[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 21話 地球の女神 – 魂の仲介人の神 (アンの視点)

前書き

青年男性向け – ソフト – R18

第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)

第 21 / 28 話

約 6,800 字 – 8 場面 (各平均 約 850 字)

1/8.「私『』いっぱい使っちゃったよお……!」

ウィレミナから商品を購入したアン達はレイナの案内でクレトの仲介屋へと移動しながら――。

「で、なんとかリス、私お金いっぱい使っちゃったよお……!」

――アンはレイナに目をうるうるとさせた。

「分かっています。受け取ってください」

レイナはモニターで送金提案を表示した。

「あんがとー!」

アンは躊躇(ちゅうちょ)無く受け入れるボタンを押した。

「働き者も賢いリスさんも本当にそれで宜しいのですか?」

マナリスはアンとレイナのしている事が良い事だとは思えなかった。

「良いのよ!」

アンはレイナの謝罪の気持ちをしゃぶり尽くす気満々でありこれくらいの事でレイナを解放つもりは無かった。

「はい。良いんです」

レイナはアンはまだユウタを取り戻してはいないし自分がしてしまった事の罪の重さを実感していてまだまだ罪を贖(あがな)えてはいないと思っている。

「そ、そうですか……」

マナリスは2人にそう言われてしまうとそれ以上の事は言えなかった。

2/8.「『』も売ってるよ!」

そして移動しながらアンは――。

「ねぇ!勇者も魔王も売ってるよ!」

――お店のショーウィンドウに釘付けになった。

「本当ですね。1万ゴールド台や中には10万ゴールド台も有ります」

レイナもアンに続いてショーウィンドウを覗いた。

「物好(ものず)きもいますよね。私は科学の世界出身なので勇者も魔王も何が良いのかさっぱり分かりません」

レイナは科学の世界出身の為か勇者も魔王もどうしてそれだけの値段が付いて何が良いのかさっぱり分からなかった。

「勇者は良(よ)いですよ。世界の為に私達女神の為に戦ってくださるのです。人々の希望なのです」

マナリスは勇者の良さを説(と)いた。

「まぁ私も同感かな。色々と良くしてくれたし。国も造ってくれたし。それに人々にはリーダーみたいなのって絶対必要よ」

アンは勇者に対して良い印象を持っていた。

「でも自分が地上に降り立って人々を導いた方が簡単じゃないですか?特に科学の世界なんて魔法は有りませんし身体能力に差も有りませんし魔王もいませんし」

レイナはやはり神が自ら世界を導く方が簡単で効率も良く自分の理想の世界を実現しやすいと思っている。

「なんとかリスは優秀だからなぁ……」

アン視点レイナは優秀であり優秀な人ならそう考えるのだろうが普通はそうはいかないと思っている。

「賢いリスさんはしっかりされている方ですものね。でもわたくしはもし自分が科学の世界の女神だとしても勇者を登用(とうよう)したいです」

マナリスはやはり女神として裏方(うらかた)に徹(てっ)したかった。

「まぁ運営方針は神それぞれ違って良いんだと思います。それではお店の商品のお値段も分かったところでクレトさんのお店までもうすぐなので行きましょう」

謙虚になったレイナは他者の考えを否定するつもりは無く長居は無用と移動しようとした。

かくしてアン達は再び歩き始めた。

3/8.「あれが『』です」

そしてついに――。

「あれがクレトさんの仲介屋さんです」

――お店が見えてレイナは指を差し告(つ)げた。

「あれね!じゃあさっさと行くわよ!」

アンはテンションが上がってきた。

そしてアン達はクレトのお店に着き扉を開けると――。

「いらっしゃい!」

――ランドルに声を掛けられた。

「お、賢いリスか!」

ランドルはレイナにすぐ気付いた。

「お?あいつが来たのか?」

ランドルの近くにはクレトもいた。

「久しぶりです。今回は友達を連れてきました」

レイナは友達を連れてこれて嬉しかった。

「ワシはクレト。このお店の店主で仲介ギルドのギルマスでもある。まぁ今はギルド会館が再建中でお休み中なんだが。で、こいつは弟子のランドルだ」

クレトは自己紹介した。

「ああ!俺がランドルだ!宜しくな!」

ランドルも自己紹介した。

「本名名乗っちゃって良いの……?」

アンはクレト達が本名を名乗った事に驚いた。

4/8.「で、嬢ちゃん達の『』は?」

「良いんだよ。ワシらはもうすっかりここの住人だしな。むしろ箔(はく)が付くってもんよ!で、嬢ちゃん達の二つ名は?」

クレトもランドルもこの暗黒街にすっかり馴染んでいて本名を名乗らない方がむしろ支障をきたしてしまうという状態だった。

そしてクレトはアン達の二つ名を訊いた。

「私は『働き者』よ!」

アンは二つ名を明かした。

「わたくしは『楽園の夫人』です。宜しくお願い申し上げます」

マナリスも自己紹介した。

「おや、楽園ってあの?」

クレトもここの住人なだけ有り仮面職人のエルダの様に気付いた。

「きっとそうです。勇者の、です」

マナリスは相手に伝わりやすい様に職業名まで言った。

「そうか。とりあえず宜しくな嬢ちゃん達。しかしこれを訊くのもなんだがリスの最近の事は2人は知ってるのか?」

クレトはアンとマナリスがレイナの事を知っているのか訊いた。

「最近の事って?」

アンはクレトが何を訊いているのか分からなかった。

「えっと、毒殺の件ですか?」

マナリスは思い当たる事を訊いた。

「お、知ってるのか。それだよそれ」

クレトはマナリスの口ぶりからしてレイナがしでかした事がちゃんと共有されているのだろうと思って安心した。

「はい。ちゃんと話しましたから」

レイナはもう隠し事も無く清々(すがすが)しい気持ちだった。

「そうかそうか。それは良かった」

クレトはあんな事をしでかしたレイナにこんなに良い友達がいる事が嬉しかったしレイナも大丈夫そうで安心した。

5/8.「もうとっくに知ってるわよ」

「なーんだ。私の勇者がなんとかリスに殺された事を訊いてたのね。もうとっくに知ってるわよ」

アンは「なーんだそんな事か」と思った。

「おいリス!この娘(こ)があの勇者の元ホルダーで例のティアラ様の唾(つば)付きか?」

クレトはアンの口ぶりからしてもしやと思い慌てて訊いた。

「はい……そうです……」

レイナはあっさりと認めた。

「おいマジかよ……!」

喧嘩っ早く数々の修羅場を潜(くぐ)り抜けてきたランドルも流石(さすが)に驚いてしまった。

「そうか。和解したのか。普通はこういう事が有ると修復不可能な程の亀裂(きれつ)が入ってしまうものなんだがなぁ……」

クレトとしても犯罪者と被害者が日が全く経(た)っていないにも関わらず友達になっているのを見るのは珍しい事だった。

「まぁ私はまだ許してないけど!許してるっていうか!まだ許してないっていうか!そんな感じだから!」

アンは許してると言うとレイナからお金が引っ張りづらくなってしまう為なかなか許してるとは言えなかった。

「私は許してもらえるまでひたすら頑張るだけです」

レイナは長期戦を覚悟していた。

「そ、そうか……あとそうだな。リス、捕まった時ワシらの事黙っててくれたんだろう?あの後カトラス達が乗り込んできてギルド会館はおかげでめちゃくちゃになっちまったんだが仲介屋の取引履歴を見せろと、例の魂を扱った仲介屋を探せと、何か知っている情報が有れば吐(は)けと言われただけだったしな」

クレトはレイナの口の堅さに感心していた。

「チンコロしなかったのは偉いぜ!」

ランドルもレイナに感心していた。

「はい。尋問(じんもん)されましたが私がした事以外は何も言いませんでした」

レイナは自分の悪事に関係の無い人達を巻き込みたくなかった。

「そうかそうか。お前さんは立派な女神だ」

レイナは改めて暗黒街の良(りょう)客としてクレトに認められた。

「いえいえ、褒められる様な事ではないですよ」

レイナはその事で褒められるのは違和感が有った。

6/8.「何を『』してほしいんだ?」

「そうかそうか。さて、お前さん達は何を仲介してほしいんだ?」

クレトは本題に入った。

「私達は悪党と魔王の魂が欲しいの!」

アンが口を開いた。

「悪党と魔王の魂が欲しいのか……?」

クレトは驚いて訊き返した。

「はい。そうです」

マナリスはアンの主張にお墨付きを与えた。

「いや、勇者や高ランクの冒険者の魂が欲しいっていうのは分かる。だが嬢ちゃん達の口から飛び出たのが悪党と魔王ってのはなぁ……」

クレトとしても非常に珍しい事だった。

「お嬢さん達が悪党と魔王の魂が欲しい理由を訊いても?」

ランドルは理由が知りたかった。

「まぁ本来稼業人としては客の真意を詮索(せんさく)するのはルール違反なんだが今回は例外だな。ワシもお前達の為に気になるからな」

クレトはお客が判断を間違えて取り返しの付かない事態になってしまうのを避(さ)ける必要が有り最適な意思決定の手助けをする為にも今回はちゃんと理由を訊く事にした。

「私ユウタの魂を取り戻したいんだけどママが持ってっちゃうんだって。だから友達のなんとか夫人の星を魔王とかでいっぱいにして預かってもらうの!」

説明が苦手なアンがアンなりに頑張って説明をした。

「まぁあの魂はティアラもカトラスも欲しいだろうしな。そりゃ嬢ちゃんが割を食っちまうよな」

クレトにはティアラとカトラスも暗殺依頼を出していたという噂が流れてきているしアン達なりに考えて勇者を守ろうとしているのだろうと思った。

「でも親父、そんな事までしてあの世界神様達から勇者を守れるのか?」

ランドルにはアン達の作戦は相手が相手だし失敗に終わってしまうのではないかと思えてならなかった。

「んー。やらないよりはマシだと思うし嬢ちゃん達がどうしてもやりたいと言うならその覚悟が有るのなら協力してやるのもやぶさかではないぞ」

クレトはアン達の試(こころ)みを否定したくなかったし時が来たらティアラかカトラスに自分が頭を下げてお願いしようと思った。

もちろんそれも仲介屋としてのお客の理想の実現を助けるという仕事の範疇(はんちゅう)だし個人としての気持ちの表れでもあった。

「私やるわよ!もうとっくに手品師工作員達もクーデター騎士団も高額治癒院セットも勇者と魔王の卵達セットも買ってるの!2300ゴールドも使ってるの……!引くに引けないのよ……!」

アンは1度やると決めた以上引くつもりは無かった。

「わたくしも星の当事者として友達として頑張るつもりです!覚悟は出来ています!」

マナリスも覚悟は出来ている。

「私も友達の為なら出来る限り頑張るつもりですから」

謙虚になっているレイナも自分なりにアン達の為に出来る限りの事をするつもりだった。

7/8.「『』を見繕(みつくろ)ってやる!」

「よし分かった!楽園の嬢ちゃんの星が楽園級の勇者が必要になるぐらいの魔王や悪党共を見繕(みつくろ)ってやる!」

クレトはやる気が出てきた。

「はい!ぜひお願いします!」

マナリスは望むところだった。

「ら、楽園級って何……?」

アンは「楽園級」の意味がよく分からなかった。

「とにかく凄い勇者って事です!」

マナリスはアンにユウタの真の価値を知られない為にぼかした。

「なるほど!国を作れ!って言ったらちゃんと国を作ってくれる勇者ってあんまりいないもんね!しかも1人も死なせずに」

アンはマナリスが言った事に納得した。

「お、お嬢ちゃんそれ普通の勇者じゃないんだが……」

クレトは呆(あき)れたがマナリスに微笑(ほほえ)まれ恐怖しそれ以上言うのはやめておいた。

「でだ、ちょっと待ってろ!――どれどれ。――これだ。どん!こいつらはどうだ?」

クレトは店の奥からいくつか目玉の商品を持ってきた。

「何これ?」

アン達はそれらの商品を覗き込んだ。

「親父、これはヤバくねぇか?」

ランドルはさすがにまずいと思った。

「いや、あの勇者ならこれくらいなきゃ駄目よ。――で、お嬢ちゃん達これはな、SSSランクの悪魔13公セット、同じくSSSランクの破滅の魔神、で、こいつもSSSランクで闇ギルドで天下を取った闇ギルドの統帥よ」

クレトは商品を紹介した。

*商品は魂が封じられている人形の形をしていて姿が分かりやすい様になっておりセットの場合はまとめてケースに入れられている。*

「んー。これの何が凄いの?」

アンはそれの何が凄いのかさっぱり分からなかった。

「お嬢ちゃんなぁ……まぁ科学の世界だから馴染みが無いのかもしれないが、悪魔の連中はいずれ全員が魔神の領域に到達する。そんなのが13体もいてしのぎを削(けず)り合うんだ。で、魔神は最初から神で世界の破滅を目論(もくろ)む。で、最後の奴もいずれ何らかの手段で人間をやめて世界中に暗黒の時代をもたらす闇ギルドの統帥よ。いずれにせよ普通の勇者じゃ歯が立たねぇ」

クレトからすれば悪魔公1体でも世界が大変な事になるレベルの代物(しろもの)を並べていた。

「しかしそれだけでは足りないでしょうし小物ももっと欲しいです」

マナリスはそれだけでは足りないと思っていた。

「お、お嬢ちゃんな……」

クレトはとんでもない小娘達に呆れた。

8/8.「『』を訊いておきましょうよ」

「みんな、その前にちゃんと値段を訊いておきましょうよ」

レイナはそもそも論としてそんな凄い品物を買えるだけの軍資金が有るとは思っていなかった。

「確かにそうですね」

マナリスはレイナに言われてそもそも論に気付かされた。

「おじちゃん1000ゴールドずつで買えない?」

アンはなんとか軍資金以内で納めたかった。

「馬鹿もん!これはどれも金100トンを1ゴールドで100万ゴールドは下(くだ)らん代物だぞ!」

クレトは世間知らずのアンに喝(かつ)を入れた。

「えー!た、高過ぎるでしょ……!」

アンは桁が大き過ぎて訳が分からなくなっているしそんなに高い物とは思えなかった。

「それがハイランクの勇者などは1億ゴールドは下りませんからね。100万ゴールドならむしろ安い方かもしれません……」

マナリスはハイランクの勇者や魔王などの相場観はある程度分かっている為100万ゴールドで買えるならむしろ安いと思っていた。

「お嬢ちゃんは分かっておるな。これはしかもいわくつきで1つで神を大勢(おおぜい)葬(ほうむ)ってきておる。だから遺品処理で回ってきたんだが誰も買わんから裏の倉庫で眠ってたって事だ。それゆえの値下げなんだぞ?」

クレトはそれらの品物が安い事情をアン達に明かした。

「へー。じゃあどうしよう……」

アンは急にどうしたら良いのか分からなくなってきてしまった。

「お前さん達の軍資金など訊くまでも無い。ワシから言える事はただ1つ。お嬢ちゃん達も稼げ」

クレトはアン達の資金力など訊くまでも無いと思っていてしかしそのアン達が短期間で300万ゴールドを稼ぐには働くしか無いと感じていて起業する様に提案した。

「ど、ど、どうやって……!?」

アンはどうやって稼いだら良いのか分からなかった。

「そんな事は知らん!何をして稼ぐかは嬢ちゃん達が考えて決めろ。だがワシから助言するなら働き者のお嬢ちゃんがさっき言ってただろう。工作員も騎士団も治癒院も卵達も持ってるんだと。だったらそれを使ってレンタル業でもしたらどうだ?」

クレトはレンタル業を提案した。

「ど、ど、どうしよう……!」

アンはどうしたら良いのか本当に分からなかった。

「でも名案かもしれません。レンタル業なら所有権を維持しながら貸し賃(ちん)を稼げますし、魂に限らず直接売り買いをすれば粗利(あらり)を稼げますし」

レイナはいつか起業しようと思っていた為この際の起業に前向きではあった。

「わたくしは魔法の世界の女神ですので魔法の世界ならではの資源を提供出来ますしその世界での魂の試験運用も出来ます。わたくし自身1人でそれも短期間で300万ゴールドという大金を工面出来るとは思えませんからぜひみんなの力を合わせて商売したいです!」

マナリスも起業に乗り気だった。

「その意気だ!お嬢ちゃん達には300万ゴールドで売ってやるぞ!」

クレトは若者達が頑張ろうとしているのを応援したかった。

「よっしゃあ!みんながそう言うんだったらやってやるわよ!とことん稼ぐわよ!おー!」

アンもみんなの熱気に当てられてやる気がみなぎってきた。

かくしてアン達は300万ゴールドを稼ぐ為起業を決意したのだった。

後書き

クレトは酒好き、スナックのママ好きの気の良い優しいおじさんです。

ちなみにクレトは喧嘩も強く暗黒街で最強の一角の半グレ集団を率(ひき)い店にみか占(じ)め料を取りに来たランドルをこぶしで解(わ)からせています(笑)

まぁクレトとランドルはその時からの付き合いが有りクレトの仲介屋は老舗(しにせ)で人情味の有るお店という訳です。