[R18] 女性を愛する天才の俺様、異世界を救う (JP) – 1章 1節 5話 地球の女神 出会い(アン視点)
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R18
第1節 地球の女神(第1章 勇者の村)
第 5 / 12 話
<遥か昔の事>
これは遥か昔の事。
「いつになったら私の星の文明レベルは前に進むのよ!」
私は天使達との会議中につい声を荒げてしまっているわ!
だってちっとも文明が発展しないんだもの!
このままじゃまた私がママに叱られちゃうのよ!
「その時期につきましては私共にはお答えいたしかねます」
何で答えられないのよ1号!
<何かアイデアを出してちょうだい!>
「1号!何かアイデアを出してちょうだい!」
(女神様は相変わらず人使いが荒いです……)
「僭越ながら申し上げさせていただきますが大河の河口など大河のほとりにて人々を集結させてみてはいかがでしょうか?」
よく分かんないけどそれは良いかもしれないわ!
「良いわ!やってみてちょうだい!」
1号に一任するわ!
「かしこまりました。しかし女神様、誰に人々を牽引させましょうか?」
ん?
「え、何で?」
(はぁ……)
<誰を勇者に任命いたしますか?>
「『誰を勇者に任命いたしますか?』という事でございます」
あー!勇者を誰にするか問題ね!
「その辺に良さそうなの転がってないの?」
(転がっている訳が無いでしょう……)
「どの様な方を勇者に任命いたしますか?」
(我々天使は勇者を探すに当たり女神様のご意向に則らなければなりませんからね)
そうね~~~。
<最高の人材が良いわ!>
もちろん最高の人材が良いわ!
「そうね~~。当然優しくって、頭が良くって、私の話し相手になってくれて、面白い事が言えて私を楽しませてくれて、家事もやってくれて、努力家で、行動力があって、絶対に私を裏切らない お・と・こ が良いわ!」
これじゃ足りないくらいだけど!
とりあえずはこのくらいにしておいてやるわ!えっへん!
<本当に見つけられるのか?>
「1号、そんな人材本当に見つけられるのか?」
2号が1号に耳打ちした。
「見つけ出すしかないでしょう……私達は女神様に仕える天使なのですから。女神様の決定は絶対です」
(私達に拒否権はございません)
2号が1号に耳打ちし返した。
「で、でもよ……」
(気持ちは分かりますが……)
「とりあえず女神様の任にあたってみましょう。それで駄目でしたら女神様にその事をご報告し条件を緩和していただくという事で」
(先ずはやってみる事でしょう)
「お、おう……」
1号と2号は女神様の要望通りの勇者を探す事を決意した。
「それでは女神様、天使一同女神様のご希望通りの勇者を探しに行ってまいります」
1号が頭を下げると他の天使達も頭を下げた。
<早く見つけ出すのよ!>
「ええ!行ってらっしゃい!早く見つけ出すのよ!出来れば今日中に!」
そして私は任務に向かう天使達を見送ってあげたわ!
かくして天使達は女神の要望に適った勇者候補を探す為地上へと繰り出した。
<見つけたか?>
そして地上に繰り出した2号は――。
「1号!良さそうな奴は見つけたか?」
――困っている様子で1号に声を掛けた。
「いえ、まだ見つかっていません……」
(此度の女神様の任は非常に難題です)
<ほんと素晴らしい女神様>
「だよな~。あたしらの女神様はあたしらの事を1号2号って番号でしか呼んでくれねぇし、ほんと素晴らしい女神様だよなぁ?」
2号は両手を頭の後ろで組みながら皮肉を言った。
「2号、この会話は女神様に聴かれているかもしれませんよ!ですから絶対に女神様の機嫌を害しかねない事は言ってはいけません」
(気持ちは分かりますがここはグッと堪えなければなりませんよ2号。私達は女神様の天使なのですから)
1号は女神の機嫌が良い方が都合が良かった。
というのも1号は自分が仕えている女神の機嫌が悪くなってしまったら大変な事になりかねないと考えていたのだ。
神からすれば自身に仕えている天使を解雇する事など容易くその上1号達が仕えている女神は感情で動いている為一時の激情に駆られたりして何を仕出かすか分からなかった。
まぁ1号もどの天使も自分が仕えている女神がその様な事をするはずが無いと信じてはいたのだが万が一という事を1号は懸念していたのだ。
「分かってるよ~だ!べ~~!」
(女神様はあたしらの苦労なんてちっとも分かってねーのさ!)
1号と2号がそんな会話をしながら歩いていると突然輩の男達から話し掛けられた。
<嬢ちゃん達別嬪だねぇ!>
「嬢ちゃん達別嬪だねぇ!ちょっと俺達と遊んでかねぇか?」
1号と2号は輩達に囲まれてしまい輩達の品定めをしているかの様に舐め回す様ないやらしい視線に晒された。
そして中には舌なめずりする者もいた。
「どいてください。私達は忙しいのです」
(はぁ……またこの手の輩ですか……)
1号は美人な為この様な事は今までに幾度も経験しており喧嘩っ早そうな見た目をしている2号でさえ1号程ではなくとも何度も経験していた。
まぁこの時代は力こそ正義、負ければ奴隷、和を乱せば村八分、村を追い出された者達は都市部へ移住するか盗賊といった悪党になるというのが相場だった。
「そうだよ!あたしらは忙しいんだ!そこをどきな!」
(今ただでさえいらいらしてるってのによ!)
2号が輩達に堂々と言い返した。
<威勢の良い嬢ちゃん達だぜ>
「威勢の良い嬢ちゃん達だぜ。おめぇら!武器出せ!」
輩達はそれぞれ長剣や短剣を取り出した。
「何の真似ですか?」
(この手の面倒事には毎度呆れてしまいます……)
「面白れぇ。1号、こいつらあたしらとやる気だぜ」
(こりゃこいつらぼこってストレス発散するのも悪くねーかもな!)
2号は握り拳をもう片方の手の平に押し当てごきごきと鳴らすのを両手でした。
「ねぇちゃん達これを見ても分からねぇのか?」
(俺は威勢の良い女は嫌いじゃねぇ。嬲り甲斐があるからなぁ)
「殺されたくなければ言う事を聞けと?」
(私は脅しには屈しません)
「お?あたしらと喧嘩するってお前ら本気か?」
(最強のあたしらに喧嘩を売るってこいつら本気かよ)
「物分かりの良い嬢ちゃんじゃねぇか。そうだぜ。殺されたくなけりゃ素直に俺達についてこい。もちろん本気だ」
輩達は1号と2号に剣を突き付け従属を迫った。
<どうする?1号>
「どうする?1号。こいつら本気だぜ」
2号が1号にどうするか尋ねた。
「仕方が有りません。やりましょう。半数はお願いします。くれぐれも手加減を忘れずに」
(私が心配なのはむしろこの方々の方です……。何故なら2号はついついやり過ぎてしまうきらいがありますので……)
「お頭!こいつら俺らとやる気だぜ?しかも手加減してくれるんだとよ!」
輩達はへっへっへっと笑った。
「やっぱり物分かりがわりぃ女共だったか。これは最後通告だ。俺達に従え。さもなくばこの場で犯して殺す」
輩達の頭がそう言うと笑っていた輩達の表情が一転しまじになった。
「1号!あたしもう我慢できねーよ!殴る許可をくれ!」
2号は今にも喧嘩したそうにうずうずとしていた。
「こちらから仕掛けてはいけません!私達は常に正当防衛でなければいけないのです」
(ここは我慢です、2号)
「だそうだ、お頭さんよ。あたしらはあんたらの命令を聞く気はねぇしさっさとそこをどきやがれ!」
<ぶち切れ>
2号がそう言うと輩達の頭は完全にぶち切れ――。
「野郎共!こいつらやっちまえ!半殺しにして無理矢理連れ去るぞ!」
――という様に手下達に号令を掛けると――。
「へい!」
――手下達は頭の号令に応じ一斉に1号と2号に襲い掛かった。
「あんたらその程度か!?」
1号と2号は受け身から入り武器も使わず拳術と足技で輩達の攻撃をいなしていった。
「こ、こいつら一体何もんなんだ!」
輩達の手下の一人がうろたえた。
「ちょっと心得がある程度のただの女共だろ!何も怖がるこたぁねぇ!やっちまえ!」
頭は既に勝利を確信しており素直に言う事を聞かなかった1号と2号をどう嬲るかという事を考えていた。
「へい!」
輩達のかしらがそう言うと意気消沈しかけていた手下達が威勢を取り戻し再び1号と2号に襲い掛かった。
「1号、かわしてるだけじゃいつまで経っても終わらねぇぞ!こいつらを戦闘不能にする許可をくれ!」
輩達の力量が分からない為1号と2号は本来の力を出さずに輩達の攻撃をかわしながら軽く反撃する程度に留めていた。
1号は天使達のリーダーであり、2号もそんな1号の許可無しに大胆な行動に出る事が出来なかった。
<許可します>
「仕方が有りません。許可します。しかしくれぐれも回復可能の範囲内に留めてください」
(私達天使が例え相手が輩であったとしても女神様の許可無しに人命を奪ってはいけないのです)
「はいよ!背中は頼んだよ 1号!」
2号はファイティングポーズを取ったまま1号に背中を預けた。
「私の背中も頼みましたよ、2号」
1号も2号に背中を預けおそ追い掛かってきた輩達を次々に戦闘不能にしていった。
「残るはあんただけだな、お頭さんよ」
そしてついにその場に立っている敵は頭だけになった。
「このば、化け物共!」
(化け物ですか……心に刺さる言葉ですね……)
「私達を力付くで攫おうとしてた連中が何言ってやがんだ!」
(あたしらを化け物呼ばわりしやがったこいつをどう痛めつけてやろうかなぁ!)
「うるせー!」
すると輩達の頭が剣を振るって突撃してきたが――。
「お前がな!」
――2号が繰り出した顔面パンチにより一撃で気絶しその場に倒れた。
<威勢の割には>
「威勢の割には弱かったな……」
2号は気絶した頭を見下ろした。
「貴方が強過ぎたのです」
1号は頭脳を駆使した戦い方を得意としている一方で純粋な腕力といったパワーで言えば日々猛烈に鍛えている2号の方が圧倒的に強かった。
しかしその序列で言っても戦いとは総合力である為やはり1号がリーダーとしても2号よりも強かった。
「だよなぁ……」
2号は自分と互角にやり合える敵や劣勢といった場面に中々巡り合えておらず物足りなさを感じていた。
「それでは後片付けをしましょうか」
1号は後片付けに取り掛かった。
「おう!あたしも手伝うぜ!!」
2号も1号の後片付けを手伝い始めた。
かくして輩達は勇者候補の調査に当たっていた時に絡んできた輩達を返り討ちにし武器を没収し拘束するとその判断を現地民達に委ねた。
<結果を報告>
そして天使達は調査の結果を報告する為女神の元へと集まった。
「女神様、以上の様な事がございました」
1号達は女神に報告した。
「じゃあ収穫はゼロってこと!?」
勇者候補すら見つかってないってどういう事なのよ!
「はい」
見つかるまで探し続けなさいよ!
「貴方達!見つかるまで探し続けるのよ!それまで帰ってこなくていいわ!いいわね?」
もっと頑張りなさいよ!
「そ、そんな~~。1号先輩……」
2号が1号に視線を向けて小声でそう言いながら狼狽えていた。
「皆、私達は女神様に仕える天使です。ですから女神様の為に女神様がおっしゃられた通りに頑張りましょう」
(私にはこれ以外に言える事がございません……)
「はい……」
天使達は元気が出ないながらも1号に励まされた様にして返事した。
かくして天使達は連日様に勇者候補を探し続けどんどんと疲労困憊になっていった。
<世界神>
そして世界神の元へと報告が上がった。
「世界神様、太陽系第3惑星の天使達とのヒアリングで判明したのですがその星の天使達が女神様の命令に四苦八苦しているそうです」
(またあの子ね……)
「今度は何かしら?」
(また天使達を困らせちゃって……今度は何をやらかしているのかしら)
「報告によれば文明を発展させるにあたり、星神様が要望なさった勇者の条件が非常に厳しく調査が難航しているとの事です」
(勇者ねぇ。文明は勇者に頼らずに発展させるに越した事は無いのだけどねぇ)
<その条件というのは>
「で、その条件というのは何なのかしら?」
(あの子の事だからこれまたとんでもない条件を付けていそうね……)
「それが『優しく、頭が良く、話し相手になり、面白い事が言えて楽しませてくれて、努力家で、行動力があり、絶対に裏切らない男』だそうです」
(あちゃー……そんな男中々いる訳が無いじゃない)
「いたらわたくしに紹介してほしいくらいよ」
(悩ましい事ばっかりなのにあの子までまた面倒事を持ってくるなんて)
「世界神様、心の声が……」
(聴こえています……)
「あ……!これは違うの……!最近忙しくてついぼやいてしまったのよ……!これはわたくしに限った事ではなく皆がつい思ってしまう事でしょう……?あの子ったらもう……!ふふふふふふ……」
(世界神であるこのわたくしとした事が!気を抜いてはいけませんよ!)
(世界神様なら神族の中から好条件の男性神を選ぶ事などより取り見取りで容易いでしょうに)
「はい、分かっております」
(世界神様を癒せる殿方との出会いが有れば良いのですが……)
<それでは行きましょうか>
「それでは行きましょうか」
世界神は片付けると執務椅子から立ち上がった。
「どちらへでしょうか?」
世界神に仕える天使は自分が仕えている世界神がどこへ出掛けようとしているのか分からなかった。
「もちろん決まっているじゃない。あの子の星よ!」
(え!?)
世界神がわざわざ一星神の問題などで現地へ出向く事は非常に珍しかった為世界神に仕える天使は驚いてしまった。
かくして世界神とその天使は共に地球の第三惑星の女神の亜空間へとテレポートしていった。
<いつになったら見つかるのよ!>
「もう!いつになったら見つかるのよ!ほんと役立たずばっかりね!」
女神は物事が自分の思い通りにいかず苛立っていた。
早く文明を発展させて色々贅沢したいのに!
女神の星は長らく文明が発展せずその女神の我がままで一匹狼な性格が災いし友達もおらず物々交換する相手もいない為亜空間では不便で美味しい食べ物も娯楽も無く退屈な生活が続いておりその事に飽き飽きしていた。
<役立たずは誰ですか>
「役立たずは誰ですか」
すると突然世界神とその天使が女神が居る亜空間にテレポートしてきた。
「マ、ママ!」
女神と世界神は直接の血の繋がりは無いがそれぞれ宇宙と星を司る神であり気持ち的には母子の関係なのだ。
「自分に仕える天使を大切にしなさい」
言われなくても分かってるわよ!
「十分大切にしてるわよ!」
(はぁ……どうしてこの子はこんなに我儘に育ってしまったのでしょうか……)
<聞きましたよ>
「聞きましたよ。貴方の天使達が貴方が探し求める無理難題な勇者を探し続けているそうですね」
一体誰がママに告げ口したのよ!
(このままこの子が犯人捜しを始めてしまったり自分の天使達に対して疑心暗鬼になられても困りますからね。端的に事実を話すとしましょうか)
「告げ口ではありません。定期的に行っているわたくしの天使と各星神の天使達とのヒアリングで分かった事です」
何よそれ!
告げ口と一緒じゃない!
「あんた達いつの間にママの天使達とそんな事してたのよ!これは裏切りよ!う・ら・ぎ・り!」
女神は自分に仕えている天使達がその様な事をしている事を知らなかったのではなく忘れていた。
(はぁ……わたくしも苦労が絶えないわ……)
「とりあえず理不尽な理由で自分の天使達に怒るのはお止めなさい」
ぐぬぬぬ……。
「わ、分かったわよ!で、私に何の用よ!」
私は忙しいんだから邪魔しないでよ!
<どんな勇者を>
「貴方、どんな勇者を探しているのでしたっけ」
(先ずはこの子に自分の理不尽さを自覚してもらわなければ……)
「そりゃもちろん優しくって~頭が良くって~私の話し相手になってくれて~面白い事いっぱい言って私を楽しませてくれて~家事もやってくれて~私が困った時は必ず助けてくれて~私の言う事なら何でも聞いてくれて~努力家で~行動力があって~絶対に私を裏切らない お・と・こ!」
「い、1号……女神様の要望が増えていないか……?」
2号が呆れる様にうろたえた。
(どうしてこの子はこんなにもお馬鹿に育ってしまったのでしょうか……)
「そんな勇者がいる訳が無いでしょうがあああ!この大馬鹿もの~~~~!」
急に何叫んでるのよ!
女神は両耳を手で塞いで耐えた。
「ママ!うるさいわよ!叫ぶなら家の外で叫んでちょうだい!」
どうして私がママに叱られないといけないのよ!
「家の外からどう貴方を叱れっていうのよこの大馬鹿もの~~~~!」
もう叫ばないでよ!
「分かったから!もう叫ばないでよ!」
私は大声で叱られるのが嫌いなのよ!
<学校で習いましたよね?>
「わたくしだって大声で叱るのは大変なのですよ……まぁそれは一先ず置いておきましょう。――貴方も学校で習いましたよね?その様な勇者はとても希少だという事を」
あー、先生が何かそんな事言ってた様な……。
あんまり覚えてないけど!
「貴方って子は……まぁ叱ってばかりでは貴方の為にもならないでしょうから、ここはわたくしが大人になります。――貴方も学校で習った事と思いますが、その様な高ランクの勇者の魂はとても希少で入手するのはとても困難なのですよ」
希少がどうとか困難がどうとか私には関係の無い事よ!
「そんな事私は知ったこっちゃないわよ!私は絵本に出てくる様な勇者が欲しいの!」
(はぁ……まぁここまでくるとこの性格も一種の取り得なのでしょうね……)
「見てご覧なさい。貴方の天使達が疲労困憊している様子を」
1号をはじめ女神の天使達は皆表情や目の下にクマが有る様子からして疲労困憊しているのが誰の目にも明らかだった。
「だから何よ……」
<一肌脱ぐとしましょうか>
(はぁ……まぁこの様子ではこの子はその方針を変えないでしょうし、この子の天使達が潰されてしまうのも時間の問題でしょう……でしたらここはわたくしが一肌脱ぐとしましょうか)
「高ランクの勇者なんてクエストが発生していないどころかろくに魂も取引していない貴方の星にいるとは思えませんが……ここは特別にわたくしの水晶で探してあげるとしましょう。優秀な者が見つかるといいのですが……」
ママがそう言うと側にいたママに仕える天使がぱちん!と指を鳴らすと収納空間から水晶を取り出したわ!
「世界神様、こちらを」
世界神に仕える天使が世界神に取り出した水晶を手渡そうとした。
「あら、ありがとう」
世界神は自分の天使から水晶を受け取った。
ママが私達の代わりに勇者を探してくれるなんて超ラッキーじゃない!
そして女神の天使達もこの過酷な仕事からやっと解放されると安堵の表情を浮かべていた。
<この星に優秀な勇者がいたら良いのですが……>
「この星に非常に優秀な勇者の魂を持つ者がいるとはとても思えませんが……我儘なこの子に耐え得るそれなりに優秀な勇者がいたら良いのですが……」
世界神は魂の取引すらまだしていない女神の星に優秀な勇者の魂を持つ者がいる事を全く期待しておらずその様な事を思いながらも水晶をテーブルに置き探し出す勇者の条件を思い浮かべ起動するとその水晶は光りしばらくしてから一人の人物が映った。
(え……?)
そして世界神はその事に驚き思考が停止しかけた。
「ママ、どうしたの?」
女神もその世界神の様子に驚き心配する様に尋ねた。
「いえ……大丈夫よ……」
(見間違いかしら……もう一度……)
世界神は驚きのあまり絶句し目元をこすりもう一度確認した。
<高ランクの勇者候補が>
「いえ……その……まだ実績は無いけれど貴方の星にもいたわよ。高ランクの勇者候補が」
(ありえないわ……!どうして辺鄙なこの子の星に魔王クエスト級……!いえ、楽園級の勇者がいるのよ……!)
魔法が無くヒューマン単一のこの世界では魔力や筋力が発達しないのは仕方の無い事なのだがそれ以外の人格や頭脳といったステータスがほぼカンストしそういう人材にありがちな副作用、要するに高知能の代償である自閉症やADHDといった症状が一切無く行動力や期待値までフルステータスの人物が一人だけいた。
「え!超超ラッキーじゃない!それもこれも私の素晴らしい統治能力のおかげね……!」
女神は自画自賛しているがその自惚れに突っ込みを入れられない程女神以外の皆が驚きのあまり絶句してしまっていた。
ちなみに女神の天使達は全く教わっていない為よく分からないが「世界神様が驚いておられるのならこれは驚くべき事なのだろう」という様に驚き絶句しているのも女神と世界神の会話に割って入る事が出来ずに黙っているだけだった。
「貴方が幸運、それも非常に幸運な事は事実ですが、勇者の誕生は……全く貴方の功績とは言えません。それより……彼は荒野に一人でいますね。場所はここです。いずれにせよ急いだ方が良いでしょう。この者が命を落とせばこの高ランクの魂をもう一度この星で使えるとは限りませんから」
(希少な高ランクの魂は需要が高く危険な星へ優先的に投入していますからね……まぁ一度様子見でわたくしの監視下で運用する事になると思いますが)
<皆行ってきてちょう……>
「分かったわ!じゃあ皆行ってきてちょう……」
そして女神がいつもの様に天使達に命令を下そうとすると――。
「また天使達に行かせるつもり?」
――世界神に咎められてしまった。
私はいつも通りに天使達に命令し様としていただけなのにママに凄まれてしまったわ……!
じゃ、どうしたら……わ、分かったわよ!私が行けばいいんでしょ?
「分かったわよ!私が行ってくるわよ!」
(その調子よ)
「よく言えました」
ママが微笑んでくれたけど、嬉しい様なめんどくさい様な……だわ!!!!
「じゃ、私がこの男をちょちょいのちょいで篭絡してくるから貴方達はここで待っててちょうだい!」
女神はそう言うとあっという間に現地へテレポートしていった。
<申し上げてもよろしいでしょうか?>
「世界神様、僭越ながら女神様に仕える天使である私が申し上げてもよろしいでしょうか?」
1号が女神の事を心配し口を開いた。
「良いわよ、何かしら?」
(あの子の事が心配なのかしら)
「女神様をお一人で行かせてしまってよろしかったのでしょうか?」
(自分の天使に心配してもらえるなんてあの子は良い天使を持ったわね)
世界神はその事が自分の事の様に嬉しかった。
「ええ、これで良いのよ。――これはあの子にとって良い経験になると思うわ。――神々にとって自分の星を平和に導く為に勇者を任命する事は成年儀礼ですから」
(そ、そうだったのですか……)
世界神の言葉を聞いた女神に仕える天使達は皆驚いた。
「なぁ1号!あたしは初耳だぞ!勇者がどうとかってそんなに大層な事だったのか?」
2号が1号に耳打ちした。
「私も初めて聞きました。成年儀礼だったとは驚きです」
(はぁ……あの子は天使達に教えていなかったのね……もしかしたら自分でも忘れているんじゃないかしら……)
世界神が抱いた懸念は正しかった。
<見届けてあげましょう>
「貴方達は知らなかったのですね。全くあの子ったら……良いでしょう、わたくしが教えてさしあげます。その前に一先ず皆でくつろいでモニターであの子の雄姿を見届けてあげましょう」
世界神が女神の天使達に勇者について教える事を決意しそう言うと世界神に仕える天使が再びぱちん!と指を鳴らせば人数分のソファやその正面に丸テーブル、そのテーブルの上にお菓子や飲み物、そして壁に魔力のモニターがプライベートシアターの如く現れた。
そして天使達はその凄さに圧倒されていた。
「さぁ、皆で楽しみましょう♪遠慮はしないで!ほら貴方もこっちよ!」
世界神が真ん中に座るといつも控え気味な自分に仕える天使も座る様にと促し――。
「は、はい……!」
――皆畏れ多く感じながらもそう言って座っていった。
(それにしてもあの人に似ている彼は一体……)
世界神はそう心の中で思いながらモニターに映っている男を見つめた。
かくしてアンは勇者候補の青年に会いに行き女神や天使達はその雄姿を見届ける事となった。
<出会い>
そして女神は青年の正面にテレポートした。
「わ、わぁっ!て、敵襲!?」
突然光に包まれた存在が目の前に現れた為座っていた青年は驚き後ろに倒れてしまった。
その様子に青年が手綱を握っている馬もひひひーん!と驚き前足を上げてしまうが馬は獣の本能で聖なる力を感じ取っており恐怖心は無く女神に驚いた訳ではなかった。
「私はこの星の女神よ!」
女神は自信満々に自己紹介した。
かくして女神と勇者候補の青年は出会った。
後書き
1号、2号呼びは流石に愛が足りていないのではないかと思ってしまいますが、天使がたくさんいて全員に名前を付けるのが大変(面倒寄り)だったアンの奇策により名前として番号が与えられたという感じです。
ですから決して彼女達を「物」として見ている訳ではないはず……です……(笑)