[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 25話 魔法の世界の女神 – 告白 (カトラスの視点)

前書き

青年男性向け – ソフト – R18

第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)

第 25 / 28 話

約 6,700 字 – 7 場面 (各平均 約 950 字)

1/7.「あたしは『』」

あたしは魔法の世界の世界神カトラス。

オークションではアベルを落札出来たと思ってたのにアーベルの野郎にまんまと1本食わされちまったぜ。

まさか失踪(しっそう)しやがるとはな……だがアベルの魂も行方不明になってたからあいつが持ち逃げしたのは間違いねぇとは思ってた。

しかし失踪されて何(なん)も手掛かり無しかと思った時は絶望しかけたがあたしは付いてた。

「ベアトリス様の天使のリーズにゃ!」

あの「にゃ」が口癖の天使を探しゃあアベルに辿り着けると思ったが正解だった。

あのクソ野郎もいたしな。

「てめぇ、あたしら騙して逃げやがったな……」

カトラスはアーベルに殺気(さっき)を放ちながら話し掛けた。

「か、カトラス様……!こ、これは違うんです……!」

アーベルはなぜここがバレたのかと焦(あせ)りながら否定した。

「何がちげぇんだ?お~ん?」

カトラスはアーベルの胸倉(むなぐら)を掴(つか)んだ。

*カトラスは本当は腹パンをお見舞いしたいところだったのだがアベルの件で傷心(しょうしん)していたしアベルの「暴力はいけないよ」という言葉が脳裏(のうり)をよぎった為出来ず胸倉掴(づか)みに切り替えている。*

「あの魂が絶対に欲しかったんです……!すみませんでした……!」

アーベルは本音を明かして謝罪した。

「そうかよ。で、あれの正体は分かってるのか?」

カトラスはアーベルが言った事は本音だと思ったしアーベルの気持ちも分かるしで手を離した。

「はい……。おそらく『アベル』かと。名前テストで反応が有りましたし」

アーベルはジェイドに対し「名前テスト」を実施し反応を見た限りでは確信とまではいかなくてもおおよそそうだとは思っていた。

*「名前テスト」とは「記憶テスト」の様なもので「この名前に心当たりは有るか?」や「私の名前は何だと思う?」という様な質問で相手に名前を当てさせたり考えさせる事でその者の前世を判定するテストの事。*

2/7.「で、何がしたかったんだよ」

「そうかよ。で、おめぇはアベルと何がしたかったんだよ」

カトラスはアーベルがアベルの魂を手に入れて何がしたかったのかを訊いた。

「私はアベルの活躍がこの目で見たかったんです……!」

それはリーズにも言ったアーベルの本音だった。

「まぁおめぇは好きが興(きょう)じて名前もアベルをもじったやつ付けたんだろ?」

カトラスはアーベルのアベルへの思いを知りたかった。

「そうです……!」

アーベルは即答した。

「まぁアベルの活躍が見てぇだけならそれでいい。てかおめぇ、女か?」

カトラスはアーベルが女なのではないかと思った。

「はい……」

アーベルは自身の性別も明かした。

「じゃあ何でおめぇ男装してんだよ……」

カトラスはアーベルが男装している理由が分からなかった。

「私、アベルの様な勇者になりたくて……それで……」

アーベルは勇者願望が有ったのだが自身の性別は女であり人々からも「女神」という印象が強くアベルの様な勇者になりたいのになれないという葛藤(かっとう)を抱えていたのだった。

「ま、あたしも気持ちは分かる。女だと舐められたり性的な目で見られたりするしな」

カトラスもアーベルの気持ちは理解出来た。

「そうなんです……」

アーベルはもうカトラスに隠し事をするつもりは無かった。

「ま、とりあえずあたしとおめぇで共同戦線といこうぜ。お互いにやりたい事をする。協力し合う。邪魔をしない。でどうだ?」

カトラスはアーベルに共同戦線を提案した。

「分かりました。宜しくお願いします」

アーベルはカトラス相手にそもそも拒否する事など出来ないしこの上無く良い申し出だと思っていて拒否する必要も無かった。

「おっし」

カトラスはアーベルが素直に従(したが)ってくれてほっとした。

かくしてカトラスはアーベルを見付けベアトリスの星での協力者を得た。

3/7.「これから『』に当たらせていただきます」

そしてあたしは既に魔将になっていたアーベルに推薦してもらって自分も同じく魔将にしてもらった。

「新たに魔将になった者です。これからジェイド様の対魔物戦の指導に当たらせていただきます。宜しくお願い申し上げます」

カトラスはジェイドに対し片膝を突き自己紹介した。

「ご丁寧にありがとうございます。顔をお上げください。こちらこそ宜しくお願い申し上げます」

幼きジェイドは年上の部下に対しても丁寧に接した。

もちろんあたしはジェイドに記憶テストをした。

「ジェイド様、私の名前は何だと思いますか?」

カトラスはジェイドに見覚えが有るなら分かるだろうという名前のクイズを出した。

するとジェイドは悩んでいたが――。

「これを見てください」

――カトラスは愛剣(あいけん)であるカトラスを見せると――。

「貴方のお名前は……『カトラス』だったりしますか?」

――カトラスの名前を言い当てた。

「!――どうしてその名を?」

カトラスは剣の種類で適当に言い当てられた線を潰しておきたかった。

「貴方のお顔と剣で考えたらその様に思いました。しかし口調が納得いっていません」

ジェイドはカトラスの名前はなんとなくで根拠(こんきょ)も無いが「カトラス」なのではないかと思ったのだが口調に違和感が有った。

「じゃあこれでどうだ?これがあたしの愛剣。で、好きな言葉は『皆殺し』!」

カトラスはジェイドの前で自分の素を出してみた。

「おー。なんだかしっくりきます。あとその口調が普段の口調でしたらこれからもその口調でお願いします」

ジェイドはカトラスの口調にしっくりきてカトラスに慣れていないかもしれない敬語を使うという我慢をしてほしくなかった為それがいつもの口調ならその口調で接してほしかった。

「おし!よく言った!――」

カトラスは自分らしくない敬語の使用をやめさせてくれて心底(しんそこ)ほっとした。

こいつは間違いねぇ……!アベルだ……!

カトラスはジェイドに名前を言い当てられた事からしてもこの気遣いからしても中身は間違い無くアベルだと思った。

「それじゃあ殿下もあたしにはタメ口で頼むぜ」

カトラスもジェイドにはタメ口で会話してほしかった。

「分かったよ。改めてこれからもよろしくね」

ジェイドはタメ口に直すとカトラスに対して改めて挨拶した。

「おうよ!」

カトラスはジェイドとタメ口で会話出来る様になって心底(しんそこ)幸せだった。

かくしてカトラスはジェイドの中身はアベルだと確信し心置き無くジェイドに素で接していく事になった。

*本人に対して「アベル」かどうかを訊くのは強烈な記憶の呼び覚ましや前世の記憶を完全に思い出してしまうというイレギュラーを生んでしまいかねない為推奨(すいしょう)されていない。*

*また記憶テストを行う際は質問者と対象に面識が有る場合は質問者は自分の名前を名前クイズで相手に出題するケースが多い。*

4/7.「本当に『』だけで大丈夫なのかい?」

そしてカトラス達はジェイドの対魔物訓練でダンジョンに赴(おもむ)いた。

「カトラス、ダンジョンへは本当に僕達2人だけで大丈夫なのかい?」

ジェイドはカトラスが護衛も誰も連れてこなかった為さすがにダンジョンに入る前にもう一度訊いた。

もちろんカトラスが連れの者を連れてこなかったのはお忍びでのダンジョン探索だったというのも有るが何よりもジェイドと2人きりになりたかったからだ。

「あったりめぇだろ!あたしらが魔物にやられる玉(たま)かよ!」

カトラスはこの程度のダンジョンは余裕だと思っていたのだが――。

「そ、そうなんだね……」

――ジェイドは初めてのダンジョン探索の為心配だった。

「心配すんじゃねぇ!ほら行くぞジェイド!あたしがバシバシ鍛(きた)えてやっからよ!」

カトラスはもちろん何か問題が有れば自分が魔物を仕留めるつもりだったしジェイドの中身がアベルだと分かっているから環境さえ用意してやればぐんぐん成長していくと思っていた。

「わ、分かったよカトラス……」

ジェイドはカトラスの言葉を信じダンジョンへと入っていった。

そしてカトラスは――。

「探知するのに探知魔法の『サーチ』を使うのも良いが探知魔法の行使は逆探知されちまう可能性が有る。低階層や雑魚が相手なら気にする事はねぇが。油断はしねぇに越した事はねぇ。だから魔物の気配を、奴らの純粋な殺気を感じろ」

――ジェイドに探知魔法が便利な反面逆探知されてしまう危険性が有る事やダンジョンや魔物戦では気配や殺気を感じる事が大事だと教えた。

「分かったよ。探知魔法に頼り切りにはならないし油断もしないし魔物の気配や殺気を感じ取れる様に頑張るよ」

ジェイドはカトラスの教えの通り魔物の気配や殺気に気を配る様になった。

「良いぜ、その調子だ。それと落ちてる情報も見落とすんじゃねぇ。足跡や臭(にお)い、聴こえてきた鳴き声とかな。全てが大事な情報だ」

カトラスは情報を見落とさない様にと指導した。

「分かったよ。で、この足跡は確か……四足歩行で足跡の大きさからして狼系の魔物の群れかなぁ」

ジェイドは事前に行くダンジョンの魔物図鑑を読破していた為その魔物の足跡がどの魔物によるものなのかは概(おおむ)ね察しが付いていた。

5/7.「まぁ『』かもしれねぇけどな!」

「まぁ犬っころかもしれねぇけどな!」

カトラスは事前に情報を収集するなんて事はしない為結構適当だった。

「そうだね」

実際犬系の魔物の群れも現れる様なダンジョンだった為納得した。

「待てジェイド。この先にトラップが有るぞ。分かるか?」

カトラスはジェイドにトラップを探知出来るか訊いた。

「斥候の専門職じゃないから断言は出来ないけど確かに近付くと壁が上がって後方に壁が下りてきて僕達の退路が絶(た)たれてしまう様な作りで……これはもしやモンスターハウス?」

ジェイドはこれは本で読んだり話に聞く「モンスターハウス」なのではないかと思った。

*「モンスターハウス」とは一般的には魔物が大量に湧(わ)く危険なエリアの事。*

「ご名答だぜジェイド。じゃ、行くぞ!」

カトラスはもちろんジェイドの訓練の為にダンジョンに潜(もぐ)っているのだから経験の為にも敢(あ)えてモンスターハウスのトラップに掛かりたかった。

「え!?えー!?」

ジェイドはカトラスの言った事に驚いたがカトラスなら危険な道程自ら進んで選んでしまうのだろうと分かっておりカトラスが行くのなら僕だってと行かざるを得ないのだった。

そしてトラップが発動し退路が絶たれ――。

「魔物共がお出ましだぜ。半分はお前に任せた」

――カトラスも愛剣を抜いた。

「うん。一緒に頑張ろう」

ジェイドも臨(りん)戦態勢に入った。

「じゃあ行くぞ!」

そしてカトラスが合図を出し――。

「行こう!」

――カトラスとジェイドは魔物達に斬り掛かっていった。

「楽しいなジェイド!」

カトラスは楽しそうに魔物達に斬り掛かった。

「楽しいね!カトラス!」

ジェイドはカトラスとの共闘で巧(たく)みにコンビネーションを披露(ひろう)しながらカトラスと共に魔物達を狩っていった。

かくしてカトラスとジェイドは王太子と魔将という関係だけでなくまるで姉と弟の様な絆(きずな)を育(はぐく)んでいった。

6/7.「ジェイド殿下の『』になる事の許可をください」

そしてある時カトラスは――。

「ベアトリス様、ジェイド殿下の側室になる事の許可をください」

――ベアトリスにジェイドの側室になる許可を貰おうとしたのだが――。

「駄目よ。認められないわ。私は側室を認めるつもりは無いの」

――側室案を却下されてしまい絶望した。

何でだよ……ふざけんなよ……。

カトラスはアーベルを使って根回しやベアトリスの説得も試(こころ)みたがやはり駄目だった。

――そしてカトラスは――。

「ジェイド。あたしはお前の事が好きだ。愛してるんだ。だから……あたしと遠くへ行こう」

――ジェイドに告白し直談判(じかだんぱん)した。

もし断られても私が直接……。

カトラスはもし断られたら自らの手でジェイドを殺し魂を自分の星へと持っていこうとした。

「遠くってどこへかい?」

ジェイドはカトラスがどこへ行こうとしているのかは分からないがもしかしたら無理心中を図(はか)ろうとしているのではないかとも思った。

「来るなら教える……だから頼む……頼むジェイド……」

カトラスは自分が本当は女神だなんだと言って今まで育(はぐく)んできた絆が壊れてしまうのが怖くて来てくれると言ってくれるまでは自分の正体を明かせなかった。

「僕もカトラスの事は姉の様に好きだけど……ベアトリスから側室は取らないって言われてるから……」

ジェイドはベアトリスからはっきりと側室は取らないから他(た)の女性から告白されても振(ふ)る様にと言われていたのだった。

*「こちら、オペレーション・デーモン。対象リジェクト」*

「ジェイド……何でだよジェイド……」

カトラスはあまりの理不尽に泣いてしまった。

そしてもちろん自分の手でジェイドを殺す事も出来なかった。

この魔法の世界の世界神なのにちょうど今手の届く距離にいる遥か昔から追い求めた好きな男1人さえ手に入れられずその無力さに咽(むせ)び泣く事しか出来なかった。

かくしてカトラスはこのベアトリスの世界ではアベルと結ばれない運命である事を如実(にょじつ)に実感させられ絶望した。

7/7.「来てくれてありがとな『』……」

そしてカトラスは――。

「来てくれてありがとなティアラ……ちょっと大事な話が有ってよ……」

――唯一の親友であるティアラと待ち合わせた。

「どうしたの?カトラス」

ティアラはカトラスが酷く落ち込んでいるのを見るのは久しぶりであり一体何が有ったのだろうかと心配した。

「それがよ……実はあたしは……失踪(しっそう)したアベルと闇オークションのアーベルを見付けたんだよ……」

カトラスはティアラに明かした。

「え!?どこで見付けたの?」

ティアラはカトラスが情報を明かした事に驚きつつもどこで見付けたのか訊いた。

「見付けたのはだいぶ前なんだけどな……あたし何度もアベルを殺してでも魂を連れていこうとしたんだけど……出来なかったぜ……ちくしょ……」

カトラスは堪(たま)らず腕で目を覆(おお)って泣いた。

「カトラス……」

ティアラはカトラスに情報を黙っていた事を咎(とが)める事も無くただ親友として優しく抱き締めてあげた。

「ティアラ……あたし……あたしは……」

カトラスはひたすら号泣した。

「カトラス、私で良ければ何が有ったのか話して」

ティアラはとりあえずカトラスから詳しく事情を聞きたかった。

そしてカトラスから話を聞いたティアラは――。

「ベアトリスちゃんがアベルに固執(こしつ)していない今がチャンスよ!アンリちゃんに暗殺を依頼してジェイド君の後釜(あとがま)にアーベル経由で適当に良い勇者なり魔王なり見繕(みつくろ)ってあげれば良いわ!」

――カトラスに名案を話した。

実際カトラスとティアラは中身がアベルだと分かっているジェイドを殺せないから誰かにジェイドを殺してもらう必要が有るしいずれ魔王になるジェイドは中身がアベルの為あっという間に最強クラスになるのは想像につらくないしカトラスの話によればベアトリスは「アベル」に固執(こしつ)していない様だし新たなジェイドを宛(あて)がう作戦が成功するチャンスは今しか無かった。

「その案でいこう。今度こそあたしとお前で一緒に」

カトラスはもうティアラに嘘を吐(つ)くつもりは無かった。

「ええ!やるわよ!一緒に!」

ティアラもまたもはやカトラスを出し抜くつもりは無かった。

かくしてティアラ達は再びアンリに今度は共同で暗殺依頼を出すのだった。

後書き

カトラスがジェイドとの訓練で使ったダンジョンは実はカトラスが選びアーベル経由でベアトリスの手にレンタルで渡ったものです。

なので特注品でありトラップなどもかなり凝(こ)ったものになっています。

いつかのダンジョン愛好家の露店商人クリスが喉から手が飛び出る程欲しがる代物(しろもの)だったりします。

ちなみにその購入費用はアンマナレイ商会からカツアゲして得たお金です(笑)