[R18] 女性を愛する天才の俺様、異世界を救う (JP) – 1章 1節 1話*地球の女神

前書き

青年男性向けの「女性を愛する天才の俺様」シリーズ

第1作目

本作最終話、本シリーズ最終話までぱしりますからよろしくお願いします!

R18

第1節 地球の女神(第1章 勇者の村)

第 1 / 12 話

約 18,500 字 – 25 場面 (各平均 約 740 字)

1/25. 俺の名前は「」

俺の名前は 大澤 裕太おおさわ ゆうた

俺が天才なのは自覚している。

俺は高校まで首席で卒業しその全てで生徒会長を歴任した。

高校在学中には数学や物理学、化学、地学、生物学オリンピックを経験しその自営業から事業を始め株式会社を創業し代表取締役社長になった。

大学は東京大学・文科2類・経済学部・経営学科に進学し経営学を学ぶ傍ら会社を経営し無事に卒業する頃には会社の事業の数もその規模も拡大に拡大を重ね世界的な財閥になっていた。

ちなみにこのかんおれは美人を大勢手に入れていて高校では初日に英語の女教師、その翌日に体育の女教師、そしてその翌日に音楽の女教師、また生徒会を乗っ取った際に女前生徒会長、理数系オリンピックの際にファンの女子生徒、そのほか女子生徒や女性社員などを大勢愛人にしている。

大学でも同大学生や同学部生、同学科生、そのOB、国内外の女性社員などを大勢愛人にしている。

非常に順調だ。

だがしかし俺は社会に出て早々燃え尽き症候群に直面していた。

そしてそんな俺は今ちょうど主に都内で自宅として使っている洋館の執務室で執務椅子に座りながら「刺激的で俺がわくわく出来て俺にしか出来ないような困難ななにかや俺が心の底からやりたいと思えるような事が他に無いものだろうか?」と物思いにふけっていた。

2/25.「貴方にお願いしたい事が有(あ)るの!」

すると突然目の前の床に魔法陣の様なものとその上に神々しい光の柱が現れその光の柱はあっという間に消え去りその場には美しい女性だけが残った。

わたしは地球の女神よ!大澤 裕太さん!貴方にお願いしたい事がるの!」

*(ついに行動に移したわね……)*

現れた女性は何と地球の女神様だった。

いきおいからして何とも元気そうな女神様だ。

それにしてもお願いかぁ……女神様が俺にお願いしたい事とは一体何だろうか?

既に俺の名前を知っている様だが。

しかしこの女神様は「初めまして」を言わないんだなぁ……。

だが俺はその点を突っ込んだりはしない。

何故なら女神様に人々の常識が通用するとは限らないし女神様の機嫌きげんそこねたらきっとまずいからだ。

「あ……!初めまして……!」

お、おう……。

まぁそもそもこの人物が本当に女神様とは限らないが突然現れたのをかんがみれば超常的な存在なのは間違い無いし光に包まれていたのもかんがみれば聖なる存在なのもおそらく間違いい。

以上の事からこの女性を女神様と見て差しつかえないだろう。

まぁこの女性は本当に女神様の気がする。

それは別になにか根拠が有る訳ではないし「なんとなくそんな気がする」というだけなのだがな。

3/25.「こちらこそお初にお目に掛かります」

「はい。こちらこそお初にお目に掛かります、地球の女神様。左様さようでございましてわたくしの名前は大澤 裕太と申します。ところで恐縮きょうしゅくではございますが女神様にお立ちになっていただいているままではいけませんゆえ一先ひとまずはあちらの応接ソファにお掛けいただけませんか?」

とりあえず俺は執務机の上の物を整理すると紳士的に女神様に応接セットのソファに右手で指し示し座る様にとうながし案内した。

女神様を立たせたまま大事な話をする訳にはいかないからな。

「分かったわ!私ソファ大好き!」

そ、そっか……。

女神様はそう言って素直にソファに座ってくれたから俺はこの女神様が話が通じるタイプのかただと分かり一安心ひとあんしんした。

もちろん俺も女神様が座った後に着席した。

しかし「ソファ大好き」についてはよく分からなかった。

まぁマナーで言えば来客は上座かみざのソファに座るものなのだ。

で、お客に応接する人や部下は下座しもざの椅子に座るものなのだ。

今の俺みたいにな。

「ソファは宜しい家具でございますよね」

一応女神様に合わせた。

こういう時は「違うわよ!私が好きなのは○○なとこ!」という様に女神様が具体的にソファの何が大好きなのかが分かっていない状況で好みが違ったという様な大事故が起きてしまわない様に現時点では具体的な事は言わずに相手の反応をうかがうのがきちだ。

4/25.「このソファもなかなか良いじゃない!」

「そうなのよ!座り心地が最高よ!あところがれるし!それにこのソファもなかなか良いじゃない!」

まぁ一般的な理由だったな。

いやぁしかし世の中にはいるんだよな。

デザインが好きとか素材が好きとかブランドが好きとかそういう職業病や愛好家の人がな。

まぁ俺も家具職人というかデザイナーでもあるからそのは有る。

そういうプロやガチ勢相手に浅はかな感想を言うと低評価を貰いかねないしな。

逆にパンピー(一般人)相手にデザインがどうとか素材がどうとか専門的な事を言うと引かれてしまいかねないしな。

慎重をするに越した事は無い。

それに何より相手は女神様だしな。

そして女神様は座り心地に満足している様だった。

てか「ちょうだい!」って言われそう……。

(ぎくっ……!)

「左様でございますね」

俺は微笑ほほえんだ。

第一印象はとても大事だからな。

まぁ俺が女神様と同意見でソファが好きなのも座り心地や寝っ転がれる事を評価しているのも本当だ。

ずっと執務椅子に座っていたら疲れるしそういう時や気分転換がしたい時や食事の時やちょっと仮眠を取りたい時などに重宝ちょうほうしてるしな。

5/25.「何で驚かないの?」

「でも裕太さんは何で私が女神って分かっても驚かないの?」

ん~、何でだろうな。

俺は一応驚いてはいるんだがな。

不思議と冷静だった。

「女神様、わたくしは驚いてはおりますよ」

こういうのはどっきりと似た様なものなのだろうと思う。

つまりこの女神様は「本人登場どっきりをしたのにどっきりのターゲットがあまり驚いてくれなくて不満」という様な気持ちになっているのだろうと思った。

実際そんな表情だしな。

(ぐぬぬぬぬ……)

そんな訳で一応驚いている事は伝えておいた。

何分なにぶん相手は女神様だからな。

少しでもよいしょしておくのが吉だろう。

「ふ~ん、そう!まぁとりあえずそんな堅苦しい敬語も普通の敬語も使わなくて良いのよ?」

人間の俺は女神様にそう言われたらそれに従うしか無いのだが……。

しかし参ったな。

俺は堅苦しい敬語は使うのも使われるのも苦手だし、まぁメイドや社員など従者に使ってもらう分には全然構わないのだが、まぁいずれにせよ堅苦しい敬語を使わないのは大歓迎なのだが、普通の敬語も使わなくて良いっていうのはなぁ……出会ったばかりだししかも相手は女神様だぞ。

女神様相手にためぐちくのはおそれ多過ぎるのだが……。

「あの、女神様。出会ったばかりですしそのうえ地上の下々しもじもわたしが女神様相手にため口を利くのはとても畏れ多いのですが……」

頼むから普通の敬語だけは使わせてほしいのだが……。

てかそもそも「普通の敬語」って……。

まぁとりあえず話し方は「ですます」系で堅苦しさを感じさせないためにも「お」や「ご」といった接頭辞はなるべく使わない感じで言ってみてはいるのだが……。

6/25.「じゃあ今だけは使わせてあげるわ!」

「じゃあいずれめるつもりで今だけは普通の敬語を使わせてあげるわ!」

何じゃそりゃ!

しかもめちゃくちゃ上から目線だし……。

まぁ相手は女神様だからなぁ……仕方が無いよなぁ……。

まぁ普通の敬語を使うのを認めてくれただけでも良しとするか……。

てか「いずめるつもり」って関係を続ける前提なのか!?

「ちょっと!地球の女神様の私とのコネが出来るのよ?嬉しくないの?」

俺の態度に出てしまっていたのか女神様が間髪かんぱつ入れずに突っ込みを入れてきた。

しかし俺はコネに頼らない生き方をしてきたからなぁ……。

まぁ「よいしょしておくのが吉」理論的にもここは女神様の機嫌きげんそこねてしまわない様な事を言うべきだろうな。

「嬉しいです。ありがとうございます」

一応本心ではある。

でもまぁこの女神様は勘がするどそうだから嘘を言ったらばれそうだしな。

そんな訳で嘘をかないのが吉だろう。

ま、さいわいにも俺は嘘がけない性格だから自然体でいれば良いという戦略だ。

てかこの話し方で良いのかもよく分からん!

「そう!それなら良いわ!あと話し方もそんな感じで良いのよ!」

ふぅ……女神様が機嫌きげんそこねてしまわなくて良かった。

それに俺の話し方が女神様の言う「普通の敬語」とやらにも合致がっちしている様で何よりだ。

「はい。それと話し方も分かりました」

ま、お互いの呼び方をどうするか問題や「女神様が初っ端しょっぱなからため口を利き続けている問題」にはふたをしたままなのだが。

7/25.「『』の方が親しみやすいでしょ?」

「あと呼び方は私は『裕太さん』、裕太さんは『女神様』のままで良いわよ!それと裕太さんだってため口を利いたら良いしため口の方が親しみやすいでしょ?」

常識的に考えれば突っ込みどころが満載なのだがまぁ良い。

俺は心が広い性格だしな。

まぁ俺がどう足掻あがこうと何人なんぴとたりとも神の前では無力だろうしな。

俺には受け入れる選択肢しか無いのだ。

「お互いの呼び方についても分かりましたが私の場合はまだ普通の敬語を続けさせてほしいです」

これは最早もはや絶対死守だ。

「良いわよ!」

よし。

ま、さてと女神様のリクエストにも応えられたところで早速さっそくお出し物の話に入っていくとするか。

「それでは女神様、飲み物とお菓子はなににしますか?『炭酸飲料が飲みたい』や『洋菓子が食べたい』など要望を気軽に何でも言って良いんですからね」

いまおれの屋敷でお客様に出せるのはおそらく紅茶と和菓子くらいのものだろう。

というのもテーブルにお茶と和菓子が置いてあるからだ。

要するに出された物でその日のストックは大体分かるのだ。

まぁ和菓子は日持ちが良いからよく常備している。

それにここは日本だ。

日本の社長や政治家には和のお出し物が受けるからな。

まぁ女神様にも通用するかは分からないのだが。

いずれにせよお出し物にしても食器にしても最高級だし女神様にお出ししても大丈夫だろう。

しかし女神様が俺に会いに来るって普通にやば過ぎるんだよなぁ……。

女神様に粗相をする訳にはいかないし嫌われたらめちゃくちゃまずいしそれに紳士としても女神様の要望は出来る限り何でも聞くつもりだ。

8/25.「私は今『』が食べたい気分よ!」

「私は今コーラとショートケーキが食べたい気分よ!」

お、おっす……。

もちろん女神様の要望は何でも聞くつもりだが俺は心のどこかでテーブルに置いてあるお茶と茶菓子を見て「私にもそれと同じものをちょうだい!」と言ってくれるのを期待していたのだがな……。

この女神様の辞書に「遠慮」という言葉は載っていない様だ。

てかその組み合わせは大丈夫なのか?

俺はふと「バニラ味のコーラ」を思い出してしまった。

「分かりました。それでは今からメイドを呼びますからメイドが部屋にいる間は自分の正体やお願いの内容など秘密にすべき事は絶対に口に出さないでほしいです」

俺はメイドを呼ぼうと思ったのだがその前に注意事項をきちんと伝えておいた。

「秘密を聞かれたからには生かしてはおけないうんたらかんたら」になったら困るしな。

「分かったわ!」

それにしてもこの女神様は元気だなぁ。

そして俺はメイドを呼ぶベルを鳴らした。

ちなみに鳴らしたのは1回だ。

1回は通常の呼び出しでノックして入ってきてから俺の要望を聞いてくれるという感じで――。

――2回は訳ありの時の呼び出しでドア越しで要望を聞いてくれるという感じだ。

そして3回は……言わずもがな、だ。

ちなみに今日の当番のメイドは凛穂りほだ。

凛穂は俺がメイド兼執事の求人を出した際に応募してくれた記念すべき第1号のメイドだ。

ちなみに当家では使用人イコール執事でありメイドなのだ。

この方程式は当家の使用人が女性しかいないからそう成り立っている。

そして厳密に言えば第1号は優美華だからメイド第1号は優美華ゆみかであり求人からの第1号(全体の順番で言えば第2号)が凛穂だ。

もっと言うと俺は凛穂との肉体関係だけは無い。

というのも本人は俺の事を好きな様なのだがいつまで経っても次の段階に進めずその訳は一切教えてくれない。

「明日世界が終わるとしても?」といてみたがそうなる事は無いしそれでも駄目なのだそうだ。

そんな訳で俺は凛穂は休日や空いている時間などに教会のシスターでもやっていて神様に純潔も誓っていて――。

――ん?それはおかしいな。

いまおれの目の前にいる女神様はどう見ても女性なのだが……。

いずれにせよ凛穂の精神的な本業はそっちなのではないかと俺はにらんでいる。

9/25.「ご用件を伺(うかが)わせてください」

「裕太様、凛穂でございます。失礼いたします。――それではご用件をうかがわせてください」

凛穂は「近くで待機していたのではないか?」と思ってしまう程早く来てノックすると部屋に入ってきて要件を訊いてきた。

それにしても凛穂は名前の通りいつも凛々しくて美しいんだよなぁ。

しかしこの女神様に注意しておいたとはいえ凛穂がいる間にうっかりと口を滑らせてしまう可能性はもちろん有るしそれに凛穂にこの女神様のとんでもない秘密だとかを聞かれてしまって例のうんたらかんたらになってしまう訳にもいかないから俺としては注文をちゃっちゃと済ませたい。

ちなみに例のうんたらかんたらになったら負けると分かっていても俺はこの女神と戦うつもりだ。

俺は従業員の為に断固として戦うし見捨てる様な真似は絶対にしない。

「こちらのかたは俺のお客様だから丁重ていちょうにもてなしてくれ。それとコーラとショートケーキを2人分頼む」

てかそもそも見知らぬ人物が俺の執務室まで来るというのは一大事だ。

考えてもみてほしい。

これは屋敷への侵入を許したばかりかあるじの部屋まで侵入され接触を許したという事だからな。

「もし侵入者が暗殺者や不審者だったらどうするのか?」とメイド達が慌ててしまうのをふせぐ為女神様が俺が意図していたかどうかはともかくとして悪い客ではないのだと理解してもらう為に「俺のお客様だから丁重にもてなしてくれ」と釘を刺しておいたのだ。

警察でも警備チームでも呼ばれたらしゃれにならないからな。

それに凛穂に申し訳無い。

これは外出必須の注文でもあるからな。

10/25.「他にもご用件はございますか?」

かしこまりました。頃合いを見て運んでまいります。それでは他にもご用件はございますか?」

頃合いを見て!?

いつもなら「ただちに購入してまいります」などと言う場面だと思うのだが……。

俺は凛穂の言った事にまるで「すでに準備してありますので後はタイミングを見計らって出すだけです」という様な違和感を感じた。

「いや、それだけだ。それに無理に急がなくて良いんだからな。通常の速度で良いんだぞ」

凛穂が急ごうと無理してしまうかもしれないからその事も釘を刺しておいた。

「畏まりました。それでは失礼いたします」

凛穂はそう言ってお辞儀すると退室していった。

ん~、凛穂は見知らぬ来客に全く慌てていなかった。

でもそれは何でだ?

顔見知りだった訳でもないだろうしな。

この女神様は俺の部屋に来る前に既に凛穂にアポを取っていたという事か?

それにしては来客のしらせは一切無かったが。

当家では来客が有る際は必ず事前に予定を話してくれるのだ。

メイドは俺の私的なスケジューリングも担っているからな。

まぁこの女神様が突然やってきて凛穂達が予定を話してくれる余裕すら無かった説は有るのだが。

いずれにせよ凛穂にはこの女神様が「俺の秘密の女性」などと勘違いしないでほしいものだ。

メイド達の間で情報が共有され噂でもされたらたまらないからな。

11/25.「早速本題に入らせてほしいです」

「それでは女神様、飲み物とお菓子の手配が済みましたところで畏れ入りますが早速本題に入らせてほしいです」

女神様が俺にお願いしたい事が有るなんてよっぽどの事だろうしな。

こういう時は単刀直入に重要性や緊急性が高そうな案件や用事からこなしていくのが鉄則だ。

「ええ!良いわよ!」

よし!やったね。

そんな訳でやっと本題に入っていけそうだ。

「それではきますが女神様が私にお願いしたい事とは一体何ですか?」

女神に要件を訊いた。

「私からはあっちの世界のルールで詳しい事は話せないんだけどね、私の友達の、女神の世界がろくでもないっていうか、とにかく大変なの!剣と魔法の世界よ!私にできる事なら私が嫌な事でなければ何でもするから、裕太さんに私の友達の世界を救ってほしいのよ!」

俺は異世界もののアニメや漫画、ライトノベルはたしなんでいるから何となくの事情は分かった。

この女神様は俺に勇者として友達の女神様の世界に赴いて救ってくれとお願いしてきているのだろう、と。

「女神様のお願いの概要は分かりました。私に『勇者として女神様のお友達の異世界を救ってほしい』という事ですよね」

俺は何となく女神様がこの話を俺に持ってきた時点で察している。

そのお友達の異世界とやらは俺でないと救えないくらい大変な状態になってしまっているのだろう、と。

「さすが裕太さん!話が早いわね!その通りよ!でも裕太さんをあっちの世界の勇者にするかを決めるのは私の友達なの。だってそこは友達の世界なんだもの。裕太さんが私とも友達とも契約してくれたら、裕太さんは私達両方の勇者って事になるわね!」

やっぱり女神様のお願いはそんな感じだったか。

ん~、「勇者になって異世界を救う」かぁ……。

興味は有るんだけどなぁ……。

俺には慈善の精神が有るし女神様を助けたいのは山々なのだが自分を犠牲にし過ぎても良いとは思えないし――。

――それに俺はまだ一流の財閥と比べれば全然少ないがグループ全体で従業員3万人を擁する「大澤財閥」を抱えていてこれまでに築き上げた人間関係なども放り出して一人で異世界に、それも片道切符で行ってしまう訳にはいかないのだ。

それにこの段階では引き受けるか決断する為の材料が少な過ぎるから俺が異世界へ行くのを決断する為にも今の内に知られる限りの情報は知っておきたいものだ。

「決断の参考までにいくつか質問しても良いですか?」

1度にまとめて質問しようと思ったのだがこの女神様なら「ちょっと質問がいっぱい有って分かんないわ!1個ずつよ!1個ずつ!」などと言ってきて結局やり直しになるくらいだったら最初から質問を分けておこうと思ったのだ。

12/25.「良いわよ!どーんときてちょうだい!」

「良いわよ!どーんときてちょうだい!」

うむ。

「それでは質問していきますが先ずわたしがそのお願いを引き受けたら私はどうなりますか?」

準備も無く即異世界行きとかだったら困るしな。

予定は把握しておきたい。

まぁ女神様の異世界のお友達の許可も必要な様だが。

「良い質問ね!」

そ、そうですか……。

「裕太さんがもし私のお願いを引き受けてくれたら裕太さんの準備が出来たら私が裕太さんを異世界の友達の家にテレポートして友達に会わせてあげるわ!そこで私の友達と作戦会議よ!」

作戦会議ねぇ……。

まぁテレポートの安全性については触れないでおくとしよう。

「あ!テレポートは安全よ……!」

だと良いんだが……。

「安全なのですね。作戦会議についても分かりました。それでは次の質問ですが異世界転生なのか召喚なのかについて教えてほしいです」

「転生」だとまずい。

赤子あかごからやり直すという事だからな。

「召喚に決まってるじゃない!」

いや、当然の事の様に言われても俺は異世界の事とか全く教えられていないしなぁ……。

「召喚なのですね。それでは次の質問ですが召喚特典について教えてほしいです」

いわゆる「異世界召喚特典」、「転生特典」というやつだ。

縁も所縁も無い地に勇者として赴くから「チートな能力やスキル」、「勇者セット装備一式」などが貰えたりな。

「残念!そういう世界も有るみたいだけど裕太さんがこれから行く世界には無いわよ!」

「残念!」って……。

何だか若干おちょくられている気がするな。

クイズじゃ有るまいし。

まぁ異世界特典なんぞはなから期待はしていなかったが。

そういうのが無いのはまぁ残念だ。

13/25.「『』をくれるわ!」

「あ!でもあっちの世界の神様が1か月分くらいのお金が入った巾着きんちゃくをくれるわ!」

お、そりゃ助かるな。

しかし1か月分だけとは……。

情報規制といい特典規制といいその異世界とやらは色々と厳しそうな世界だな。

「少しでもお金を頂けるのはありがたいです。それでは次の質問ですが私がその異世界を救ったら私は元の世界に帰れますか?」

片道切符だったら最悪だぞ。

「もちろんよ!それに失敗しても帰してあげるわ!」

帰してもらえるのは助かるな。

まぁ失敗するつもりは無いが。

「帰してもらえるのも助かります。それでは次の質問ですが私が失敗したらどうなりますか?」

ペナルティが有ったら困るしな。

「あっちの世界は大変な事になっちゃうと思うけど……まぁ大丈夫よ!裕太さんは帰れるんだし!」

全然大丈夫じゃないんだよなぁ……。

「そうでしたら絶対に成功させなければいけませんね」

絶対に失敗出来ないな。

「そうよ!」

だな。

「ですが女神様はその時は今度は私以外の人に頼まれるのではないですか?」

普通に考えたらそうだよな。

「裕太さんで駄目だったらもう無理よ!私も色々な人にお願いしてきて疲れちゃったし!そうなったら『最終手段』しか無いわね!」

女神様が諦めちゃうのか……。

しかし俺以外にも異世界に挑戦した人はいる様だ。

てか「最終手段」って一体何なんだ……!

14/25.「最終手段が何(なに)か気になった?」

「最終手段がなにか気になった?」

女神様が楽しそうに訊いてきた。

「気になりましたね」

今の内に知られるなら知っておきたいしな。

「私の勇者になってくれたら教えてあげる♡」

えー……。

「『最終手段』って色々有るんだけどね!まだ決まってないっていうか!」

「最終手段」とやらが途轍とてつも無くやばいのは分かった。

こりゃ俺が何が何でも成し遂げないといけないな。

「分かりました。それでは次の質問ですが私がその異世界に持ち込める物は何ですか?」

これも大事な質問だ。

自分で初回特典を作れてしまう様なものだからな。

「着の身着のままよ!でも腕時計とかそういう文明の利器は無し!だってあっちは中世だし!」

じゃあ王侯貴族の服装ではったりをかませそうだな。

「あと金銀ダイヤモンドとか高価な物も持ち込めないわよ!」

世知辛いねぇ……。

じゃあコスプレせずにこのタキシードで乗り込むでも良いかもな。

というのも異世界人だと分かる服装で勇者を名乗る方が人々に信じてもらいやすいかもしれないからな。

「持ち込める物についても分かりました。それでは次の質問ですがこことの時間差はどれ程ですか?」

これくらい把握しておけば十分じゅうぶん異世界いせかいへ行くかの決断が出来るはずだ。

「時間差はこっちの1秒があっちの1秒って感じよ!神々の亜空間はその限りじゃないけど!」

じゃあ あっちでの1いっか月はこっちでの1いっか月と考えて差し支えないか。

「質問に答えてくれてありがとうございました」

女神様は親切に答えてくれたと思う。

「残念!」とか「でも教えられないわ♡秘密よ♡」とか鼻に付く場面は色々有ったが……。

まぁ俺はお人好ひとよしの「ちょろい」おとこだから星5をくれてやるとしよう。

15/25.「それも踏(ふ)まえて決めてちょうだいね!」

「良いのよ!でも言っておくけどね!これまでに私の世界から勇者を数え切れないくらい送り込んできたの!そして全員失敗しちゃったわ!私の友達の世界は今それくらい難しくて大変な事になってるのよ!それもまえて決めてちょうだいね!」

そりゃ大変だな。

しかしどうしたものかな。

「もちろん裕太さんの気持ちは尊重するわ!でも私達にはもう本当に後が無いの!だから最後まで諦めずに言わせてもらうわ!私の世界にはもう裕太さんしかあっちの世界を救えそうな人がいないのよ!だからお願い!この通り!」

女神様がお願いポーズで必死にお願いしてきた。

それにしても「お願い」ねぇ……。

俺はお願いに弱いのだ。

言い換えればことわる勇気が無い。

まぁお願いの内容にも依る。

俺がお願いを引き受けるに当たり必ずそれが俺である必要や正当な理由を求めてしまう。

何故なら誰でも出来る事だったら「俺でなくても良くないか?」と思ってしまうし大義や正当な理由が無ければ「どうして俺がしなければいけないんだ?」と理不尽さや不公平感を感じてしまうからだ。

まぁ女神様の事情は分かっている。

要するに俺が女神様の勇者になって着の身着のままで大変な事になっている異世界に行って所持金は金一封のみでそれ以外は能力補正も特典も一切無いままで何とかしてくれ、という事なのだろう。

これは俺にしか出来なさそうだし大義も正当な理由も有るから出来れば引き受けてあげたいのだが……。

さすがに難易度がハード過ぎないか?

でもやれない事でもないと思うしめちゃくちゃ興味は有るんだよなぁ……。

まぁ今ちょうど暇をしているところだし元の世界に帰れるというのなら条件次第だが女神様からのお願いを引き受けても構わないか。

「女神様の事情と異世界召喚に関する事は分かりました。私の会社の年2回の株主総会の定例会への私本人による出席と、この世界での大事な場面や緊急事態での帰還と、定期的に女神様との念話あるいは、またこうして会って話す事が出来る様にしてもらえるのでしたら女神様のそのお願いを引き受けたいです」

俺は自分の会社を守り続けなければならないから株主総会への出席は譲れないし、大事な場面での帰還もこれまでの人間関係を大切にしたいから譲れないし、女神様との関係だって俺は友達や良縁を大切にしたいと考えているからそれも譲れない。

16/25.「戻してあげるわよ」

「分かったわ。裕太さんを何度もこの世界に戻してあげるのには多少力を使うけど、私も背に腹は代えられないから裕太さんの条件をむわ。もちろん大事な場面になったり大変な事になったら友達の女神づたいに教えてあげるしこの世界に戻してあげるわよ」

この元気な女神様が分かったわ!と元気に言わなかった辺り俺は女神様に結構しんど目の条件を提示してしまったのかもしれない。

もしそうだったのなら申し訳無い限りだ。

(それにしてもずいぶんと控え目な要求ね。これまでの経験上お金持ちや総理大臣にしてほしいだとか私の体や異能が欲しいだとか要求されるかと思ったけど、こんな大変なお願いなのに大きな見返りも求めず数回の帰還と私とのお話が条件だなんてね、ふふ♡――)

(――でもそれにしてもほんと裕太さんって優しいのね♡それに私とお話ししたいだなんて♡ふふ♡私と話して楽しいのかしら?♡面白い人♡)

女神様が俺からの条件を呑んでくれて良かった。

「はい。その様な状況になりましたらその様によろしくお願いします」

本当にありがたい。

「任せなさい!」

そう言われると何だか妙に不安に感じるのはどうしてなのだろうか……。

「それでは女神様、契約は成立ですか?」

俺は今更ひっくり返されたら困るし契約書が有る訳でもないからちゃんと口頭で確認しておきたかった。

「もちろんよ!」

よし!

「それでは女神様、この大澤 裕太、女神様のお友達の異世界を救う為頑張らせていただきますから、あらためまして今後ともよろしくお願いします」

俺は契約成立を「宜しくお願いします」で締めくくろうとした。

ちなみにこういうとき真面目まじめ人程ひとほど「全身全霊をって」などと言いたくなりがちだと思うが俺は付け足さなかった。

俺は別に体や魂まだ捧げるつもりは無いからな。

異世界を救う為自分なりに努力するつもりだが自分を犠牲にするつもりは無い。

「ええ。契約は成立よ!これからも宜しく頼むわね!裕太さん!」

勇者の契約が成立したからなのだろうか女神様はとても嬉しそうにしていた。

17/25.「お待たせいたしました」

そして契約を終えたこのタイミングでメイドの凛穂がお出し物をワゴンで運んできた。

「裕太様、お待たせいたしました」

ノックされ扉が開いた。

しかしタイミングの良い事だな。

「やっと来たわね!」

まぁいずれにせよ女神様が上機嫌じょうきげんになってくれたのは良い事だ。

「早かったな」

俺は凛穂に素直に感想を述べた。

これは別に皮肉ではないしむしろ褒め言葉だ。

「はい」

てか凛穂は本当に外出していたのか?

玄関や車の音はしていなかったが……まぁ良いか。

「こちらがコーラと洋菓子の名店より用意いたしましたショートケーキでございます。コーラはこちらの氷を入れておきましたグラスにてお飲みください」

凛穂がケーキが乗っているお皿をテーブルに配膳し傍に氷が入っているコップを置くとそこにコーラを注いでくれた。

「それでは再びご用件がございましたらベルにてお呼びください」

凛穂はそう言ってお辞儀した。

「ああ、分かった。ありがとな」

俺が感謝すると凛穂は嬉しそうにしていた。

そして凛穂はお辞儀し退室していった。

「ねぇ、裕太さん!私もう食べて良い?」

早速女神様が食べて良いか俺に確認してきた。

「どうぞ。心行こころゆくままに」

もちろん構わないが……。

てかその組み合わせは本当に大丈夫なのか……?

「大丈夫よ!」

そ、そうですか……。

って、え!?

「色々大丈夫よ!」

えーーー!?

この女神様は非常に満面の笑みでそう言ってきた。

……ま、まぁ良いか……。

かくして俺は女神様の勇者になりコーラとショートケーキが届いた俺と女神様は談笑しながら頂き仲良くなった。

18/25.「『』しませんか?」

「女神様はショッピングや食事、お出掛けが好きとの事ですがもし良ければ今から私のおごりでお出掛けしませんか?」

女神様はお金に苦労している様だし勇者とやらになった俺がもてなしてやらないとな。

という訳で俺は女神様をお出掛けに誘った。

「そうこなくっちゃ!デートよデート!」

え?

女神は乗り気だった。

「『デート』なのですか?」

デートは恋人同士とかがするものだと思うんだけどな……。

「そうよ!」

え?

「デートは恋人同士や夫婦がするものだと思うのですが」

俺は女神はもしかしたら知らないのかもしれないと思い少し説明してあげた。

「細かい事は良いの!そういうのは雰囲気が大事なんだから!じゃんじゃん買って楽しむわよ!」

お、おっす……。

まぁこういうのはいわゆる「疑似恋愛」というやつなのだろう。

それに雰囲気だけならただだしな。女神様が満足してくれるのなら安いものだろう。

そして――。

「とりあえず選べないからこのお店の物全部よ!」

ま、まじか……。

女神は俺の金で店の商品を全部買ってしまった。

「お客様畏まりました……!」

手間を掛けさせてしまってすまない……。

19/25.「この『』を観るわよ!」

「この映画を観るわよ!」

お、女神様は恋愛ものが好きなんだな。

女神は映画館で上映中の恋愛映画が目に留まった。

「もうやだ!他の観る!行くわよ!」

まぁ気持ちは分かるが……でもお金払ったんだから最後まで観ようぜ……。

女神は楽ちんなラブストーリーを期待していたのだがヒロインが重いやまいだと分かって辛くて観てられなかった。

「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」

最高級のレストランで接客が注文を聞きに来た。

「一番高いやつと一番高いお酒に決まってるでしょ!」

え?いつの間に決まってたの?

「それでは当店最高のシグネチャーであるコースとオプションとしてソムリエが用意している最高のロマネ・コンティ90年で宜しいですね?」

と接客が俺の目を見て訊いてきた。

まぁカードを出すのは俺だしな。

「良いわよね?」

女神まで俺に念を押す様に圧を掛けてきた。

「それでお願いします」

断れる訳が無いよな……とほほ……。

かくして女神は俺の懐事情ふところじじょうを知ってか知らずか贅沢の限りをくした。

20/25.「ふぅ楽しかった!」

そして女神は――。

「ふぅ楽しかった!」

――両手を腕ごと伸ばしてのびのびして余韻よいんひたっていた。

まぁ他人のかね使って贅沢すりゃそりゃ楽しいだろうな。

「それは何よりです」

それはまぁ本心だった。

「でもお金を使い過ぎちゃったのは悪かったわよ……!私だってお金持ちみたいな事したかったんだもん……!」

女神は女神で悪い事をしてしまったとは思っていた。

まぁ気持ちは分かるが。

「お気持ちは分かります。私としては女神様に満足していただけて何よりです」

もちろん本心だ。

「ユウタさんってふところが広い!やっぱりユウタさんが私の勇者よ!」

女神は心底しんそこ満足していた。

ま、俺には「私の金づるよ!」に聞こえたが。

「ありがとうございます」

俺は女神に感謝した。

ちなみにこれまた皮肉ではなく本心だった。

「そだ!裕太さん!私の事は『アン』って呼んで!裕太さんにならアンと呼ばれても良いわ!私もこれからは裕太さんの事を『裕太』って呼んであげるわね!」

そして女神は俺にお互いの呼び方を提案してきた。

やっぱり女神様にもちゃんと名前が有ったんだな。

それにまぁ女神様に呼び捨てにされるのは別に構わないしな。

「分かりました。それでは女神様の事は『アン様』と呼ばせてもらいます」

女神にはちゃんと「様」を付けないと不敬にあたりそうだしな。

21/25.「『』は終了!」

「『様』はもう駄目よ!敬語は終了!」

女神はユウタにはもう敬語を使ってほしくなかった。

敬語タイム終了か……。

「分かった」

女神のアンがそう言ってるんだから従うしか無い。

「そうそう!その調子よ!」

アンはユウタがやっとため口を利いてくれてご機嫌だった。

「ところで一人称は『私』とか『僕』とか『俺』とか有るがアンの好みや俺に使ってほしいのはどれだ?」

俺は一人称をアンの好みに合わせるべく訊いた。

「そうね~私は裕太の一人称は『俺』が良いかもしれないわね!」

アンは『俺』が良いのか。

「それは何でだ?」

俺はアンに訳を訊いた。

「ほら私って明るいから、同じくらい俺感でぐいぐいきてほしいのかも!」

つまり私は陽キャだからお前も陽キャでこいって事だな。

しかも「俺感」って事は俺系でこいって事なのだろう。

「分かった。任せろ」

つまり今のままで良いって事だ。助かるな。

「きゃ♡」

な、何だ?

アンは急に変な声を上げたのだった。

かくして俺はアンとの関わり方が決まった。

22/25.「名前の由来は有ったりするのか?」

そして俺とアンのお出掛けデートもクライマックスに差し掛かり俺はアンに――。

「なぁ、アン。アンの名前の由来は有ったりするのか?」

――「アン」という名前の由来を訊いてみた。

「有るわよ。『アン』は昔仲良くなった人が名付けてくれたの。でも今からもう6000年以上も前の話よ……だから私にその名前を付けてくれた人はもういないわ……その文明も国も、文化も言語すらも時の経過と共に無くなってしまったのよ……――」

「――裕太は世界史に詳しいだろうから知ってるでしょ?メソポタミア文明も、アッカド人もシュメール人も、彼らの文化や言語ももう無くなってしまったの……あの人も魂が何度も転生を繰り返して、もう私の事はとっくに忘れてるわ……」

アンはとても悲しそうに話していた。

今思えばアンが最初に自分の名前を名乗らなかったのは知り合って間も無い人に「アン」と呼ばれたくなかっただけでなく、その名前の由来を訊かれればその過去の事を話さなければならないかもしれない煩わしさも有るだけでなく、何よりもその思い出の人の事を思い出したくなかったのだろうと思った。

「アン、俺は例え死んだとしても、そして魂がどれだけ転生したとしても、絶対にアンの事は忘れない」

俺はアンの事を忘れる気は一切無い。

(私の事を忘れないって言ってくれるのは嬉しいけど……説得力が無いのよ……)

「死んだ後も私の事を覚えてるなんて絶対無理よ……魂に残るのは生物学的な情報だけで、記憶は消えてしまうの……それがこの世界のルールなのよ……」

人間の体というのは実に興味深いもので記憶は短期記憶は海馬に、長期記憶は大脳皮質に蓄積されているはずなのだが臓器提供を受けた人が前の持ち主の影響を受けたりするという事が有るかもしれないという様に臓器などにも記憶が一部蓄積されていたりするかもしれないのだ。

そんな訳で俺はこの世界に神様が存在するのだから大切な記憶は魂に刻まれているという奇跡が有る事を信じたい。

23/25.「俺の『』になってほしい」

そして俺はアンに――。

「アン、俺はお前の事が好きだ。俺の恋人になってほしい」

――思いを告げた。

「私も好きよ!♡裕太!♡ええ、喜んで!♡」

かくして俺とアンは恋人関係になった。

「アンを抱き締めても良いか?」

俺はアンを抱き締めたい。

「ええ♡良いわよ!♡いっぱいぎゅってして♡」

アンが俺に抱き締める許可をくれたから俺は遠慮無くアンを甘く優しくぎゅっと抱き締めた。

「アン、俺は漢気を出そうとするとどうやら一人称も口調も『俺様』になってしまう様なんだ。そんな訳で俺がこれから言う事の一人称を俺様にしても良いか?」

俺はどうしても男気を出そうとするとどういう訳か「俺様」が出てきてしまうのだ。

という事は俺の前世は魔王とかそんなのだったりしてな。

いずれにせよ俺の一人称や口調がいきなり俺様に変わったらアンを驚かせてしまうと思いアンに俺様モードを発動する許可を取ろうとした。

「ふふ♡良いわよ♡でも俺様って、まぁそうよね♡こんなに若くして財閥を築き上げてお屋敷に住んでいる、野心もりもりの天才様だもんね♡あ、でも今は燃え尽き症候群なんだっけ?♡」

アンは俺の脳内の思考を覗いていたのか……。

俺は今までの違和感が解けた。

(え……!?)

俺は燃え尽き症候群の件は誰にも話していないのだ。

(そ、そうだったの……?し、しまった……!)

アンは慌てるも読心術どくしんじゅつが使える事がばれる訳にはいかないから俺が心の中で言った事になにも言い返せずただただ焦っていた。

24/25. 認めるつもりは無いのか?

認めるつもりは無いのか?

(な、無い……!)

アンの様子からして読心出来ているのは間違い無い。

そしてアンがなにも言ってこないから読心術が使える事を認めるつもりは無いらしい。

しかし俺にとって思考を覗かれるのは初めての経験なのだが俺は自分の思考や心の内を覗かれるのは嫌いな様だ。

(ごめん……)

まぁ俺は認めたがらない相手を無理に認めさせようとは思わない。

なんせアンは女神様だしな。

読心くらいお手の物なのだろう。

(ふぅ……)

そして俺はアンの読心術の抜け穴を探そうと感覚的に一瞬で「そんな訳でこれはお仕置き確定だな」と思ったのだがアンの表情には特に変化が無かったから感覚的に一瞬で考える事でアンに察知されないという意味で読唇術に対抗出来る事が分かった。

まぁいずれにせよアンが俺に俺様になる許可をくれたから俺は――。

「アン、俺様が必ずお前の為にお前の友達の異世界を救ってみせるし、お前を幸せにすると誓う。アン、全部俺様に任せてくれ。それに死んだ後だって、俺様は絶対にお前の事を忘れない!愛しているぞ!アン!」

――心置き無く俺様モードを発動した。

アンの友達の世界を救いたいという気持ちにもアンを幸せにしたいという気持ちにも死後もアンの事を忘れないという強い決意にも偽りは無い。

(私の事を忘れないって言ってくれるのは本当に嬉しいの……でも本当に説得力が無いのよ……)

「ええ♡絶対に救って私も幸せにしてね♡裕太に全部任せるわ♡それにそうね、いつまでも私の事を忘れないでね♡愛してるわ♡裕太♡それにしても俺様な裕太も悪くないわね♡」

アンは実に良い女だ。

25/25.「アン、キスしても良いか?」

「アン、キスしても良いか?」

俺とアンは見つめ合い俺はアンにキスする許可を取ろうとした。

「ふふ♡ええ♡もちろん良いわよ!♡いつでも良いわ♡私にいっぱいちゅーしてね!♡それにちゅーする許可なんていちいち私に取らなくても良いのよ?♡」

アンが俺にキスする許可をくれたから俺はアンの口に甘く優しくキスした。

しかし確認は取らなくても良い、かぁ……。

それは難しいなぁ……。

というのもまだ俺にはアンへの遠慮というものが有るのだ。

それにこの社会では不同意でそういう事をすると1発いっぱつでアウトだしな。

しかも俺はアンと知り合ったばかりだ。

まぁ俺はこれからお互いにとって理想の関係になれる様に頑張っていくだけなのだがな。

(愛してるわ♡裕太♡まぁ心を読んでるのがばれたと思った時はどうしようかと思ったけど……!それにしてもただ同然でこんなお願いを引き受けてくれるなんて♡やっぱり貴方は変わっていないわね♡でもあれからずいぶんと積極的で慎重になってるけど♡優しいのは相変わらずね♡)

そして俺はこのタイミングでアンに――。

アン、愛しているぞ。

――悪戯を繰り出した。

「私も愛してるわ!♡」

……なぁアン、今のは口に出してないんだが……?

「え……!?あ……!」

焦ってるアンも可愛いじゃないか。

「ま、今は見逃してやるさ」

かくして俺とアンは熱く長くキスを交わし夜も更けていった。

後書き

主人公の一人称が基本的に「俺様」ではなく「俺」なのは謙虚けんきょさの現れです。

要するに「俺様」を使うのはここぞという場面でと心掛けているという訳です!

そしてアンはお馬鹿ですが元気で良いです。良いなんです……!

ちなみに数学オリンピックはジュニアと高校生の部が有りほかのオリンピックもそうですが高校生までしか出場出来ないですから興味が有る現役の子は早めに行動に移しましょう!

そしてその補足ですが物理オリンピックなどは無料なのですが数学オリンピックは有料で出場費が5,000円と学生にとってはそこそこ高額ですから注意が必要です(泣)

子供からお金を取るなんて許せん!(笑)

それにしても俺様にとってATMで無け無しの5,000円を振り込んだのは良い思い出です。

そして今思い返したらこれも財閥建設をこころざしたきっかけの1つだったと思います。