[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 3節 23話 地球の女神 – アダム (アン視点)
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青年男性向け – ソフト – R18
第3節 幼馴染 (第1章 勇者の村)
第 23 / 26 話
約 10,000 字 – 22 場面 (各平均 約 450 字)
1/22.「『』~!あっそぼ~!」
今日は暇だからマナリスと遊んであげるわよ!
「マナリス~!あっそぼ~!」
暇を持て余していたアンはマナリスの家に遊びにきていた。
「アン、ようこそ」
マナリスはアンを出迎えた。
「今日こそは私にマナリスの例の絵本のお部屋に案内しなさいよね!」
マナリスが絵本の収集家で絵本専用の部屋まで有ると知ったアンは早速マナリスの絵本を見せてほしかった。
「はい、もちろんですとも。それではこちらへどうぞ」
マナリスはアンの来訪を嬉しそうにしながら案内していこうとした。
一方でアンはマナリスが絵本の部屋は見せてもらえるのかぁと安堵していた。
というのもマナリスの家は非常に広く、知り合って間もない頃にマナリスの家を案内してもらった事が有ったが「この部屋には入ってはいけません」や「誰にも入室を許してはいません」などと言われ入れなかった部屋がいくつも有ったのだ。
「分かったわ!楽しみ!」
アンはそう言うと素直にマナリスに付いていった。
2/22.「どうぞ入ってください」
「この部屋です。どうぞ入ってください」
するとその部屋に着いたのかマナリスが扉を開けた。
「わぁあああ!凄い!」
アンが開いた扉の中へと入っていくとそこにはちょっとした図書館や本屋さんのように無数の本が本棚にずらりときちんと並べられていた。
「どうぞ、好きな本を読んでみてください」
マナリスは自分が絵本が大好きでありアンが自分の趣味に興味を持ってくれている様で嬉しかった。
「分かったわ!――んじゃこれにしてみようかしら!――勇者メイベル物語?」
アンは試しに勇者メイベル物語の絵本を手に取ってみた。
「あぁ、それは勇者メイベルの絵本ですね」
マナリスはアンが手に取った絵本のタイトルを覗き込んで確認した。
「へ~そう!じゃあ一緒に読むわよ!」
アンはマナリスと一緒に読みたかった。
「はい♪」
マナリスもアンと一緒に読みたかった。
そしてアンとマナリスは隣同士で本棚を背にし体育座りした。
3/22.「ところで『』って誰?」
「ところでメイベルって誰?」
アンは天界で人気の勇者の事など全く知らなかった。
「アンさんは勇者メイベルを知らなかったんですね……いえ、科学の世界のアンさんなら不思議な事ではないですけれど……」
マナリスもアンが一般教養を全く知らないなど既に知っておりアンが科学の世界の神であるという事も考慮しつつもアンが有名な勇者の事を知らないのも当然か、と呆れつつも納得した。
「ちょっと……!わ・た・し は ゆ・う・しゃ になんて頼らなくてもちゃ~んと星を管理出来る ゆ・う・の・う な め・が・み・な・の……!」
アンは仕事のほとんどを自分で決済する事無く1号達に完全に任せていた為天使達の能力が経験するごとに向上しておりまた休み無し24時間労働という超絶ブラック労働を徹底していた為ユウタ亡き後も何とかなっていた。
まぁ科学の世界では「ドラゴン」や「魔王」、「魔神」といった脅威が無い為アンの星は天使のフル稼働でどうにかなっていた。
「そうですね……」
「そうなのよ……!」
「それで勇者メイベルについてですが勇者メイベルとは女性の勇者で『ベルシリーズ』とも呼ばれる勇者グループの中でも2番目に人気の勇者なのですよ」
4/22.「で、『』シリーズって何?」
「へぇ~。で、ベルシリーズって何?」
アンはそんな事も知らなかった。
「ベルシリーズとはお名前の最後に『ベル』が付く勇者達の事ですよ」
「あー!そういう事ね!簡単じゃないの!アナベルとかアベルとかって事でしょ?」
「はい、そういう事です。よく分かりましたね」
「余裕よ!エッヘン!」
アンは鼻高々(はなたかだか)だった。
5/22.「さて読んでみますか?」
「はい。さて読んでみますか?」
「もちろんよ!」
アンは絵本を開いて読んでいこうとした。
「左側わたくし持ちますよ?」
「名案ね!任せたわよ!」
「はい。それと声に出して読みますか?」
「当たり前よ!」
「分かりました」
「じゃあ読んでいくわよ~!どれどれ~!」
そしてアンとマナリスはそれぞれが本の片側を持ちアンがページをめくって読み進めていった。
「これは剣とスキルと魔法の世界のお話。田舎の準男爵領に生まれたメイベルは両親の農業を手伝う活発な女の子でした」
*片側が文章で片側が絵になっている。*
「アンさん――」
「何?」
「交互に読みますか?」
「そうね!じゃあ次はマナリスよ!」
「はい。それでは。――ある時ステータス鑑定を受けると自身には才能が有る事が分かりその準男爵領の騎士団に入りました」
「そして騎士団のしきたりによりその一帯を支配している伯爵領の領都にある騎士学校に編入するとみるみるうちに騎士としての才能を開花させていきました」
「そして校内で一番の騎士になると王都主催の王国内の騎士学校が有力な生徒を出し合って最強の騎士を決める騎士学校対抗戦が開かれるとメイベルはその大会で見事に優勝しました」
「そして王都の騎士団に入り王都の騎士学校に編入されると特別に剣聖から剣の指導を、賢者から魔法の指導を受けやがて王国の勇者になりました」
「しかし時は待ってはくれませんでした。ついに魔族の侵攻が始まってしまったのです」
「魔族により国が1つ、また1つと滅んでいきました」
6/22.「『』がいるのに何で……?」
「え……!?勇者がいるのに何で……?」
アンはメイベルの世界で勇者がいるのにも関わらず国が滅んでいった理由が分からなかった。
「わたくしも子供の頃読んでいた頃は分かりませんでしたが小説版を読んでみると腑(ふ)に落ちました。滅んだのは亜人達の国でそれらの国々をヒューマン達が見捨てたんです」
「え……!?何で……?」
「逃げてきた亜人達を安い労働力として雇ったり奴隷にしたり土地を取り返した後自国の領土にする為だった様です」
「最低ね……!」
「そういうものですよ」
「で……やがてヒューマンと亜人の大地が半分魔族により侵略されると女神フローラの名のもとにメイベルを勇者とする勇者パーティーが編成され魔族達と戦っていきました」
「勇者メイベルは仲間達と共に魔族の要塞を落とし、魔族の手に落ちた国々を解放し、ついに魔王の城へと辿り着きました」
「そして勇者メイベルは魔王ルキヤンロイクと対峙し死闘の末に魔王を倒すと世界に平和をもたらしましたとさ、めでたしめでたし」
「世界が平和になって良かったですね」
7/22.「でも何(なん)かおかしくない?」
「でも何(なん)かおかしくない?」
「何がですか?」
「絵見たら勇者メイベル魔王と1人で戦ってたよ?」
「じゃあ私が解説しますね」
「おー!期待しておくわ」
「あまり期待しないでくださいね。――小説版によるとヒューマン達は魔族領まで深く入り込めただけで満足していた様で強くなり過ぎたメイベルと魔王をぶつけてメイベルを殺すつもりだった様です」
「え……!?」
アンは驚きを隠せなかった。
「メイベルは王子からの求婚を断っていた様で聖教からのお見合いもお相手が好みではなくて何度も断っていた為相当厄介者扱いされていた様ですよ」
「最低な連中の集まりね!」
「わたくしもそう思います」
マナリスも同感だった。
8/22.「てか『』のいっぱいあるわね……!」
「てか勇者メイベルのいっぱいあるわね……!」
本棚を見ると驚いた。
「そうですね。ここの棚は全てメイベルですよ」
「へー。魔王ルキヤンロイクを倒したメイベルは女神フローラにより今度は世界の破滅を目論む邪神教団ディミナスから世界を救う為神アルケタの世界へと派遣され……神アルケタの星の第三大陸を救った勇者メイベルは今度は魔王カタクティスにより支配された世界を救う為女神アルミナスの世界へと派遣され……って、ちょっとタンマ……!メイなんとか次々に色んな世界に派遣されていってない……!?」
アンは次々に勇者メイベルの本を開いて勇者がどうなったのかを確認し気になった事を訊いてみた。
「そうですね。女神フローラは早速レンタル業を始めた様です」
「へー。儲かってたのかな?」
「はい。相当」
「へー。それにしても私絵本なんて最後まで初めて読んだわ……」
「どうでしたか?アン」
マナリスはアンの絵本を読んだ感想が聴きたかった。
「楽しかったわよ!」
「楽しんでいただけて良かったです。わたくしも楽しかったです」
マナリスはアンに微笑んだ。
9/22.「じゃあ今度は『』のを読んでみるわ!」
「じゃあ今度はあっちのを読んでみるわ!」
「どうぞ」
(あ……でもそっちは……)
アンは向こうの棚の本を取りに行った。
「勇者アダム物語。――これなんかどうかしら?」
「それは……良いのではないですか……?」
「え……?マナリスなんか歯切れが悪いわね。あんなにたくさん持ってるのに」
アンはマナリスが好きでもない絵本を大量に持っている理由が分からなかった。
「それは貰い物なんです」
「へー誰から?」
アンは何冊か手に持っている状態で再び同じ所に座った。
「それは……」
かくしてマナリスは「勇者アダム物語」の絵本を入手した経緯を振り返っていった。
10/22.「『』の続編を出せー!」
そしてこれはマナリスがティアラ出版の本社前で自身が加入している「勇者アベル・ファンクラブ」が「勇者アベル物語」の続編を出すようにと抗議していた時の事。
「『勇者アベル物語』の続編を出せー!」
「出版社はちゃんと仕事しろー!」
「怠慢を許すなー!」
「編集長はちゃんと説明しろー!」
「勇者アベルを解放しろー!」
ファンクラブの者達は定期的に抗議活動を行っている。
*勇者ものの書籍では「勇者アベル物語」が一番売れており一躍人気に踊り出たのはアベルが死んだからだという見方が有りこれは陰謀論だが出版社が黒幕でアベルを隠しているのでは?と思っている神々も大勢おり批判が高まっていた。*
そしてマナリスはファンクラブに加入したばかりであり緊張しハァハァと疲れていながらも小声ながらも見様見真似で抗議に加わっていた。
11/22.「ここで何をしているのかしら?」
そして抗議活動が終わると――。
「ねぇ、君。ここで何をしているのかしら?」
――マナリスは見知らぬ女性に話し掛けられた。
「勇者アベル・ファンクラブの抗議活動で出版社に抗議していたんです」
「あらそう。じゃあ君は勇者アベルの事が好きなのね?」
「はい!」
「私も好きよ。ところで私の名前は『サーティーン』っていうの。よろしくね」
「わたくしは『マナリス』と申します。サーティーン様宜しくお願い申し上げます」
「『様』は付けなくて良いわよ」
「分かりました!」
「それに良い名前ね」
「ありがとうございます!サーティーンさんのお名前も素敵ですよ!」
「ありがとう。さてマナリスちゃん、もし良ければこれからお姉さんと喫茶店で勇者について語り合わない?」
「はい!語り合いたいです!」
「それでは行きましょう」
「はい!」
サーティーンが差し出した手をマナリスが取るとテレポートした。
12/22.「――って、『』ちゃんは……?」
「それでは本日の抗議活動にご参加くださった勇者アベル・ファンクラブ、読者クラブの皆さん!本日もお疲れ様でしたわ!――それでは打ち上げの二次会へと向かいましょう!――って、マナリスちゃんは……?」
「あ……!いつの間に……!」
「みんな……!二次会の前にマナリスちゃんを探しますわよ……!」
「はい……!」
勇者アベル・ファンクラブ会長のベルティーユと会員達は誰一人違和感に気付かずいなくなったマナリスを探す事になった。
13/22.「お客様『』にいらっしゃいませ」
「お客様『メゾン・ド・イヴ』にいらっしゃいませ」
「私とこの子の2人だけよ」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
「素敵なお店ですね」
「そうよね。ありがとう」
「ありがとう?」
「フフ」
サーティーン達は店内へと案内されていった。
「メニューはこちらとなっております」
「ありがとうございます……って、た、高い……!」
マナリスはメニューを受け取り開いて読んでみると値段が高過ぎてゾッとした。
「私が奢ってあげるから好きな物を注文して良いわよ」
「自分のお金は自分で出します……!」
「良いの。ここは先輩の女神に任せて」
「でも……!」
「それでも貴方が返したいと思うのなら、マナリスちゃんがいつか立派な女神になったら奢ってくれたら良いと思うのだけれどどうかしら?」
「分かりました……!いつかお返しします……!」
マナリスはいつかイヴに恩を返すと決意した。
14/22.「私は『』と『』」
「それで良いわ。私はローズ&ホワイトティーとココナッツブランマンジェ」
「かしこまりました」
「わたくしは……ダージリン・ファーストフラッシュとパンケーキでお願いします」
「かしこまりました」
店員は注文を受けるとすぐに奥へと下がっていった。
そしてサーティーンは肘を立て頬を乗っけてマナリスを見つめた。
「マナリスちゃんはダージリンとパンケーキが好きなのね」
「はい……!」
「私も好きよ。美味しいわよね」
「わたくし星がまだその全然で……あまり食べた事が無いので……でもファンクラブの皆さんのパーティーやお店に行った際に食べてみたら美味しくて」
「そうなのね。まぁこれからたくさん美味しい物が食べられる様になると良いわね」
「はい……!」
マナリスはいつかは美味しいものがたくさん食べられる様になりたいと思ったのだった。
15/22.「ところで『』ちゃんはどの世界の女神なの?」
「ところでマナリスちゃんはどの世界の女神なの?」
「わたくしはカトラス様の世界です」
「って事は魔法の世界ね」
「はい」
「ダンジョンはちゃんと配置しているかしら?」
「はい」
「ならすぐに中世まではいけるんじゃないかしら」
サーティーンはダンジョンさえあれば食料や生活に必要な物が簡単に手に入る為文明もある程度までは一気に発展すると考えていた。
「それが勇者が見付からなくてやり直しているんです」
「なるほどね。納得がいっていないのね」
「はい」
16/22.「それで『』ちゃんはどんな勇者が好きなのかしら?」
「それでマナリスちゃんはどんな勇者が好きなのかしら?」
「わたくしはアベル様の様な勇者様が好きです」
マナリスの決心は揺ぎ無かった。
「そうなのねぇ。彼、優しいもんねぇ」
「はい!とても優しいです!」
「でも彼程でなくても優しくて立派な勇者様って探せばいるんじゃないかしら?」
サーティーンはマナリスに別の道を示そうとした。
「きっといらっしゃると思います」
「見付からなかったの?」
「はい」
「なら買ったり借りたりしたら良いんじゃないかしら?」
サーティーンとしてはマナリスに購入やレンタルを検討してほしかった。
「お金が掛かりますし……」
「そうね。でもファンクラブの会長ちゃんならきっと貸してくれるわよ?」
「ベルティーユ様の事ですか?」
「そうよ」
「わたくしは会長様に迷惑を掛けたくないですし……」
「あら、じゃあ自力でどうにかしたいって事かしら?」
「はい」
(フフ。憎たらしいぐらいそっくりね)
サーティーンはマナリスに微笑んだ。
17/22.「『』お待たせいたしました」
「お客様お待たせいたしました。こちらがローズ&ホワイトティーとココナッツブランマンジェ。そしてこちらがダージリンとパンケーキになります」
「ありがとうございます」
注文した品が配膳されると店員はお辞儀し奥へと下がっていった。
「美味しそうね」
「はい!美味しそうです!」
「さあ召し上がって」
「はい……!」
サーティーンとイヴは食べ始めていった。
「こんなに美味しい食べ物が世の中には有るんですね……」
「フフ。料理人を手に入れればあっという間よ?」
「でもお金が……」
「今は使わない素材を売ったり石油を科学の世界に売ったりするのはどうなのかしら?」
サーティーンは金策を提案した。
「いつか使うのかなと思うとそういう訳にもいかないかなと……」
「そ。ならお仕事をしてみるのはどうかしら?」
「わたくしに出来るでしょうか……」
「出来るわよ。マナリスちゃんの興味の有るお仕事は何かしら?」
「わたくしは……思い浮かびませんでした」
マナリスは苦笑いした。
(難しいわね)
サーティーンは相手に迷惑を掛けたくないと思っているマナリスはこちらが勇者や金銭の提供をしようとしても断ってしまうだろうと察していた。
18/22.「いつか『』にも恵まれると良いわね」
「いつかお金にも恵まれると良いわね」
「わたくしはお金は生活に困らない程度に有れば良いかなと思っています」
「フフ。それもそうね」
「はい……!」
サーティーンはマナリスの欲の無さに少し嫉妬した。
「ところでさっきは出版社の前で何を抗議していたの?」
「続編の入荷と続編が入荷されない理由の説明と出版社がアベル様を手に掛けたという疑惑についての説明の要求ですね」
「へぇ。確かにその説明はちゃんとしてほしいわよね」
「はい……!」
「確か勇者アベルは世界神フリードとの戦いで相討ちになったんじゃなかったかしら?」
「はい。そう言われています」
「ならアベルの死後その魂はアベルの魂を保有していたティアラのもとへと帰されたはずよね?」
「はい。わたくしもそう思います」
「ならどうしてアベルの魂がティアラのもとへと帰らなかったのかしらね?」
サーティーンは知っているくせに何も知らないというテイで訊いてみた。
「分かりません。ただファンクラブでは説の一つとして出版社がアベルを題材とした出版物の価値を上げる為にアベルを殺し隠しているのではないかという説が有るんです」
「確かにアベルが表舞台から姿を消してから伝説的な名声を獲得していったものね」
「はい……!」
19/22.「『』が優しい以外にどんなところが好きなのかしら?」
「ところでマナリスちゃんはアベルが優しい以外にどんなところが好きなのかしら?」
「そうですね。色々なところに気を配っていて紳士的で誰も手に掛けないところも好きです」
「彼は先ずデリカシーが有るものね」
「はい!さらにアベル様なら家族が不治の病に罹っている事で悩んでいてもそれに効く薬をタダで与えたそうですから」
「ちゃんと対価を要求したら良いのに」
「ですがそれが『勇者』というものではありませんか?」
「……そうね。ところで色恋についてはどうなのかしら?」
サーティーンはアベルを「勇者」という名の不治の病から解放したいと考えている為心の中で苦笑いし別の事についても訊いてみた。
「素敵だと思いますよ!わたくしはそういうシーンも大好きです!」
「でも結局女神に取り上げられてみんな成就(じょうじゅ)してないわよね?」
「そうですね。でもその片思いの切なさがたまりません!」
アベルには王子様に片思いをするお姫様の様な乙女心が刺激されるという面でも人気が有った。
「そう。ところで貴方の名前だけどアベルの為に自分の体を代償にして救った女神ちゃんと名前が同じよね」
「よく気付きましたね!そうなんです!」
「どうして貴方も同じ名前にしたのかしら?」
「その女神様の事を他人事(たにんごと)とは思えなかったというのも有りますがわたくしの内なる心に従った結果だと思います」
「そう……」
サーティーンは運命の強さを思い知った。
20/22.「彼は貴方に『』をしてくれるかしら?」
「でも仮にマナリスちゃんが彼を手に入れられたとしても彼は貴方に恋をしてくれるかしら?」
「ティアラ様は快(こころよ)くは思わないでしょうね」
「そうよ。それにきっと彼は女神の貴方と恋をするなんて畏れ多いと感じてしまうんじゃないかしら」
「だとしても少しでも側にいたい、と思ってはいけないのでしょうか?」
「ううん。そんな事は無いと思うわよ」
「良かったです。わたくしはただ切実に気持ちを伝えたいのです」
「そう。色恋沙汰(ざた)の多い勇者なんて諦めて他の勇者にいく気も無いのね?」
「はい。星に置く事は有ってもわたくしが好きなのはアベル様だけです」
マナリスは誰に何と言われようと自分の考えを変えるつもりは無かった。
「分かったわ。彼に会えると良いわね」
「はい!」
「そうだ。餞別にこれをあげるわ」
「それは何ですか?」
「私の好きな勇者、勇者アダムの絵本と小説よ」
「それはぜひ読ませてください!」
「ええ、ぜひ読んでみてね」
サーティーンはマナリスに自分が経験した苦労を追体験してほしかった。
そしてその後(ご)マナリスが帰宅すると――。
「やっと見付けましたわマナリスさん……!一体どこへ行っていらしたの……!」
――ファンクラブの皆から心配され結局マナリスを含めての二次会がやっと行われたのだった。
かくしてマナリスはサーティーンとお茶し「勇者アダム物語」の全巻を入手した事を思い出した。
21/22.「という様な事が有りました」
そしてその事をアンに話し今に至る。
「という様な事が有りました」
「へぇ……で、どういう勇者なの……?」
「良い勇者だとは思うのですがアンも読んでみたら分かりますよ」
「そ!どれどれ。――勇者アダム物語」
アン達は勇者アダム物語を読み進めていった。
「ちょ……グロいし容赦無さ過ぎじゃない……?」
「そうですね。結構血生臭いですよ」
「優しい勇者」に慣れている者達には刺激の強い内容だった。
「てか誰に対してもずっと敬語でエグくない?」
「わたくしは紳士的だと思いましたけれど」
「敬語やめて、って言ってもずっと敬語じゃんコイツ」
「徹底していますよね」
「それに表情も固過ぎよ。ずっとぶっきらぼうっていうか」
「わたくしもそれは思いました。一応わたくしは全て読みましたが終始こんな感じでしたよ」
「ゲッ……こんな勇者もいるのね……」
「はい。世界は広いです」
22/22.「でも『』の1つや2つは有ったんじゃないの……?」
「あ……!でも恋の1つや2つは有ったんじゃないの……?」
アンはラブシーンが気になった。
「有りませんでしたね」
「え……?」
「女神イヴ様からのアプローチには『私は女神様に相応しくありません』の一点張りで全滅でした」
「最低……!」
アンはその勇者の事を最低だと思いこれ以上読むのをやめ絵本を閉じた。
「わたくしはそこまでは思いませんがあまり楽しめませんでしたね」
「じゃあマナリスが一番オススメの勇者の絵本は?」
そして今度はアンはマナリスに一番好きな絵本を訊いてみた。
(アンにアベル様の事を知られてしまうのはまずいんですよね……)
マナリスはアベルの正体に気付いてほしくなかった為素直に教える事が出来ず――。
「そうです。今から美味しい物でも食べませんか?」
――食べ物で話題と場所を変えようとした。
「良いわよ!よいしょっと。――行くわよ!」
アンはマナリスの戦略にまんまとハマり急いで本を元有った場所に戻すと美味しい食べ物の場所へと案内してもらおうとした。
「はい!行きましょう!」
マナリスはアンの気が変わってくれて安心し案内しようとした。
(アベル様♡わたくしは貴方様にいつか会える日を心待ちにしております♡アンと一緒に♡)
マナリスはアベルの絵本を見つめると部屋を出ていった。
――マナリスの心には既にアンと竿姉妹になる構想が出来上がっていたのだった。
ユウタ!アンタ勇者として中々立派みたいよ!あと何より早く帰ってきなさいよね!
アンは勇者の絵本を読んだ事でやっと自分もユウタを誰かと比較しそれなりの実力があるのではないかと思えてきていた。
かくしてアンはマナリスの家で絵本を楽しみその後(ご)お食事とガールズトークも楽しんだのだった。
後書き
出版社の編集長が陰謀論で勇者アベルの殺害・隠匿の真犯人にされいくら説明しても納得してもらえず嫌がらせまでされている為そのストレスで頭が禿(は)げ上がったのは言うまでも有りません。
しかし相当の利益を出しているので頭が禿げ上がった事が気にならないぐらいには稼いでいます。