[R18] 女性を愛する天才の俺様、異世界を救う (JP) – 1章 1節 10話 地球の女神 絶好調(アン視点)
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R18
第1節 地球の女神(第1章 勇者の村)
第 10 / 12 話
約 12,500 字 – 17 場面 (各平均 約 730 字)
1/17.「人がどんどんやってきてるわよ!」
「ユウタ!人がどんどんやってきてるわよ!どうするの!」
アンは建国したばかりの王国にどんどん人がやってきていて不安になりユウタに声を掛けた。
「大丈夫です。ご安心ください」
ユウタは顔の広さを活かして商人を呼び込みまた求職者や生活困窮者、奴隷、孤児を積極的に受け入れていたしアンの天使達も陰ながらユウタの王国を宣伝したり商人や入国したい者達の背中を後押しする事で人口が増えていっていっているし食料自給率や治安の問題も起きていなかったし順調という事だからアンには安心してほしかった。
「何が大丈夫なのよ!安心出来ないわよ!」
アンは何が大丈夫なのか分からなかったしちっとも安心出来なかった。
「それでは説明いたしますが増えている国民は成人は雇用斡旋ギルドにより問題無く仕事が割り振られていますし、孤児は孤児院ギルドが預かって育てています。――」
「――また人手が増えれば増える程建設が早く進みますから建物が増え道路は整備されていっていますし、交易で販売する商品もより多く作れて外貨も稼げています。――」
「――そして何より漁業も順調ですから増えていっている国民に十分な食料も提供出来ているという訳でございます」
ユウタはアンに問題無く増え続けている国民を受け入れられている事とそれにより国家建設と交易が順調な事とそして何よりも大事な食料についても問題が無い事を話した。
「そ!よく分かんないけど順調なら良い事ね!その調子で頑張るのよ!」
アンは難しい事は心底考えたくなかったから順調なら良いやと思い難しい事は右から左に忘れ去った。
「畏まりました。アン様の為今後も全身全霊を以って頑張らせていただきます」
ユウタはアンの為今後も全力で取り組んでいく事を誓った。
そしてアンには言わなかったがユウタは近い内に戦争や対立が起こる事を懸念していてその為1人でも人手が欲しかったし今後の為にも急ピッチで国家建設をしていたのだった。
*ちなみに国民は皆がギルド(職業団体=組合)の下で働いていて解雇は無いし格差や競争も無かった。*
2/17.「乗馬教えて!」
アンはニンに対抗意識を燃やしていてニンの様に自分も1人で馬に乗れる様になりたかったし子供達にちやほやされたくて護衛付きで行った学校ギルドでも乗馬の練習をしていてもう乗れる子達がいたしニンから介護付きで乗馬をするのは遊牧民族では「子供。しかも習い始めた子供だけ。一人前の大人とは認められない」と聞き自分も一人前の大人として認めてもらいたかったから――。
「ねぇユウタ!私に乗馬教えて!」
ユウタに乗馬を教えてほしいと頼んだ。
「畏まりました。それではいつになさりますか?」
ユウタはアンに乗馬の練習をいつにしたいか訊いた。
「今よ!今!」
アンの辞書に「我慢」という文字は無かった。
「畏まりました。それでは今から乗馬の練習をなさりましょう。厩舎はあちらでございます」
ユウタは建設から物作り、戦士隊に至るまで全ての設計から確認作業まで担っていてさらには金勘定までしなければいかなかったりと激務を極めていたのだが女神であるアンの為なら強引に予定を空ける事も厭わなかったしアンを厩舎へ案内しようとした。
そしてユウタ達は厩舎の側の広場にやってきてアンは――。
3/17.「ちゃっちゃと伝授してちょうだい!」
「じゃあちゃっちゃと私に伝授してちょうだい!」
――ユウタに早く教える様に言った。
というのもアンはちゃちゃっと乗馬をマスターしたかったのだ。
「先ずは馬を撫でて心を通わせてください」
乗馬では基本中の基本として馬を大切にする心が必要だった。
「分かったわ!」
アンはユウタに言われた通り馬を撫でてみた。
「それではこの鐙に足をお掛けになり馬に跨ってください」
ユウタはアンが馬を撫でるのをしばらく見守ってから乗り方を教えた。
「分かったわ!でも万が一の時は助けてよね!」
アンは落馬が怖かった。
「もちろんでございますとも。わたくしはアン様の側におりますからご安心ください」
ユウタはアンが落馬しそうものならいつでも腕で抱えられる様にスタンバイしているしアンに安心してほしかった。
「分かったわ!――んー、思ってたより高いわね。――よい……――しょっと!――出来たわ!」
アンは最初は高さに驚いたが鐙に足を掛け力を入れて跨った。
4/17.「手綱を手にお取りになり」
「おめでとうございます。それでは手綱を手にお取りになり姿勢を正してください」
ユウタはアンを褒めると手綱を手に取る様に良い姿勢も正してほしかった。
「こうかしら?」
アンはユウタにちゃんと出来ているか訊いた。
「はい。左様でございます。それでは次に操作のやり方を指導してまいりますが、『発進』をする際は利き足のふくらはぎを馬のお腹に押し当てるのでございますが、なさってみてください」
ユウタは乗馬の操作の指導に入った。
「分かったわ!よっと!」
アンがユウタが言った通りにふくらはぎを馬のお腹に押し当てると馬が歩き出した。
「その調子でございます。それでは右へ行きたい場合は手綱を右に、左に行きたい場合は左に引いてください」
ユウタはアンに左右への生き方を教えた。
「分かったわ!」
アンがユウタが言った通りに手綱を引いてみると右や左へ行く事が出来た。
「その調子でございます。それでは手綱を使わずに重心を曲げるだけで左右へ歩かせてみましょう」
ユウタはアンに手綱が使えない時の操作方法を教えた。
「こうかしら!」
アンは重心を曲げてみると馬もその通りに左右へ曲がってくれた。
「左様でございます。それでは『停止』でございます。手綱を引いて馬の歩みをお止めになってください」
アンは手綱をぐっと引くと馬が停止した。
5/17.「お降(お)りになってください」
「それでは馬をお止めになったところで自力でお降りになってください。こつは乗った際に使った鐙の場所を思い出す様にして足を掛ける事でございます」
ユウタはアンに自力で降りてみてほしかった。
「わ、分かったわ!――あ、あった!――よっと!」
アンは鐙に足を掛け地面に降り立つ事が出来た。
「おめでとうございます。初めての自力での乗馬はいかがでございましたか?」
ユウタはアンに感想を訊いた。
「楽しかったわ!でももっと乗馬するわよ!」
アンはもちろんこれだけで満足出来なかったしユウタは暇なアンにまだまだ乗馬の指導に付き合わされ早く走る方法も教えたが――。
「私も自分の馬が欲しいわ!」
――アンは自分の馬が欲しくなりユウタにお願いし――。
「畏まりました。至急手配しますのでお選びください」
――手配すると約束した。
ユウタとしては王国で使う馬を集めながらアンにその中から自分が乗る馬を選んでほしかった。
「分かったわ!なるべく早くね!」
アンは本当は「でも今日中よ!」と言いたかったのだが「なるべく早くね!」と言ったのはユウタに馬を集める時間の猶予を与えた方が自分が満足出来る馬に出会いやすいのではないかと思ったからだった。
というのもアンはユウタに言って早く手に入れ過ぎたばっかりにデザイン違いの物を持っていたニンに「それ私も欲しい!」と言ったら「貴方はもう持ってるでしょ。こういうのは1つで十分なのよ」と咎められた事を学習していたのだった。
6/17.「結婚はいつにする?」
そして国が順調に発展していっていたある時の事アンは――。
「ねぇ、シェイク。私達の結婚はいつにする?」
――ニンがユウタと2人きりでユウタにいつ結婚するか訊いているのを聞いてしまった。
(ちょ、ちょっと……!結婚って一体どういう事なのよ……!)
アンは地上での暮らしに慣れ始めていた頃でユウタとニンの関係は自分が拒んだ事で終わったと思っていたのだがニンがユウタと結婚の話をしていて大変焦った。
「いつが良いと思う?」
ユウタはニンがいつ結婚したいと思っているか訊いた。
(ユウタまで何乗り気になってるのよ……!)
アンはユウタまで乗り気になっている様に感じられて人が変わってしまったのではないかとすら思った。
「そうね~シェイクはもう王様だからいつでも良いと思うけど、もうちょっと国が落ち着いてきてからにする?大勢の人に見てもらいたいし」
ニンはユウタと結婚するなら大勢の人に祝ってほしかった。
「それが良いかもしれないね」
ユウタも大勢の人に見てもらう方が王国の基盤作りに役立ちそうだし良いと思った。
(ちっとも良くないわよ……!)
アンからすればユウタとニンが結婚する事自体が認められなかった。
「そうね。アンが女神で私が王妃だもの。アンも自分が女神として崇め奉られるなら私も自分の事は好きにして良いって言ってたし」
ニンはアンが言っていた様に自分も好きにしようと思っていた。
(ニンが王妃だって……!?私好きにして良いなんてそんな事言って……言った……!しかもさっき……!)
アンは確かに先程ニンに「私は女神として皆から奉られたら満足なの!だからその後の事はニンはニンで好きにしてちょうだい!」と言い放っていたのだった。
「アン様が認めてくださったのなら良かったね」
ユウタはアンが認めてくれたのならお墨付きが有るという事だから何ら遠慮する事無く結婚出来るという事でめでたい事だと思った。
(私は一度たりとも認めてないわよ……!)
アンはもちろんニンにそんなつもりで言った訳では無かった。
「じゃあシェイク。私の唇に誓いのキスして」
ニンはユウタにキスしてほしかった。
そしてアンはユウタの「良いよ」という返事が聞きたくなくて――。
7/17.「ちょっと待ったー!」
「ちょっと待ったー!」
――会話を終わらせる様に慌てて部屋に入った。
「じゃ、私はもう行くね……!」
ニンはアンが入ってくると慌てて部屋から出て行こうとして――。
「待ちなさいよ……!」
――アンはニンを呼び止めようとしたがニンはあっという間に部屋から出て行ってしまった。
「行っちゃった……」
アンはニンに問い詰めたかったのだがニンがどこかへ行ってしまったから途方に暮れてしまった。
「左様でございますね」
ユウタは相槌を打った。
そしてアンは――。
「ねぇ、ユウタ。あの泥棒猫と何をしてたの?」
アンは仕方無くユウタにニンと何をしてたのか訊いた。
「ニンからは今後について訊かれましてその事を話していたのでございます」
ユウタはアンにニンと何を話していたのか具体的にではないが話した。
「結婚の事……?」
アンはユウタに具体的な事を訊いた。
「左様でございます」
ユウタは認めた。
「……私、そんなの絶対認めないから……」
アンは絶対にユウタにニンと結婚してほしくなかった。
「左様でございますか」
ユウタはアンはさすがにニンの同行は認めてくれたがそこまでは認めてくれないだろうとは思っていた。
「ユウタは私の勇者なの。だから絶対他の人と結婚しちゃ駄目なの」
アンはユウタがニン以外と結婚するのも認めたくはなかった。
「左様でございますか」
ユウタはアンの勇者になった以上は結婚する事は認めてもらえないのだろうなと思った。
「……ユウタがそんなに結婚したいんなら私が結婚してあげるわよ……」
アンはユウタがそんなに結婚したいなら自分と結婚してほしかった
「そ、それは……わたくしが女神様と結婚するというのは大変恐縮でございますので……」
ユウタは女神のアンと結婚するのはアン畏れ多くて申し訳無さ過ぎた。
8/17.「私と『』するのが嫌だって事……?」
「じゃあ何よ……私と結婚するのが嫌だって事……?」
アンはユウタが自分と結婚したくないのではないかと思ってしまった。
ちなみにアンは建国後にカップルが結婚する様子を目撃していた事も有り「結婚」が何かは知っていた。
「いえ、そういう訳ではございませんがただただ畏れ多いからでございまして」
ユウタはアンの事が嫌いな訳ではないのだがただただ女神のアンと結婚するのは畏れ多くて申し訳無かった。
「自分でも分かってるわよ……私は我がままで駄目な女神よ……ユウタだって本当は私の事嫌いなんでしょ……?」
アンはユウタが自分と結婚したいと言ってくれなかったから自分でも心当たりが有るし自分の事が嫌いなのだろうと思った。
「アン様は優秀な女神様でございますしわたくしはアン様の事が嫌いではございませんよ」
ユウタはアンは極力頭を使いたくないだけなのだと見抜いていたし子供や自然、動物が好きな事も知っていたから嫌いではなかった。
「じゃあ何でユウタはニンとはあんなに親しそうに喋ってるのに私にだけはすっごく敬語使ってるのよ……!」
アンはユウタが自分にだけは最大限の敬語を使ってくる事を引き合いに出した。
「それはアン様が女神様でございますから最大限の敬意を払っているのでございますし良い意味での「特別扱い」なのでございます」
ユウタはアンに対して最大限の敬語を使っているのは敬意や良い意味からでの「特別扱い」であり悪い意味で受け取ってほしくなかった。
「もうそういうのはいいから……!いや、よくないけど……!けど様呼びなんてもうしなくて良いし私にだってニンの時みたいに喋ってよ……!私の事だって好きになってよ……!」
アンは「特別扱い」は今まで通り続けてほしかったもののユウタにため口で話してほしかったし好きになってほしかったし心が耐え切れなくなって号泣し始めてしまった。
「……」
ユウタもユウタでアンが悲しむ姿は見たくなかった。
9/17.「私と『』するなら『』とも『』してあげて」
「ねぇ、シェイク。私と結婚するならアンとも結婚してあげて」
聞き耳を立てていたニンはユウタに提案した。
「ニン……何しに来たのよ……今はあんたの出る幕じゃないわよ……向こう行ってて……」
アンは今はニンに邪魔してほしくなかったしニンに助けてもらうのは自分が惨めでしかなかった。
*「私目が離せないわ……!」*
ティアラは恋愛リアリティ番組がめっぽう好きなだけ有るし特別目を掛けている勇者と女神と暗殺者候補者の一大事とあってライバルの女が登場する修羅場に目が釘付けになっていた。
*「まぁ気持ちは分かりますわ」*
プリシラは多少はティアラが興奮する気持ちも分かっているのだった。
*(おいおい。こういうのは見せもんじゃねぇよなぁ……てかこの世界大丈夫かよ……!)*
2号は人が苦労しているところなど面白がって見るべきではないだろうしそもそもそれを面白がって観ているのがこの世界を司っている神とその天使長なのだから不安になってきたのだが2号が懸念するのはもっともだし実際世界崩壊の危機はすぐ側に有るのだった。
「そもそも僕が女神様の勇者になる事自体が不適格だと思うのだけれど、そのうえ結婚する相手が僕で良いのかい?」
ユウタは試しにアンが望んでいる通りにため口で訊いてみた。
「あったり前よ!」
アンは一瞬で泣き止み元気になった。
「それじゃあアンもニンも一緒に僕と結婚しよう」
ユウタはアンもニンも満足出来るだろう事を提案した。
「もちろんよ!」
アンは嬉し涙を流した。
「やったわね!アン!」
ニンも感動で嬉し涙を流し二人は手を合わせて飛び跳ねる様にしてきゃっきゃし始めた。
(でも僕は女神がどうして僕の事を好きになってくれたのか全く分からないけれど……僕は何か2人から好かれる様な事をしたっけ……)
その一方でユウタはアンとニンがどうしてそれ程喜んでいるのか分からなかったしアンもニンも自分の事を好きになってくれた訳が分からなかったのだった。
そしてしばらくするときゃっきゃと喜び合っていたアンもニンも落ち着いてきて――。
「じゃ、結婚はいつにしようかしら?今からでも良いけど!」
――アンは結婚の時期を2人に訊いた。
「準備も有るしするなら大勢の人に祝ってもらいたいしばたばたもしてるから落ち着いてからにする?」
ニンは今国のそこら中で建設作業が行われているし今はそれどころではないだろうと思っていた。
10/17.「結婚式はどんな感じにしようかしら?」
「ええ!それが良いわ!でも結婚式はどんな感じにしようかしら?」
アンは皆から崇め奉られたいから「大勢の人に祝ってもらう」というところに惹かれたのだった。
そしてアンは続けて結婚式をどんな風にするかも訊いた。
「結婚式には私は故郷の人達を呼びたいわ」
ニンは結婚式には故郷の家族や友達、お世話になった人達を呼びたかった。
「良いわね!じゃあ私もママとママの側にいっつもいる黙ってる変な人と私の天使達を呼ぶわ!」
アンは結婚式に自分が近しい人を呼ぶつもりだった。
*「あら、言われてるわよ?」*
ティアラはプリシラを揶揄った。
*「プリシラさん、気にしないでほしいです」*
1号は思わぬ形で被弾したプリシラを気遣った。
*「ああ、そうだぜ。うちの女神は寡黙な奴を変な奴だと思っちまう節が有っかんな」*
2号もプリシラを気遣った。
*「ええ、承知しておりますわ……」*
プリシラはあくまでティアラの天使長でありティアラのサポート役だからアンがティアラと会話している時もティアラの側に控えているだけだったし「いつも黙っている変な人」と思われても仕方が無いのだろうとは自覚していた。
*「でも私達皆あの子の結婚式に呼んでくれるみたいよ?楽しみね♪」*
ティアラはついにユウタを殺害する日と場所が決まりわくわくしていた。
というのもティアラは当初からユウタを殺すつもりだったしついでに結婚式も台無しにしたかったのだ。
というか自分が結婚式で新婦役になりたかったしユウタが自分以外と結婚するなど絶対に認められなかったのだ。
*(気にしている場合ではありませんわ……『楽しみ』だなんて……もう間違いないですわ……)*
プリシラはティアラの嫉妬深さを知っているし狙っている男が自分以外と結婚する事など絶対認められず必ず行動に出るだろうからそれに備えるべきだと思いつつ――。
*「そうですわね」*
――疑われない様にいつもの調子でありきたりに返事をしたのだった。
かくしてアン達は共に結婚する事になりユウタを置いてけぼりに2人だけでどんどん話を進めていったのだがそもそもニンがユウタに結婚の事を訊いたのは煮え切らないアンの背中を押す為にアンが偶然聞いてしまう様にニンが仕掛けた事で見守っていたティアラ達は分かっていたのだがユウタもアンもそれは知る由が無かったしニンはアンとユウタが奥手で後回し地獄に陥る事もこの時は知る由が無かったのだった。
11/17.「家(うち)に顔出してくるわね!」
「じゃ!私ちょっと家に顔出してくるわね!」
アンは結婚式に誰を呼ぶかでティアラ達の事を考えやっとティアラ達の事を思い出し家に顔を出そうと思った。
「行ってらっしゃい」
ユウタはアンを送り出そうとした。
それともしアンが帰ってこなかったとしても当初言われた通り王国の運営は続けるつもりだった。
「あら、アンが帰ってくるわよ。皆で暖かく出迎えてあげましょう。でも見守っていた事もそれで知り得た事もポップコーンを食べてた事もまだ秘密よ」
ティアラは頑張ったアンの事を褒めてあげたかったがその一方でアンのおかげで理想の男に出会えて役に立ったという意味でも褒めてあげたかった。
それと建国はまだ終わっていないから「彼女は世界神様達が見守っていると知っていたから頑張ったのでしょう?」などと後にけちが付くのを避けたかったしきっとアンが怒って投げやりになってしまうかもしれないから自分達だけ美味しい物を食べていた事を教える訳にもいかなかった。
「はい!」
アンの天使達もアンを迎える準備に取り掛かりティアラはモニターやテーブル、食べ物などを空間収納に一瞬でしまった。
12/17.「皆(みんな)ただまー!」
そしてアンが帰ってきた。
「皆ただまー!言われた通り国を造ってきたわよー!」
そしてアンは家にテレポートして報告した。
「おかえりなさい♪それはおめでとう♪」
「おめでとう、ですわ」
「おめでとうございます」
「めでてぇな!」
ティアラ達は帰ってきたアンを拍手して祝福した。
「皆ありがとう!私頑張ったわよ!」
アンは何も疑わずただただ祝われて有頂天になった。
ちなみにアンが頑張っていた事は事実なのだが建国後は主に護衛を付けて学校ギルドや孤児院ギルドに出向いて子供の相手をしたり手芸ギルドで手芸を手伝ったり(遊んだり)ユウタの代理として各所に顔を出し――。
*「家はそんな感じでちゃっちゃと造っちゃって!」*
*「お肉やお魚は……とりあえずたくさん必要よ!たっくさん!」*
*「子供は全員学校でお勉強よ!もちろん大人も文字の勉強は必修よ!」*
*「鍛冶師もじゃんじゃん剣を造るのよ!」*
――ざっくりとした指示だったが国民達に方向を示せていたしアンの気分次第でいつ顔を出すか分からなかったから抜き打ち検査の様になっていて皆気を抜かずに働いてくれていたからユウタの役には立っていた。
また顔と名前を覚えてもらう事にも繋がっていた。
「どう頑張ったの?教えてくれるかしら」
ティアラはアンから話を聞こうとした。
「良いわよ!でも長くなるわよ~?」
アンは嬉しそうにしていた。
「良いわよ。それじゃあ皆で座って話を聞こうかしら」
ティアラは皆と座ってアンの話を聴きたかった。
「そうこなくっちゃ!」
アンとしては望むところだった。
かくしてティアラ達はアンの名前やしてきた事を知っている不自然さを解消する為とはいえアンから自分の活躍を盛りに盛った武勇伝をへとへとになるまで長時間聴かされる事になったのだった。
13/17.<結果が出たわよ>
そしてユウタの王国がもっと拡大した頃――。
「アン、結果が出たわよ♪」
――ティアラはアンに朗報を直接伝える為アンがいる亜空間にやってきた。
「あ、ママ!え?何の結果……?」
アンはティアラが何の結果の事を言っているのか分からなかった。
「貴方もう忘れたの?前に言ったじゃない。貴方の女神としての活躍が審査されるって」
ティアラは確かに長い武勇伝を聴いた後にアンにそう伝えていた。
「そ、そうだったわね……!」
アンは完全に忘れていた事を認めず慌てて取り繕った。
「貴方ったら……まぁ、良いわ。読んでみてちょうだい」
ティアラは審査結果の紙をアンに手渡そうとした。
ちなみに神々だから魔力モニターに映したりなど何でも出来るのだが紙の手紙や本がお洒落に感じる神も多く公的な通知では敢えて紙を使っている。
それに加えて大半の神が古代や中世、ジェット機の時代を経験しているから違和感が無くその暖かみを知っているからでもあった。
「良いけど……――」
アンはティアラから審査結果の紙を手渡されたのだが昔から不勉強で先生からよく叱られていたし試験の結果や通信簿などに良い記憶が無く読むのは渋々だったのだが――。
「成年審査結果。太陽系第3惑星の惑星神アン様、貴方は科学の世界で非戦闘力Sランク以上の者を勇者にし、その者と共に旅をし、血を一滴も流さず王国を建国し、またその際はテレポート以外は地上で一切魔法も行使せず、そして良い意味で時代にそぐわず奴隷制を廃止し、弱者を救済し、人権を保護し尊重する国家を樹立した事を讃え、最優秀新人賞を贈ると共に、貴方を成年の女神として認めます。ティアラ世界神政府教育省成年審査局女神成年審査部。――だって!?」
――活躍が評価され最優秀新人賞と共に成年の女神として認められたのだった。
*ちなみにこの成年審査は勇者を任命しなくても自分の名前を決めて建国フェーズに入りさえすれば、まぁ何もしなくても人口が増えてくれば勝手に国は出来るものなのだが建国出来なくても成果を上げられなくても犯罪行為を犯しさえしていなければ一人前の神として認めてもらえる簡単なもので成年審査は文字通り成年かどうかの審査であり一人前の神として意思決定出来ているかどうかが大事だった。*
*しかしほとんど誰でも合格出来る様な審査なのだが最優秀とぎりぎりでは天と地の差が有りそもそも「地上で活躍するのは人であるべきで神はあくまで裏方」という普遍的な空気が有り犯罪行為が禁止されているこの科学の世界ではその特色が色濃く神本人がいくら優秀でも「優秀賞」が限界で最優秀賞を叩き出すには非戦闘力で人格や知能、話術などの総合力がSランク以上の勇者に出会えるかという運が非常に重要でいくら高ランクの者を見付けられたとしても勇者になってくれるかどうかは本人次第だから「最優秀賞」を取る事は非常に難しい事だった。*
*ちなみに大半の惑星神が同じ文明レベルの時に成年審査を受けているのだが勇者を登用しようとしても相手に信じてもらえなかったり「野心が無い」、「得が無い」、「余裕が無い」、「他を当たってくれ」などと言われて勇者を見付けられなかったり、格落ちで野心が強く危険な存在を手伝ってしまい独裁国家を誕生させてしまったり、そもそも操れない存在が神の意志関係無く国を造ったりそこへ天使達を総動員して何とかして要職に操り人形を数人確保するぐらいの事しか出来ていなくて「最優秀賞」の受賞は世界神の後継者に挙げられるぐらいの快挙だった。*
14/17.「これで貴方も『』の仲間入りね♪」
「そうよ♪これで貴方も一人前の女神の仲間入りね♪」
ティアラはアンが一人前の女神になって嬉しかった。
というのもこれで保護下から外れたアンから好きな様に略奪出来るからだった。
何故なら一人前の女神が略奪の被害に遭った場合それは「自己責任」だからだった。
それこそ「最優秀新人賞」受賞者は嫉妬を買うし被害に遭った場合はそれはもう「本人の落ち度」に他ならなかった。
「やったわ!ママありがとう!やったやった!」
アンはとても嬉しくてティアラに感謝し飛び跳ねた。
「貴方が頑張ったからよ♪」
まぁユウタを見付けたのは勇者探しの水晶を使ったティアラだしティアラが貢献したところは多分に有るのだが「運も実力の内」と言う様に引いて考えればティアラに特別目を掛けてもらえていたのも優秀な天使である1号や2号達が仕えているのも、というか任せっきりにしていたからこそ優秀に育ったのだがアン自身のおかげと言っても過言ではなかった。
「そうよね!私が頑張ったからよ!えっへん!」
アンはずいぶんと誇らしげに胸を張ったのだが突然目の前に最優秀新人女神賞のトロフィが現れて――。
「わ!こ、これは……!?」
――めちゃくちゃ驚いた。
「それは『最優秀新人女神賞』のトロフィよ。現れるタイミングを見計らっていたのね。それは自分の執務室とか応接室とか人を招く所に飾っておくと良いわ」
ティアラはトロフィが現れると知っていたからいつもの事で驚かなかったしアンにそれが何かと飾る所を教えてあげた。
「分かったわ!」
アンはトロフィを手に取りトロフィを見せびらかす為常に持ち歩こうと思ったのだった。
p>(この子、まさか持ち歩いたりしないわよね……)ティアラはアベルに買ってもらったティアラを早速頭に被って街を歩き回り誘拐されそうになったり貰った王族のアクセサリーを身に纏って街を歩き回りこれまた誘拐されそうになったりという数々の見栄っ張りがゆえの黒歴史が脳裏にちらついた。
15/17.「来てくれるかしら?」
「ところでアン、今度神々を招いたアンのお祝いのパーティーを企画しているの。アンは来てくれるかしら?」
ティアラはアンの成年祝いのパーティーを企画していてそのパーティーの主人公のアンには絶対に出席してほしかった。
「もちろんよ!絶対行くわ!」
アンはちやほやされたいから絶対に行くつもりだった。
「あら、それなら良かったわ。そしたらそのトロフィももちろん持ってきてくれるわよね?」
ティアラはアンを宣伝する為にそのトロフィを持ってきてもらうのが必須条件だった。
「もちろんよ!肌身離さないわ!」
アンは後にトロフィをうっかり落っことして冷や汗を掻く事になるのだった。
「あらそう……」
ティアラが思っていた通りだった。
「ママ!私これからもパーティーでも頑張るわ!」
(パーティーで わ・た・し がいかに素晴らしい め・が・み かを世界中の神々に知らしめてやるわ!)
アンはちやほやされたいし自慢したいしその為にもより一層頑張るつもりだった。
「ママも頑張るわよ!」
(ユウタさんを暗殺するまで他の神々に手出しさせない為にもアンが紐付きだという事を世界中に示さなくちゃ!)
アンが最優秀新人賞を取った事はすぐに公表されて注目の的になり調べられてユウタの存在が知られるのも時間の問題だったからユウタを結婚式で暗殺するまでの時間稼ぎとして他の神々に近寄らせない為アンが世界神の紐付きだという事を世に知ら占めておく必要が有った。
というのもアンは言わば「宝くじの一等賞が当たった世間知らずの新社会人」であり悪い大人からすれば良い標的だったから大物の後ろ盾が必要だった。
またもちろんティアラはアンの事は好きだしユウタは頂くがパーティーを開いて世の神々にお披露目する程だからアンが望む様な勇者を宛がってあげるつもりだった。
かくしてアンはトロフィを手に入れパーティーも楽しみにしティアラは目的の遂行に向けて着々と準備を進めているのだった。
16/17.「落ち着いたら結婚だからね!」
そしてパーティーの当日になりアンはパーティーへ行く前にユウタと夕暮れデートをする事にし――。
ちなみにこれはアンからの「何か恋人らしい事考えてちょうだい!」という要望に「それではデートをするかい?」とユウタが発案したものだった。
「大好きよユウタ!落ち着いたら結婚だからね!」
――アンは今更後戻りするなど絶対許すつもりはなかった。
「僕もアンの事が大好きだよ。うん、そうだね。落ち着いたら結婚しようね」
ユウタもアンの事が好きだし結婚したいと思っていた。
「愛してるわ!ユウタ!」
アンはユウタをニンと共有しなければいけないのは不本意だったがニンとも仲良くなっていたからそれでも良いかなとは思えてきていた。
かくしてアンはユウタとのデートを終えた。
17/17.「皆(みんな)来てくれてありがとう♪」
そしてアンはティアラ主催のパーティーに今宵の主人公として登壇し――。
「皆、今夜はこの女神アンの成年を祝うパーティーに来てくれてありがとう♪」
――ティアラが客人達に挨拶した。
またパーティーにはティアラが呼び掛けをしただけの事は有り科学の世界を問わず魔法が有る世界やスキルが有る世界、超能力が有る世界などから大物達がやってきていた。
(え……!?これ私の成年パーティーだったの……!?)
アンは今やっとパーティーの趣旨が分かったのだった。
そしてアンは活躍を知った神々から拍手喝采され――。
(私は恋も仕事も絶好調ね!)
――有頂天になった。
かくしてアンは自分の成年パーティーを満喫し心底絶好調だと実感した。
後書き
主人公による都市計画としては主要道路は片側二車線、生活道路は片側一車線の幅で区画は基本的に正方形で使用目的ごとに割り振っていきました。
職業は大工や職人、漁師といった極々一般的な枠組みで労働者はギルド(組合)に加入しギルド単位で仕事し給料は最初は衣食住といった現物だったのですが金や銀といった貴金属の流通量が増えると同時にそういった貴金属を通貨として支給する様に次第に置き換わっていきました。
ちなみにこれはスピンオフ行きだと思いますが故郷とも交易すると同時にきちんと連絡も取り合っていて長老との約束も果たしています。
その一方でアンだって……ちゃんと頑張っていました……!頑張っていたんです……!(笑笑笑)