で女神に従う司教や聖女といった聖教陣営と合流し独立陣営として危機に立ち向かっていきました。
そしてちなみに宝石商によるアベルの身なりと所持している剣を見ての「騎士」か「冒険者風情」という目測は正解で、アベルはその時冒険者ギルドのAランクをティアラと聖教のごり押しで与えられていました。(本当はSランクだが悪目立ちしないためAランクだった。)