[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 23話 地球の女神 – アンマナレイ商会 – 荒稼ぎ (アンの視点)

前書き

青年男性向け – ソフト – R18

第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)

第 23 / 28 話

約 18,600 字 – 19 場面 (各平均 約 970 字)

1/19.「『』してまいりました」

そしてオフィスを借りたアン達は興行ギルドと賭博ギルドと商業ギルドで事業者登録を終え――。

「わたくしも商会の資本金にとお金を工面(くめん)してまいりました。ぜひ商会で使ってください」

――魔法の世界では使わない資源を換金したゴールドが鞄に入っている状態でテーブルに置いた。

「え、これいくら有るの……?」

アンは驚きながら金額を訊いた。

「22万ゴールド程有ります」

マナリスは全ての石油と液化天然ガスを換金していた。

「え、マナリスは一体何を換金した……?」

レイナはマナリスが換金した物を想像するとゾッとした。

「液化天然ガスが20万ゴールド、石油が1万8000ゴールドです。わたくしの星ではどちらも使う予定は有りませんので全て換金しました」

マナリスはファンクラブの会長ベルティーユからのアドバイスで液化天然ガスと石油を売る事で商会の運営資金を確保したのだった。

「で、でも何で……?」

アンは想定外の事に本当に驚いていたし自分に用意出来ない程の大金をマナリスが用意した訳が知りたかった。

「レイナさんもわたくし達の活動の為に頑張ってお金を用意したのです。でしたらわたくしもお友達として出来る限りの事をしなければいけないと思ったのです」

マナリスもレイナの行動に感化され友達の為に出来る限りの事をしたかったのだ。

「マナリス……」

アンもレイナもマナリスに感激していた。

かくしてアン達は新たに21万8000ゴールドという大金を活動資金として得たのだった。

2/19.「これで『』とか大量に買える?」

そしてアンは――。

「これで勇者とか魔王とか魔神とか大量に買える?」

――みんなに闘技大会用の魂を買えるか訊いてみた。

「それは無理……」

マナリスは無理だと思っていた。

「無理。でも借りるなら十分足りるかと。しかも1週間のレンタルとかならもっと安い」

レイナは買うのは不可能でも短い期間レンタルするだけなら十分借りられると思っていた。

「私あれから色々考えたんだけどこっちで魂を用意するんじゃなくてむしろ他の神々に魂を出させて闘技大会出来ない?」

アンは自分が思っていた事を話した。

「それは良いかもしれない」

レイナはアンの案は名案だと思った。

「それでしたらわざわざわたくし達が魂を用意しなくても宜しいのですものね」

マナリスもお金を使わない方法が有るのならそれに越した事が無いと思っていた。

かくしてアン達はなるべく自前で用意しない方向で興行をしていく事にした。

3/19.「ほらみんな『』よ!」

そしてアン達は自前の優秀な天使達をスタッフとして登用する事にし――。

「ほらみんな自己紹介よ!」

「1号です。宜しくお願いします」

「あたしは2号だ。よろしくな!」

「私は3号よ。よろしくね」

――先ずはアンの天使達から自己紹介した。

「名前ほんとどうにかならない?可哀想」

レイナはさすがに番号呼びは可哀想だと感じていた。

「そうですよね。私も同感です」

マナリスもアンの天使達があまりに不憫(ふびん)だと思っていた。

「良いの!天使なんていっぱいいて分かんないんだもん!だから番号呼びの方が都合(つごう)が良いの!」

アンは名前呼びにはしたくなかった。

「そ、そう……じゃあ次はマナリスの天使の紹介」

レイナは序列順に天使の紹介をしたかった。

「は、はい。みんな、自己紹介をお願いね」

マナリスは自分の天使の紹介をするのはなんだか気恥ずかしかった。

「はい。私はマナリス様の天使ラヴリスです。得物(えもの)は剣です。宜しくお願いします」

「私はクローディアよ。得物はメイス。よろしくね」

「あたしの名前はジュリア。得物は大剣。よろしくな」

マナリスの天使達も自己紹介した。

「得物得物ってなんだか物騒(ぶっそう)ね……」

アンは平和主義の為得物の紹介をする魔法の世界のマナリスの天使達を物騒だと思った。

「いや、むしろ良いと思う。ここは暗黒街だからいつ戦闘になってもおかしくない。それに会場の警備や私達の護衛も担(にな)ってもらわないといけないんだから」

レイナはむしろ戦闘意識や危機意識、備えの意識を持っておくべきだと思っていた。

「た、確かに……」

アンはぐうの音(ね)も出なかった。

「それじゃあ次は私の天使達の紹介。1位から」

レイナは1位からの紹介を指示した。

「イエス、マイマスター。私は女神レイナ様の天使序列第1位エレインと申します。どうぞお見知り置きを」

「私は序列第2位イザベルだ。どうぞお見知り置きを」

「私は序列第3位のマチルダです。どうぞお見知り置きを」

レイナの天使達も自己紹介した。

「なんか『レイナの天使』って感じね」

アンはレイナの天使達はレイナらしさが全開に出ているなぁと思った。

「統率(とうそつ)が取れていますよね。それに気品も感じられます」

マナリスにはレイナの天使達はボーイッシュな騎士団の様に思えた。

かくしてアン達は自前の天使達の顔合わせを終え早速天使達がスタッフとして稼働し始めた。

4/19.「『』は面白そうですね」

そしてアン達は企画会議を行った。

「勇者祭りは面白そうですね」

マナリスは勇者関連のイベントに興味が有った。

「でしょ!あと思ったんだけど美人コンテストとかイケメンコンテストとかもやるわよ!」

アンはユウタだったらどうするかを考えながら企画を次々に挙げていった。

「良いですね!」

マナリスはアンが活き活きと企画を考えている為応援したかった。

「あと私からも訊いておきたい事が有る。バトルはリーグとトーナメントとバトルロワイヤルのどれにする?」

レイナはバトルのルールについて明らかにしておきたかった。

「全部やるわよ!」

アンはユウタが言っていた様に全てやりたかった。

「全部……」

レイナは潤沢(じゅんたく)な資金が有るしとりあえず色々な興行に挑戦し魂も出場を募(つの)るという低負担の方針ではあるもののアンが言う様に全て出来るのだろうかと不安だった。

「承知しました。その様に取り掛からせていただきます」

アンの後ろでメモを取りながら立っていた1号がアンの意向を汲(く)み取った。

「しかし先ずどのイベントから開催するのですか?」

マナリスはイベントの日程を把握しておきたかった。

「そんなの勇者祭とかやりたいやつとか準備出来た順からで良いでしょ!」

アンは一見雑な事を言っている様に思えるが出来る事からやっていくのが最も効率良く最短なのをユウタを通じて知っていた。

「確かにそう。参加の募集を掛け定員に達し次第開催していきましょう」

レイナはイベントを開催出来るかは出場希望者が集まり次第だという事が分かっておりアンの言っている事が珍しく最もだと思った。

かくしてアン達は出場募集というPRから始めていった。

5/19.「おい、これ見てみろよ」

そして暗黒街中に広告が出され――。

「おい、これ見てみろよ。勇者祭りやるんだってよ」

「勇者祭り?なんだそれ。ま、聖女ちゃん祭りなら行ってやっても良いが」

「おい、聖女祭りも有るらしいぞ」

「へ!?」

――アンがユウタの様に全てやろうとした為多様な神々の心をほんの少しだけ掴む事が出来たのだった。

6/19.「お初にお目に掛かりますわ」

そしてある時――。

「お初にお目に掛かりますわ。わたくしはマナリスさんが所属している「勇者アベルファンクラブ」の会長をしている二つ名は『楽園の女神』のベルティーユでしてよ」

――ベルティーユがアンマナレイ商会にやってきた。

「お姉さんとっても美人ね!」

アンは金髪ロングでドリルヘアーのベルティーユに素直な感想を言った。

「あらありがとう♪」

ベルティーユは褒められるのは嬉しかった。

「こちらこそお初にお目に掛かります大貴族様。私は科学の世界でしがない女神をしているレイナと申します」

レイナはベルティーユが貴族である事を知っていて下手(したて)に出て自己紹介した。

「ご丁寧にありがとう。早速だけど御(おん)商会の広告を見たわ。勇者祭りをやるのよね?」

ベルティーユはアンマナレイ商会の催し物を確認した。

「そうよ!」

アンは元気良く返事した。

「なら良かったわ。というのもわたくしも御商会のイベントに出場しとう思っているの」

ベルティーユはアンマナレイ商会のイベントに参加したかった。

「ぜひお願いします……!」

レイナは食い入る様に歓迎した。

かくしてアベルファン達の親玉にして大貴族のベルティーユがアンマナレイ商会の後援者になった。

7/19.「僕も『』させてくれたまえ!」

そしてまたある時――。

「やぁレディー達!僕はレオハー。僕もレディー達のイベントに参加させてくれたまえ!」

――超能力と魔法の世界の神レオンハートがアンマナレイ商会にやってきた。

「何!?新手(あらて)のナンパ!?」

アンはまたナンパされたのかと思った。

「レオハーってどこかで聞いた事が有る様な……。とりあえずこちらへどうぞ」

レイナはどこかで聞いた事が有る名前だと思ったが思い出そうとしながらレオンハートを応接セットへ案内した。

「ご丁寧にありがとうねレディー達♪」

レオンハートは応接セットへ移動しようとしながらウィンクを繰り出したがアンからは不気味がられてしまった。

「あ!『超能力と魔法の貴公子レオハー』ですか!?」

レイナはついに思い出した。

「そう正解!」

レオンハートはもし誰も自分の名前を聞いた事が無かったら非常に悲しかったのだが知られている様で嬉しかった。

「え、誰?」

アンはレオンハートが何者なのか分からなかった。

「わたくしも存じ上げません」

マナリスも分からなかった。

「超能力と魔法の世界の神様レオンハート様ですよ……!」

レイナは大物の登場に目が点になっていた。

「え、誰?」

アンはそう言われてもやっぱり分からかった。

「僕はティアラやカトラスと同格の神なのさ!」

レオンハートは堪(たま)らず補足を入れた。

「凄いですね!」

マナリスは素直な感想を言った。

「だろう?レディー達」

褒められて調子に乗ったレオンハートは再びウィンクを繰り出したのだが――。

「で、あんたはここに何の用なの?」

――アンには全く効かずアンはシンプルに要件を訊いた。

「僕も君達のイベントに参加したいんだ……!」

レオンハートはアンマナレイ商会のイベントに参加したかった。

「ぜひお願いします……!」

レイナは再び食い入る様に歓迎した。

かくして超能力と魔法の世界神レオンハートもアンマナレイ商会の後援者になった。

8/19.「面接に来た『』と申します」

そしてまたある時――。

「あの、レオンハート様の紹介で面接に来たエイヴリルと申します」

――アーベルの闇オークションで働いていたエイヴリルが面接に来た。

「お待ちしていました。こちらにどうぞ」

レイナはエイヴリルを応接セットへ案内した。

「ご丁寧にありがとうございます……」

エイヴリルは妙に緊張していた。

「それじゃあ自己PRどうぞ!」

アンが早速面接を始めた。

「あ、はい!私は女神のエイヴリルです。アーベル様の闇オークションで働いていました。そのオークションハウスでは支配人アーベル様の秘書やアシスタント、事務全般や部下達への教育、時には司会進行もしていました。御商会やそのイベントでもお役に立てるはずです!」

エイヴリルは自己PRした。

「アーベル様の闇オークションってあの暗黒街3大オークションハウスですよね」

レイナは食い付いた。

「はい。最近まではそうでした。アーベル様が失踪するまでは正直業界1位だったと思います」

エイヴリルはアーベルのオークションハウスで働いていた事に誇りを持っている。

「ごめんなさい……きっと私が持ち込んだ魂をクレトさんがアーベル様のオークションハウスに出品したからです……」

レイナは悲しそうにしているエイヴリルに謝罪した。

「謝らないでください。出品者には非は有りません。全てはあの無責任支配人が悪いんです……!」

エイヴリルはレイナに非は無いと思っている。

「何でレイナが謝ってるの?」

アンは事情が分からなかった。

「私が持ち込んだ勇者の魂で揉め事が起こってしまったんですよね?」

レイナは現場を見た訳ではないがクレトの口ぶりからしてそうなってしまったのだろうと思っている。

「はい。これは他言無用ですがなんと最後の入札価格は『世界』ですよ?」

エイヴリルは入札価格を明かした。

「そ、そこまでいったんですか……」

レイナは絶句した。

(ほ、本当にアベル様だったのですね……!)

マナリスはうっとりして体の性感帯が気持ち良くなってきた。

「ユウタの魂の値段が世界っておかしくない?」

アンはさすがにおかしな話だと思っていた。

「とりあえずわたくしはエイヴリルさんをぜひ雇いたいです!」

マナリスはアンに気付かれては困る為質問を遮(さえぎ)った。

「私も賛成」

レイナはマナリスの圧に押されて話を進めた。

「じゃあ採用決定!」

アンもとっくに雇いたいと思っていた。

「ありがとうございます!頑張ります!」

エイヴリルは採用が決定して嬉しかった。

かくしてアンマナレイ商会に即戦力となる有能なエイヴリルが入社した。

9/19.「早速ですが『』宜しいでしょうか?」

そしてエイヴリルは――。

「早速ですが働いても宜しいでしょうか?」

――早速働きたいと申し出た。

「良いわよ!」

アンはやる気が有る子大歓迎だった。

「それでは早速具申(ぐしん)しても宜しいでしょうか?」

エイヴリルは早速提案したい事が有った。

「どうぞ」

レイナはエイヴリルの意見を聞きたかった。

「広告を見ましたが文字だけでインパクトが足りないと思ったんです。ですからお三方にPRメッセージをおっしゃっていただいてそれを撮影して映像広告として流すのはいかがでしょうか?」

エイヴリルは可愛いアン達をアンマナレイ商会のアイコンや広告塔として使いたかった。

「私はあまり目立つのは……」

レイナは目立ちたくなかった。

「わたくしは容姿に自信が有りませんので……」

マナリスは自分の姿に自信が無かった為エイヴリルの案にレイナと同様に消極的だった。

しかしアンは――。

「良いじゃない!私はなんとなくそういう事やりたいと思ってたのよ!」

――乗り気だった。

「仮面は付けたままで名乗るのも二つ名で良いんですから!ぜひ!」

エイヴリルは代表者が自ら顔出しし広告塔になる成功例をアーベルを通して知っていた。

「働き者が良いなら……」

レイナはアンがしたいなら断る理由は無かった。

「わたくしも働き者さんがしたいなら賛成です」

マナリスもアンがしたいなら友達として協力したかった。

「それでは早速広告映像を録(と)っていきましょう!」

エイヴリルはアン達のキャラ立(だ)ちやアン達の背景にいるティアラやカトラス、さらにレオンハートやベルティーユ、もっと言えば勇者毒殺事件の被害者と加害者が親友という話題性も含めて考えればもはや成功は約束されていると確信していた。

かくしてアン達はアンマナレイ商会の広告塔も兼ねる事になった。

10/19.「何だ?こんな暗黒街で『』か?」

そしてアン達の映像広告は――。

「何だ?こんな暗黒街でアイドルユニットか?」

「少なくとも風俗街では見た事無い娘(こ)達だねぇ」

「左の娘(こ)と真ん中の娘(こ)のおっぱいでけぇ……!」

――暗黒街に流れ有(あ)ろう事(こと)か――。

「あんな仮面どこで買えるんだろう?」

「どの世界の娘(こ)達だろう」

「女神でありながらアイドルユニットを組むとは!稀有(けう)な娘(こ)達だ!」

――普通の都市にも流した事で広く知れ渡り――。

そしてもちろん――。

「みんな~勝っても優勝しても賞金が貰えるよ~?」

「賭博も可能です。どちらが勝つか誰が優勝するか賭けましょう」

「出場者が決まり次第開催いたします!」

――お金とギャンブルで釣り――。

「楽しいイベントも盛りだくさん!」

「食事もデートも楽しめます!」

――楽しさも前面に押し出し――。

「自分の勇者とか英雄に自信有る奴は出場するのよ!で、どっちが勝つか誰が優勝するか当てる自信が有る奴も無い奴もどしどし来てちょうだい!」

――アンの持ち前の煽(あお)りスキルで――。

*アンの煽りのセリフはエイヴリルが添削(てんさく)し炎上してしまわない様にだいぶマイルドにしています。*

*そして元のセリフは「ちょっとそこの君!もしかして自信無いの~?有るんならどしどし来てちょうだい!」みたいな感じでした。*

「俺の勇者はSランクだぞ!」

「あの娘(こ)ちょっとむかつく!」

「ワシに見る目は有るぞ!」

――プライドが高い神々はしっかりと釣られてしまい――。

「いっぱい応募が来てるんだけどどうすんの……!」

――アンが思考を止めてしまう程に応募が来てしまったのだった。

「私達でこなせますのでご心配無く!」

エイヴリルは暗黒街のイベントなど普通は暗黒街でしか宣伝出来ないのだが「可愛い女神達」を広告塔として使える為まるでダークウェブ発祥のアイドルユニットであるにも関わらず普通のアイドルユニットの様に地上波で広告を流すが如(ごと)く出来ていた。

また3大オークションハウスで働いていた過去を持ち無責任な支配人アーベルの無数の尻(しり)拭(ぬぐ)いをしてきたエイヴリルにはこんな事務作業はどうって事無かった。

またアン達のイベントの注目度は世界神レオンハートや大貴族ベルティーユといった大物が支持を表明した事でうなぎ上(のぼ)りになっていった。

11/19.「これから『』の準備をしてくわよ!」

そしてアン達は応募が十分に集まった事で――。

「これからイベントの準備をしてくわよ!」

――イベントの準備に入っていった。

「はい。それでは代表の皆様、こちらがイベントの会場予定地になります」

エイヴリルは早速イベントの会場予定地の一覧表を配(くば)った。

*もちろんその一覧表には神の名前と費用や実績も合わせて記載されている。*

「ありがとう。で、みんなに提案なんだけど私は実績の有る神のスペースを使いたい」

レイナは実績を優先したかった。

「でもそしたら……」

優しいマナリスはなるべく均等に発注したかった。

「マナリスの言いたい事も分かるけど今は私達にとっても正念場だから」

レイナはマナリスの気持ちは分かるが自分達にとって大事な局面の為リスクは最小限にしたかった。

「予算的にも大規模な会場を十分に利用可能です」

エイヴリルは反響的に費用は十分にペイ出来ると思っていた。

「んー。ユウタだったらマナリスみたいに幅広く依頼を出すと思うんだよね。だから大事なイベント順で割り振ったら?」

アンはユウタをいつもの様に憑依(ひょうい)させ考えを述(の)べた。

「ですよね!そうしましょうよ!」

マナリスもアンの言った事に同感でありアンの案でいきたかった。

「分かった。そうしよう」

エイヴリルはアンの案でも問題無いと思いそれで妥協(だきょう)した。

「かしこまりました。それではその様にさせていただきます」

エイヴリルは商会の代表者達が心優しくて安心した。

かくしてイベントの会場は決まった。

12/19.「そしてこちらが『』の詳細になります」

「そしてこちらがイベントの詳細になります」

レイナはイベントの詳細表も配った。

「てかそもそもだけど勇者を召喚したとして神々が観客席にいても違和感無く戦ってくれるの?」

アンはそもそもの技術的な問題について訊いた。

「大丈夫です。魔法と魔道具で大抵の事はどうにかなりますから」

レイナは同業他社のやり方や技術といった情報も把握済みであり可能な事は分かっているどころか道具も既に準備済みだった。

「そう……それなら良いんだけど……」

アンは高ランクの勇者や魔王、魔神が制御不能になってしまったらどうしようと不安だったのだがその不安は正しかった。

「しかし心配でしたら高ランクの勇者か用心棒を用意しておいた方が良いでしょうね」

エイヴリルはアンが抱(いだ)いた不安を汲み取り対策案を提案した。

「この商会の予算的には短期で借りるしか出来ない」

レイナは購入を諦めていた。

「もし暴走しちゃったら『緊急イベント』って事で戦える奴に戦ってもらう?」

極力お金を使いたくないアンはまたもや妙な事を思い付いた。

「また変な事言ってる……」

レイナは呆れた。

「良いと思いますけどレオンハート様達に戦ってもらうのですか?」

マナリスは上位神(じょういしん)が会場にいるのならどうにかなるかもしれないと思った。

「レオンハート様は勇者の様な実力をお持ちだと聞いた事が有るけどどこまで強いかは分からないし運営側の私達が緊急事態にお客さんに頼るのも……」

レイナは運営としての責任が有る為無責任な事はしづらかった。

「それでは万が一に備えクレトさんに仲介してもらって勇者などをレンタルしておく。そしてもしその様な事になったらあえて観客参加型のイベントに切り替える。でどうでしょうか?」

エイヴリルも観客参加型イベントへの切り替えは名案だと思っていた。

「それでいくわよ!」

「異議無し」

「わたくしも賛成です」

そしてアン達はエイヴリルの修正案に賛成した。

「続きまして他に意見は有りませんか?」

エイヴリルは続けてイベントの詳細について意見を募(つの)った。

「意義なーし!」

アンはなんとなくで了承(りょうしょう)した。

「わたくしも異議有りません」

マナリスも了承(りょうしょう)した。

「私も特に無い」

レイナは全てに目を通し了承(りょうしょう)した。

「それではこのイベント案でいかさせていただきます」

エイヴリルはイベントの詳細が決まってほっとした。

かくしてイベントの詳細も決まった。

13/19.「ちょちょちょ、『』じゃない……!?」

そしてついにイベントの本戦開催日になり――。

「ちょちょちょ、でかいし多過ぎじゃない……!?」

――アンはちょっと大きなコロシアムでのイベントを想像していたのだが超巨大なスタジアムが有るだけでなく都市全体がお祭り会場になっており至(いた)る所にいるのがイベント目当てでやってきた神々とその同伴の勇者だと分かって絶句した。

「これでも人数制限していて入れなかった神々は配信で観てるんだけど」

レイナは配信を観ている神々は無数にいる事を明かした。

「凄いですよね。わたくしなんて人が多過ぎて今にも気絶してしまいそうですもの」

マナリスは集団恐怖症と戦っていた。

「頑張ってマナリス!今日はマナリスが大好きな勇者がいっぱい来てるんだから!」

アンはマナリスを応援した。

「そうでした……!頑張ります……!」

マナリスはアンに気付かされ気合を入れた。

「やぁやぁレディー達。麗(うるわ)しのレオハーだよ。開催おめでとう」

レオンハートはアン達に挨拶し祝った。

「貴公子レオハー様。お祝いのお言葉誠に感謝申し上げます」

レイナはレオンハートに感謝を申した。

「自分でそういう事言っちゃうんだ……」

アンはレオンハートのナルシストぶりに呆れた。

「そうそう自分で言っちゃうの。で、こっちは出場予定の僕の勇者。SSSSランク勇者のベルフィーナ」

レオンハートは上機嫌になりながらアン達に自分の勇者を紹介した。

「はい。レオンハート様の勇者でベルフィーナと申します。女神様方(がた)、宜しくお願い申し上げます」

ベルフィーナは片膝(かたひざ)を突いて自己紹介した。

「も、も、も、もしかして『ベルシリーズ』のですか……!?」

マナリスは目をきらきらと輝かせ手と声が震える程興奮していた。

「お、よく知ってるね。ベルフィーナは世界神フリード討伐戦にも参加した勇者でアベル世界救世軍の第二宇宙艦隊の司令官だよ」

レオンハートは自身が所有している中でも最高の勇者を連れてきていた。

「あ、握手お願いします……!」

マナリスはベルフィーナと握手しようとした。

「え、ええもちろんですとも」

ベルフィーナはマナリスとの握手に応じた。

「SSSSランクって強いの?」

アンは先ずそこからよく分からなかった。

「強いなんてもんじゃ……大抵の銀河神を屠(ほふ)れるどころか世界神にも牙を剥(む)ける」

レイナはアンの常識の無さに呆れながらSSSSランクの強さを説明した。

「ぶっちゃけ僕よりも余裕で強いからね。ベルフィーナは」

レオンハートは永遠の命を持つ神でありその長い年月の間に鍛錬(たんれん)を積んできたが圧倒的な戦闘経験を持つベルフィーナには敵(かな)わなかった。

「いえ、それ程でもございません」

ベルフィーナは謙遜(けんそん)した。

14/19.「皆さんごきげんよう」

すると――。

「働き者さん、楽園の夫人さん、賢いリスさん、貴公子レオハーと勇者さんも皆さんごきげんよう」

――ベルティーユが挨拶してきた。

「いらっしゃいませ!楽園の女神様!」

レイナはお店の様に挨拶してしまった。

「会長!ごきげんよう!」

マナリスはいつもの様に挨拶した。

「楽園の女神こんちゃ!」

アンはベルティーユ相手でもいつもの様にため口で挨拶した。

「ベルティーユもお付きの勇者もこんちゃ!」

レオンハートはアンの様に言ってみた。

「貴方はいつもそうやって……ほんと貴方がどうして世界神になれたのかいまだに分かりませんわ」

ベルティーユは若者であるアン達に年相応の未熟さが有るのは構わないが世界神フリード時代を知るレオンハートがいまだにこの様な言動をしている為呆れた。

「それはもちろん僕に人徳があ・る・か・ら、さ!」

レオンハートは本当にそう思っていた。

「冗談にも限度が有りましてよ」

ベルティーユはレオンハートの冗談が気に食わなかった。

「しかしまぁまぁ今は働き者さん達がいるんだから。その若きレディー達に勇者の紹介をしてあげなよ」

レオンハートはアン達の為にベルティーユの勇者を商会する様にと提案した。

「言われなくてもしましてよ。――紹介が遅れてごめんなさい。こちらはわたくしの勇者ベルクレアよ」

ベルティーユはレオンハートに怒りアン達に謝罪するとベルクレアを紹介した。

「ご紹介に預かりましたわたくし女神ベルティーユ様の勇者を務(つと)めておりますベルクレアと申す者でございますわ」

ベルクレアも片膝を突いてアン達に自己紹介した。

「ま、ま、ま、まさかベルティーユ様の勇者様も『ベルシリーズ』のですか……!?」

マナリスは今度は緊張で気絶してしまいそうになっていた。

「そうでしてよ。彼女こそまごう事無きベルシリーズの勇者にして勇者ベルクレア物語の本人でしてよ」

ベルティーユの勇者もまたレオンハートの勇者と互角の有名勇者なのだった。

「握手お願いします……!」

マナリスはベルクレアとも握手したかった。

「もちろん宜しいですわよ」

ベルクレアも喜んでマナリスとの握手に応じた。

「じゃ僕はベルフィーナを控(ひかえ)室に送らないといけないから。対戦楽しみだねベルティーユ」

レオンハートは挨拶を終えたところでベルフィーナを控室に送り届けようとしベルティーユにも挑発した。

「こちらこそわたくしのベルクレアが勝利するのが楽しみですわ。さて、わたくしもベルクレアの控え室に移動しなくては。それではごきげんよう」

ベルティーユもレオンハートを挑発すると控え室へ移動しようとした。

「有名な勇者って凄いんだね」

アンはまるで他人事(ひとごと)の様に感心した。

(でも彼女達よりも凄いアンの勇者の魂をわずか3000ゴールドで売ってしまった私は一体……)

レイナは自分を愚(おろ)かに思った。

「はい。凄いですよね。彼女達が戦う姿が楽しみです」

(しかしアンの勇者様の方が一番凄いのですが……それは秘密です♡)

マナリスは本で読んだ憧れのベルシリーズの勇者ベルフィーナとベルクレアと握手出来て幸せだったしアンの勇者の正体を明かすつもりも無かった。

かくしてアン達は大物達との挨拶を終えた。

15/19.「レディースエンジェントルメン!」

そして――。

「レディースエンジェントルメン!私は司会進行のエイヴリルと申します。アーベルの闇オークションハウスにそんな支配人補佐がいた様な気がすると思った貴方。気のせいです。さて、今宵のイベントの主催にしてアンマナレイ商会の共同代表でもある皆さんが広告で見掛けたお三方にご登場いただきましょう!拍手でお迎えください!二つ名『働き者』と『楽園の夫人』と『賢いリス』のお三方です!」

――司会進行のエイヴリルがマイクを握り笑いを生み出しながらアン達の登場を案内すると拍手されながらアン達は登場し――。

「みんなよく来てくれたね!」

「わたくしはこの日を迎えられて感激です」

「私も多くの皆様にお越しくださり今日という日を迎えられて大変嬉しく思っています」

――まるでアイドルの様な扱いでそれぞれが一言ずつメッセージを送った。

「それでは本日の『勇者祭り』のメインイベント、『勇者最強決定トーナメント本戦』を始めさせていただきます!」

大きな歓声と共にエイヴリルが本戦開催を宣言した。

そして本戦は予選を勝ち抜いた16名の勇者によるトーナメントであり本戦に進んだ勇者達は予選を勝ち抜いた選りすぐりの勇者なだけの事は有り全員がSSSSランクだった。

「皆様賭けはお済みですね?それでは第1戦目を行います。東側から入場するは魔法の世界の女神カトラス様の世界でベネディクト超銀河団を支配する神ベネディクト様の勇者、クロエ!拍手でお迎えください。彼女は勇者クロエ物語のご本人にしてベネディクト超銀河団の守護者であるSSSSランクの勇者です。また得意なのは悪魔狩りと家庭菜園だそうです」

勇者クロエが登場すると拍手で迎えられ得意な事で笑いが起こった。

「歓声が凄いけどあの勇者も有名なの?」

勇者の事をまるで知らないアンは勇者について詳(くわ)しそうなマナリスに訊いた。

「有名ですよ。勇者クロエ物語の本人ですからね。前世界神フリード時代に銀河を襲った「デーモンズゲート」も単独で撃破した程の猛者(もさ)ですよ。それにベネディクト様が超銀河団を維持出来ているのも勇者クロエの存在が大きいと思います」

マナリスは勇者クロエについて知っている事を話した。

*この場合のデーモンズゲートとは前世界神フリードが革命側に付いた神々の銀河を滅ぼす為に出現させた魔神級の魔物が魔力が続く限り無限に湧いて出てくるゲートの事。*

「『デーモンズゲート』って何?」

アンは「デーモンズゲート」が何なのか分からなかった。

「一般的には魔物が出てくる門の事を言うのですが勇者クロエの場合は前世界神が仕掛けた魔神が出てくるデーモンズゲートを単独で撃破したのですよ」

アンは「デーモンズゲート」が何なのか分からなかった。

「へー」

アンは魔神がどれだけ強力で討伐するのが大変な相手なのか全く分かっていなかった。

「相対(あいたい)するはスキルの世界の女神クラウディア様の勇者、エルフ族のエーレンフリート!拍手でお迎えください。彼は勇者エーレンフリート物語のご本人にして女神クラウディア様の守護者であるSSSSランクの勇者。また好きなのは自分。嫌いなのはアベルだそうです」

続いてエルフ族でイケメンのエーレンフリートが登場してきたが黄色い歓声と共にブーイングも聞こえてきた。

「ブー!」

マナリスもエーレンフリートに向けてブーイングをした。

「何でマナリスまでブーイングしてんの!」

アンはマナリスも他の観客達もどうしてブーイングをしているのかが分からなかった。

「エーレンフリートは神などといった上位存在には低姿勢ですがエルフよりも劣(おと)っていると認識した種族や彼自身が劣っていると認識した存在に対しては一方的に差別的な感情を抱(いだ)くのです。もちろん敵であれば平気で斬り殺します。しかもナルシストで何よりアベル様の事を敵視しているからです!ブー!」

マナリスはエーレンフリートを勇者だとは1度も認めた事が無かった。

「じゃあ私もブー!」

アンもマナリスと一緒にブーイングした。

「マナリス、なぜエーレンフリートみたいなのが勇者をやれてる?」

レイナはマナリスにそもそも論で訊いた。

「エーレンフリートは女神クラウディアに対しては非常に紳士的で自分の命を何度も守っていただけたからと頭が上がらないのではと言われています。またその為相手が例え嫌いな種族であっても女神の命令を優先し助けるそうで性格に難(なん)が有るが勇者の任(にん)を解く程ではない、というところではないでしょうか」

マナリスの知っている範囲内で話した。

「でもなぜアベルの事が嫌いに?」

レイナはアベルの事についても訊いてみた。

「諸説有って世界大戦時に敵を殺さないアベルと殺したいエーレンフリートで対立したとかエーレンフリートがアベルの強さか人格か人徳に嫉妬したとか言われていますが本当のところは本人に訊いてみないと分からないでしょうね」

マナリスはエーレンフリートとアベルの関係についても知っている範囲内で話した。

そして審判が――。

「両者向かい合って、始め!」

――合図するとゴングが鳴り始まった。

かくして勇者クロエと勇者エーレンフリートの戦いが始まったのだが死闘の末(すえ)にエーレンフリートが勝利し会場は黄色い声援とブーイングに包まれた。

16/19.「いよいよ『』です!」

そしてついに――。

「いよいよ本トーナメントの決勝戦です!」

――決勝戦になりエイヴリルがそう言うと会場が歓声に包まれた。

「私も賭けたかったのに……」

アンは賭けたかったのにレイナやマナリス、エイヴリル達に止められてしまい結局決勝戦も逃してしまった事で酷く落ち込んでいた。

「アンが賭けていたらどうなっていた事か……」

アンは派手な勇者を選んでしまう傾向が有りもし賭けていたら次もエーレンフリートが勝つはずと大金を賭け大負けする事になっていたしレイナの主導でアンを止めたのは正解だった。

「どの勇者もSSSSランクですしわたくしにもどちらが勝つかなど分かりませんでしたから気を落とさないでくださいアン」

マナリスはアンの背中を優しくさすった。

「東から入場するは世界神レオンハート様の勇者ベルフィーナ。皆様拍手でお迎えください」

エイヴリルがそう言うと世界神レオンハートの勇者ベルフィーナが大きな歓声と共に入場してきた。

「そして西から入場するは魔法の世界の大貴族ベルティーユ様の勇者ベルクレア。皆様拍手でお迎えください」

そして大貴族ベルティーユの勇者ベルクレアも大きな歓声と共に入場してきた。

「どっちが勝つかな?」

アンはシンプルに勝敗の予想を訊いた。

「分からないけどオッズではレオンハート様の勇者ベルフィーナが優位」

レイナはオッズ的に勝敗を予測した。

「どちらもベルシリーズの勇者ですから勝率は五分だと思います。ただしベルフィーナ様が優位だと思われているのはおそらく世界神様の勇者だからです。しかし本大会は超能力は禁止ですので超能力での戦闘に慣れている、あるいは普段から超能力を使っていると思われるベルフィーナ様は普段から超能力を使わずに戦っているベルクレア様に苦戦すると思われます」

マナリスはベルティーユの勇者ベルクレアが判定勝ちすると思っていた。

そして審判が――。

「両者向かい合って、始め!」

――合図するとゴングが鳴り始まった。

かくしてレオンハートの勇者ベルフィーナとベルティーユの勇者ベルクレアの戦いが始まったのだが死闘の末(すえ)に勇者ベルクレアが判定勝ちで勝利し――。

「勝者女神ベルティーユ様の勇者ベルクレア!よってアンマナレイ商会プレゼンツ『勇者祭り』のメインイベント、『勇者最強決定トーナメント』の優勝者は『女神ベルティーユ様の勇者ベルクレア』に決定いたしました!」

――優勝者が決定した事で会場は大歓声に包まれた。

「興行成功おめでとう、アン達」

そしてその会場のVIPの観覧席にはティアラの姿も有ったのだった。

「あの弱虫のマナリスがこんな大イベントをやってのけるなんてな。感慨深いぜ」

そしてもちろんその隣にはカトラスの姿も有ったのだった。

「それよりも貴方、最近政府に顔を出してないそうじゃない?」

ティアラはカトラスが仕事をサボってどこかに行っている事を密偵達の努力により把握していた。

「さ、さぁどうだったかな……?あたしも忙しいからな……あはは……」

カトラスはティアラにバレている事を知って焦(しら)ったものの白(しら)を切り通すしか無いのだった。

17/19.「『』おめでとうございます!」

そしてイベントが成功した後――。

「イベント成功おめでとうございます!」

――予定通り事務所で報告会を行う事になった。

「おめでとー!」

「おめでとう!」

「おめでとうございます!」

アン達も天使の1号達も皆(みな)が初めての興行の成功を喜んでいた。

「それでは皆様、収益の報告を行います。チケット売上高、物販、スペースレンタル手数料、賭博手数料、まとめて金100トンを1ゴールドで12億ゴールド!経費を差し引いて利益は4億ゴールドです!」

エイヴリルは巨額の売上高を報告した。

*チケットは会場観覧チケットの事。映像配信は無料。物販はアン達が販売した食品や魂、勇者武具など。スペースレンタル報酬はイベントに乗じて商売をした他業者からの手数料。賭博手数料は言葉通り賭博の手数料。*

「よ、よ、よ、4億ゴールド……!?」

アン達はその金額にびっくりした。

「どうしよう!あのおじさんの魂とか余裕で全部買えちゃうじゃん……!」

アンは1回の興行成功で余裕で当初の利益目標を達成していたのだった。

「これで買えますね!」

マナリスもとても嬉しかった。

「それが買えるどころか私達はもう貴族の仲間入り……!」

レイナは1億ゴールドという報酬を受け取ったら何に使おうかと想像を巡らせた。

「これは私からの提案なのですが私エイヴリルの報酬や1号さん達の報酬は経費の中に含まれています。もちろん興行ギルドや賭博ギルド、商業ギルド等への手数料の支払いが有りますがアンさんの分、マナリスさんの分、レイナさんの分、商会の貯金という様に4当分にしませんか?」

エイヴリルは商会の今後の事も考え利益の全額をアン達が3当分するのではなく4分の1は商会の貯金や運転資金として残しておきたかった。

「良いわよ!そうしましょ!」

「私もそれが良いと思います」

「わたくしもその様にすべきだと思っています」

アン達もエイヴリルの提案に賛成だった。

かくしてアン達は各自で約1億ゴールドという高額報酬を得る事になったのだった。

18/19.「『』を名乗る連中が来ちゃったみたい」

そしてアン達がレイナの家で打ち上げパーティーをしているとアンマナレイ商会に――。

「アン、事務所にチェスター・ファミリーを名乗る連中が来ちゃったみたい。しかもボスが直々(じきじき)に」

――マフィアのボスがやってきてアン達はレイナからその報告を受けた。

「何そいつら?」

アンはチェスター・ファミリーが何者なのか分からなかった。

「暗黒街のマフィアの一つで主に興行区を縄張りにしてる奴ら」

レイナは暗黒街の情報も網羅(もうら)していた。

「で何でそいつらが私達の商会に来たの?」

アンはチェスター・ファミリーがアンマナレイ商会に来た訳が分からなかった。

「みか占め料を取りに来たに決まってる」

レイナはマフィアが来た訳は想像付いている。

「何それ?」

アンは「みか占め料」が何なのか分からなかった。

「要するに上がりの一部をピンハネしに来た。用心棒代って名目で」

レイナはマフィアがどう出てくるかも想像付いていた。

「つまり私達の稼ぎの一部を取りに来たって事?」

アンは「ピンハネ」の意味は分からなかったが何となく察した。

「そう」

レイナは即答した。

「どうしよ……!」

アンはどうしたら良いのか分からなくなってきてしまった。

「怖いですよね」

マナリスも怖くなってきた。

「上がりの一部を納めれば大丈夫なはず。でも危険な奴らだから絶対に敵対しちゃいけない」

レイナはお金さえ払えば何も手出しはされないと思っていた。

「私達が頑張って稼いだお金を一部でも取られちゃうなんて嫌よ……!」

アンはお金を取られるなんて嫌だった。

「ここで上手くやっていきたかったら従わないといけない事も有る」

レイナは現実的に考えていた。

「で、でも……」

アンはそれでも自分達が頑張って稼いだお金を一部でも知らない人達に取られるのは気に食わなかった。

「とりあえず事務所に行ってお話を聞いてみませんか?いつまでも待たせてしまう訳にはいかないでしょうし」

マナリスはとりあえず来客をいつまでも待たせたくなかったし判断するのは話を聞いてからでも遅くはないと思った。

「私もそう思う。行こう。嫌なら私だけでも行く」

レイナはイベントが成功次第マフィアが接触してくると思っていたし自分だけでも行くつもりだった。

「私も行くわよ!」

アンだって商会の共同代表だしレイナ一人に任せる訳にはいかなかった。

「わたくしも参ります!」

マナリスもアンやレイナと同様に向き合う覚悟は出来ていた。

かくしてアン達は事務所にテレポートした。

19/19.「おせぇじゃねぇか」

そしてアン達が事務所にテレポートすると――。

「おせぇじゃねぇか。嬢ちゃん達」

――ソファに座り両足を足首で組んでテーブルに乗せながら葉巻を吸い煙を吐くチェスターの姿が有った。

「ちょっと!そんなとこに足を乗せないでよ!あとここは禁煙よ!」

アンは相手が誰であろうと気に食わない事は絶対に許容(きょよう)しない性格だった。

「それは出来ねぇ相談だなぁ。ま、とりあえずイベント成功おめでとう」

チェスターはマフィアのボスであり矜持(きょうじ)として絶対に引く事は出来なかった。

「チェスター様ご本人がいらっしゃるとは驚きました。私はこのアンマナレイ商会で共同代表をしておりますレイナと申します。お褒めの言葉感謝申し上げます」

レイナはアン達の為にも自分がきちんと応対しようと思い座りながら自己紹介した。

「おめぇは掟(おきて)ってもんを分かってるじゃねぇか。そうだ、俺がここら辺を仕切(しき)ってるチェスター・ファミリーのボス、チェスターだ」

チェスターは本名まで名乗ったレイナの姿勢に感心すると自分も自己紹介した。

「で、あんたは私達に何の用なの?」

アンも座るとため口のまま要件を訊いた。

「嬢ちゃんおめぇの口の利き方はなってねぇな」

チェスターはアンの態度は無礼だと思っていた。

「わたくしはマナリスと申しましてわたくしも共同代表です。しかしわたくしのわたくしと同様に共同代表でもあるお友達の無礼をお許しください。二つ名『働き者』はいつもこの様な感じなのです」

マナリスも本名を名乗り自己紹介するとアンの事を庇(かば)った。

「知ってるぜ。手下共には探らせてあるからな。もちろん嬢ちゃん達が上(うえ)の唾(つば)付きって事もな」

チェスターは葉巻を吸いながらレイナが念のためにとアンとマナリスに持って来(こ)させていた写真立てに入っているアンとティアラ、マナリスとカトラスのツーショット写真を見つめた。

「上の唾付きって何の事?」

アンは言葉の意味が分からなかった。

「とぼけんじゃねぇよ」

チェスターはアンがとぼけているのが不満だった。

「2人共『上の唾付き』って世界神様に気に入られているって事」

レイナは言葉の意味を説明した。

「なるほど!」

アンは納得がいった。

「おいおい、頼むぜ……」

チェスターはそっちの意味だったのかと呆(あき)れた。

「で何の用なのよ!」

アンはもう一度要件を訊いた。

「俺がわざわざここまで来てるってのにまだ分かんねぇのか?」

チェスターは察してほしかった。

「分からないわよ!」

アンは何となく分かっていたがちゃんと要件を言わせたかった。

「上がりの何割ですか?」

レイナは自ら何割かを訊いた。

「ギルドと同様利益の1割でいい。ちゃんと上がりさえ収めりゃ文句はねぇ」

チェスターは暗黒街の掟(おきて)としてみか占め料を取りに来ただけだった。

「分かりました。お支払いします。しかしチケット代のみですか?それとも賭博代も含めてですか?」

レイナは素直に決済しようとしたが範囲が分からなかった。

「ちょっと!何で払わないといけないのよ!」

アンはみか占め料を払うのが不満だった。

「嬢ちゃん達は物販もやってたんだろ?俺が言ってる1割は全部の1割だ。この事務所は俺のシマ内だしな。ま、他の連中がガヤガヤ言ってきたら真っすぐ俺に言いに来い。でだ、俺はこれでも女のガキ共がこの暗黒街で興行をやるのを応援してんだぜ?ガッカリさせんじゃねぇぞ……。おお。すげぇ。一晩(ひとばん)で4000万ゴールド稼ぎ出すなんざ嬢ちゃん達才能有るぜ。ま、何か問題が有ればいつでも言いに来い。俺が嬢ちゃん達の用心棒だ」

チェスターはお金を受け取りながらそう言うと用が済めば事務所を出ていった。

「もー!私達のお金がー!あんにゃろー!しっしっ!二度と来ないでちょうだい!」

アンはチェスターが事務所を出ていくと酷く落ち込み怒りが込み上げてきて手で追い払う仕草(しぐさ)をした。

かくしてアン達はチェスター・ファミリーの後ろ盾を得た。

後書き

分かったかと思いますが「ベルティーユ」という名前も勇者ベルシリーズの影響を受けていますがベルティーユの場合は勇者達にベルの付いた名前を授(さず)ける女神ポジでの意味合いです。

つまりそんな勇者達に名前を授けた高貴な女神という位置付けをベルティーユは理想的に思っています。

なんせ二つ名は『楽園の女神』ですからね。

理想はやはりベルシリーズ第1位のアベルを手に入れる事です。

もちろんレオンハートもベルティーユもティアラやカトラスに言ったところでアベルを貸してくれないのは分かり切っているのでアン達に接触したという訳です。

また作中では多くは語りませんでしたがレオンハートと通じているのはエイヴリルです。エイヴリルはアンマナレイ商会に面接に来たのはレオンハートからの紹介ですからね。

ですからレオンハートはオークションハウスの時点でエイヴリルからの報告でアベルの魂が持ち込まれた事を知っていたという訳です。

そしてベルティーユに情報を流したのもレオンハートです。

まぁレオンハート1人でティアラやカトラスと対峙(たいじ)するのは分(ぶ)が悪いですからね。

まぁティアラ達独占派とレオンハート達勇者自由派の対立とも言えます。

また話は変わりますが天界での大貴族のなり方ですが先ず初めに自分が所属している銀河で宇宙国家を作ります。そしてこの時点で立派な貴族です。

しかし大貴族になるには銀河団や超銀河団を掌握しなければいけません。

また認識としては銀河で伯爵なら銀河団で侯爵、超銀河団で公爵です。

まぁ銀河を掌握した後は隣の銀河に侵略する方法も有りますがベネディクト超銀河団の神ベネディクトの場合は相手のピンチの時に勇者クロエを貸す事でその地域の盟主になっていたという訳です。

そういう感じで地域のリーダーになる事で大貴族へと駆け上がる事が出来ます。

まぁそうなるには銀河の神でも手に入れられず借りたいと思える程の勇者を持っている必要が有りそれがSSSSランクの勇者という訳です。

また勇者のランクはSランクで普通、SSランクで半分人間をやめている、SSSで完全に人間をやめている(寿命が無くなる)、SSSSランクで銀河や銀河団、超銀河団で最強の勇者、SSSSSランクで世界最強という感じです。

もちろん神だからといってもいくら土台と無限に修練出来る不老性が有るといっても鍛錬(たんれん)をせず己を磨(みが)いていなければ普通の剣士の剣に余裕で貫かれて死にます。

つまり神は不老だが不死ではないのです。

まぁ気分でお爺さんやお婆さんの姿になる事も出来るのですがね。

ちなみに50万から500万ゴールドで地球の様な惑星を買えるのですが逆に5000万ゴールドも使えば自分の惑星を通常の10倍のスーパーアースにする事が出来る為レイナはこれで夢を叶える事が出来のでした。

ちなみにアンとマナリスが賭博に上限を設けていなければ賭博の手数料収入が大幅に上昇しイベントの売り上げは120億ゴールド、利益は40億ゴールドになっていたのでした。

しかしもしそうなっていたら暗黒街でアンマナレイ商会を取り合ったマフィア同士の大戦争がイベント終了後すぐに勃発(ぼっぱつ)し暗黒街が閉鎖(へいさ)されていたので結果的には良かったのだと思います。

そしてちなみにアンマナレイ商会のイベントの警備はチェスター・ファミリーのフロント企業が担(にな)っていたので実はチェスターは既にアン達のイベントに関わっていました。

そしてもちろんレオンハートやベルティーユだけでなくティアラやカトラスからも釘を打たれているのでどっちみちアン達に手出しをする事は出来ないのでした。