[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 1節 13話 (ざまぁ回) 山岳の民の戦士長 – 最期 (アシュマトの視点)


前書き

青年男性向け – ソフト – R18

第1節 地球の女神 (第1章 勇者の村)

第 13 / 15 話

約 5,800 字 – 12 場面 (各平均 約 480 字)


1/12.「『』を捨てて投降しろ……!」

撤退命令を無視し付近の諸集落から物資を横領しているアシュマト達のもとに山岳の部隊が迫ってきた。

「アシュマト……!武器を捨てて投降しろ……!」

剣を向け合っているなか外交役ザカールは山岳の戦士長アシュマトを見付けると武器を捨てて投降する様に言った。

「ザカール……!兵を下げたのはお前の差し金か……!?」

「違う。私だ」

「師匠……!」

山岳の民の盟主ルガシュがザカールの後ろから現れた。

「私が兵を下げる様に指示を出した」

「どうしてなんだ……!」

「私は山岳の民の為になると思って今まで好戦的なお前に戦(いくさ)を任せてきた」

「そうだ……!俺は民の為、師匠の為この大地を統一しようと……!」

「自分の為ではないのか?」

「違う……!」


2/12.「私がお前に『』を統一せよなどといつ命じた?」

「私がお前に大地を統一せよなどといつ命じた?」

「それは……」

「私は高原やその先の川、諸部族、諸都市、諸集落まで制覇しようなどとは一度も考えていないしお前にそれを命じた覚えも無い」

「しかし……!俺が戦ってきたおかげで領地も増え交易も栄えたじゃないか!」

「交易ならシェイクとザカールのおかげじゃないか」

「シェイクとザカールのおかげだと……?」

「ザカールのおかげで我々への敵意がこれ以上増える事が無かったのだぞ」

「我々に敵意を向けてくるものなど全員殺してしまえば良いじゃないか!」

「お前のその野心に我々全員を巻き込むのか?」

「師匠!敵は残るはシェイクと諸都市だけなんだぞ!」

「なぁアシュマト、シェイクと我々の兵力差はどれくらいだ?」

「兵力差で言えば我々は奴隷を使える分3倍の兵力が有るだろう!」

アシュマトは山岳の全戦士や勢力圏の奴隷戦士達のみならず戦える者を全て動員させればシェイクに余裕で勝てると思っていた。


3/12.「『』の奴らが裏切らない保障がどこに有る?」

「我々に憎しみを抱き力で従えているだけの奴らが裏切らない保障がどこに有る?」

「……そんな奴らは一族郎党皆殺しで良いだろう!」

「一方でシェイクは我々には無い友情と慈愛の精神で諸都市と諸部族を併合している。そんな奴らと戦って我々が本当に勝てると?」

「そんな生ぬるい奴らに百戦錬磨の我々が負ける訳が無い!」

「私に入ってきた情報ではシェイク側の兵力は実に5倍は有るぞ」

「何……?」

「これは確かな情報だ。そしてシェイク側の情報戦を甘く見るな。奴らが本当の情報を我々に与えてくれると?」

「しかし我々のスパイは入り込めているはずだ!」

「そのスパイにわざと偽の情報を持たせていたとしたら?」

「そんなの確証が無いだろう……!」

「そして我々が奴らのスパイに隅々まで情報を把握されているとしたら?」

「そんな事は有りえない!」

アシュマトには信じられない事だった。


4/12.「『』を水増ししているに過ぎない」

「いいか、アシュマト。シェイクにはただでさえ大量の兵力と物資が有るだけでなく周辺からの増援と物資の支援まで望める。しかし我々はただ勢力圏で略奪して奴隷を使って兵力を水増ししているに過ぎない」

「そんな事は分かってるんだよ!だからこそ今の内に叩くんだろうが!このままだと奴らに大地が統一されちまうんだぞ!」

「それでも良いんじゃないか?」

「何だと……?」

「撤退する様提案してきたのはシェイクだ。そのスパイ伝手(づて)でな」

「ならなおさら撤退するべきじゃないだろ!奴らも困っているという証(あかし)じゃないか!」

「お前は大地を統一したい様だがシェイクは無用な血を流したくないそうだ」

「なら降伏すれば良いだろう!」

「やすやすと降伏を受け入れる馬鹿がどこにいる」

ルガシュにはそんな人はいないと思っていた。

「シェイクは元々我々の奴隷だろう!そいつが作った国なら我々のものなはずだ!」

「お前は何を誤解しているのかしらないが我々とシェイクが結んだ契約はシェイク側が我々に対し徴税、交易、外交、戦争などにおいて最大限の協力をする替(か)わりに我々はシェイク側の平和的な降伏を受け入れる、というものだぞ?」

「何だと……!」


5/12.「『』に迷惑を掛けるつもりは無かった。」

「私はそもそも山岳の外の者達に迷惑を掛けるつもりは無かった。私はただ山岳の諸部族が一致団結出来る様にしたかっただけだ」

「師匠は欲が無さ過ぎる!我々には大地を統一出来るだけの力が有るというのに!」

「それは無理だな」

「どうしてだ……!」

「ほら、シェイクがいるだろ?」

「アイツがいるから何だというんだ……!」

「シェイクがいなければお前はゆくゆくはこの大地を統一出来たかもしれない」

「じゃあアイツを殺せば良いじゃないか!」

「何度も殺そうとして一度でも上手くいったか?」

「……」

「お前があのままシェイクに戦を仕掛けていれば想定以上の兵力に圧倒され造反した連中に背後を取られて最悪お前は死んでいたかもしれない」

「シェイクの兵力が多かろうと造反が出ようと戦で負け知らずの俺が負ける訳が無い!」

「はっきり言うぞ。その無謀に民を巻き込むな」

「巻き込んで何が悪い!礎(いしずえ)になれれば本望(ほんもう)だろう!」

「なら戦うしかないな」

ルガシュはアシュマトの説得を諦め戦う決意をし武器を構えた。


6/12.「その様だな『』」

「その様だな師匠」

アシュマトも戦う決意をし武器を構えた。

「コイツの無謀に付き合いたくないものは武器を捨てて投降しろ!」

ルガシュはアシュマトの説得を諦め戦う決意をし戦いたくない者達への声掛けも行った。

「投降した奴は俺が族長になったら一族郎党皆殺しだからな?」

一方でアシュマトは脅迫した。

しかしゾロゾロと投降する者は後を絶たなかった。

そして投降者がいなくなり――。

「来いよ師匠!今の俺を師匠に殺せるものなら殺してみろ!」

――アシュマトはルガシュを挑発した。

「弟子可愛さに止められずにいた私にも責任が有るからな。ここは推して参る!笛を吹け!」

「望むところだ!我らも笛を吹け!」

そしてルガシュは戦の開始を笛で告げさせ両者の笛が吹かれるとアシュマトとルガシュは剣を交えた。


7/12.「『』ばかりで鈍(なま)ってんじゃないか?」

「座ってばかりで鈍(なま)ってんじゃないか?」

「戯(たわ)け。お前こそ大振りばかりで初心を忘れているんじゃないか?」

「戦と稽古はちげぇんだよ……!」

アシュマトとルガシュのガキン!ガキン!とした剣戟(けんげき)が戦場で轟(とどろ)いた。

「俺の剣戟を防ぐので精一杯なんだろ?」

そしてアシュマトはルガシュの老獪(ろうかい)な戦い方に苦戦していたもののいずれは相手の体力が枯渇し勝てると思っていた。

「戯(たわ)け。私はお前の師匠だぞ?弟子のお前に負ける訳が無い」

「言うじゃねぇか!ならもっと俺を楽しませろ!」

アシュマトは生まれ持った身体能力を活かし膂力(りょりょく)のこもった大振りの攻撃を次々に繰り出した。


8/12.「どうしたのだ?辛そうだが」

しかし着実にアシュマトへのダメージは蓄積されていった。

「どうしたのだ?辛そうだが」

「うるせぇ……!」

アシュマトはルガシュに全ての大技をいなされ決定打を欠いており焦っていて一方でルガシュが余裕そうな為苛立(いらだ)っていた。

「初心を思い出せ」

「何だ……?初心って……」

「今教えたらお前が強くなってしまうかもしれないから教えられる訳無いだろ」

「クソー……!」

アシュマトの剣戟はヤケクソになっていた。


9/12.「もう『』が振るえないのか?」

そしてその時はきた。

「もう剣が振るえないのか?アシュマトよ」

「はぁ……はぁ……」

「大振りは無駄が多い。ゆえに躱(かわ)しやすい。それに体力を消費する」

「そしてお前は己(おのれ)が強かったがゆえにフェイントも自分の癖も隠さなくなってしまった」

ルガシュはアシュマトに最後に師匠らしい事をしてやろうと思った。

「だから何だってんだ……!」

アシュマトは力を振り絞って斬り掛かった。

「それにお前は相手を殺す事しか考えていない。ゆえに剣戟しか行わない。私の様に剣以外の攻撃も駆使して相手を削(けず)るべきだった」

「はぁ……はぁ……」

アシュマトはもう言い返す気力も無かった。


10/12.「『』としてやり直させてくれ」

そして――。

「分かった。降参する。新人戦士としてやり直させてくれ」

――アシュマトは降参した。

「……駄目だ」

「は……?」

「剣を取れ」

「おい?どういう事だよ師匠?俺はもう降参してんじゃねぇかよ?」

「お前は戦士としての誇りを忘れたのか?」

「は……?何言ってんだ……?師匠」

アシュマトはルガシュが何を言っているのか分からなかった。

「じゃあ言い方を変えるがお前は敵が降参した時許してきたか?」

「いや、剣を持って戦ってきた時点で降参しようと殺すだろ」

「そういう事だ。分からないか?」

ルガシュはアシュマトに戦士としての誇りを取り戻してほしかった。


11/12.「俺は師匠と同じ『』だろ……?」

「は……?俺は師匠と同じ山岳の民だろ……?」

「お前はさっき威勢良く殺せるものなら殺してみろと言っていただろう?」

「冗談に決まってんだろ!」

「お前は投降した者達も一族郎党皆殺しにすると言っていたのにか?」

「冗談だって!戦は戦士達を鼓舞(こぶ)しないといけねぇだろ?」

「……まだ分からないかアシュマトよ。私がここに来たのもお前を戦士として最期を迎えられる様にする為だぞ?」

「冗談頼むぜ師匠……」

「冗談ではない。本気だ。もし降参するならこの場でお前を叩き斬る」

ルガシュはアシュマトに戦士として最期を迎えてほしかった。

そして――。

「冗談頼むぜ……師匠……!」

――アシュマトは剣を手に持つとルガシュが油断している隙を狙って襲い掛かったが――。

「昔追い詰められたお前もそんな事をしていたな」

――ルガシュは予見しておりあっさりといなしたのだった。

*ルガシュはアシュマトが剣を取ったものの卑怯な手で攻撃してきた為その様な最期を迎えさせたくなかった為いなしただけに留(とど)めた。*


12/12.「許してくれ『』……!」

そして四つん這いになったアシュマトは――。

「許してくれ師匠……!どうかこの通りだ……!」

――戦士の誇りを忘れルガシュに土下座して謝罪した。

「それが戦士としての最期で良いのか?」

「頼むよ師匠……!俺は死にたくねぇよ……!」

ルガシュは死に怯(おび)え鼻水を垂らして号泣しながら必死に命乞いした。

「お前はそうやって命乞いしてきた者達を殺してきたのだろう?」

「でも頼むよ師匠……俺を殺さないでくれ……まだ死にたくねぇ……」

「最後に言い残したい事は有るか?」

「有るよ……!ルガシュ師匠……弟子の最後の頼みだよ……助けてくれよ……俺絶対真人間(まにんげん)になるからよ……」

そしてルガシュは命乞いししがみついてくるアシュマトをこれ以上見ていられなかった為もう殺す事を決意し――。

「弟子の不始末は師匠の責任だ。お前の血肉が大地の糧(かて)にならんことを」

――アシュマトに剣を突き刺した。

そしてアシュマトは力尽きその場にバタン!と倒れた。

かくして山岳の民の戦士長アシュマトは最期を迎えた。


後書き

アシュマトには幼い頃から武力で世界を制覇するという野心が有り当時から最強だったルガシュに何とか弟子入りして剣術を教わっていたという過去が有ります。

そして強くなりたかったアシュマトは積極的にルガシュのもとに通っていた為ルガシュもアシュマトを息子の様に可愛がっていたという感じです。

そしてアシュマトもまたルガシュを父親の様に思っており最後はヘマをしでかしても命までは取らずに助けてくれるだろう、と思っていました。

またルガシュはシェイクの国と国交を結び自分達に侵略という危機が訪れた場合はシェイクの国に下る事を条件に助けてもらうというカードも用意しておりその事をアシュマトに話すとアシュマトが激昂(げきこう)して火事場の馬鹿力を発揮されかねないと思って黙っていました。

そしてこれは余談ですが若かりし頃のルガシュは勇者候補として1号から接触を受けていたのですが「王国建国など私には過ぎた野望だがもし貴方が私と結婚してくれるのなら引き受けても良いですよ?」と口説き見事にフラれています(笑)