[R18] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 15話 科学の世界の女神 – 容疑者 (ティアラの視点)

前書き

青年男性向け – ソフト – R18

第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)

第 15 / 28 話

約 4,400 字 – 5 場面 (各平均 約 880 字)

1/5.「お帰りなさいませ」

ティアラは行方不明になったアンを見つけ出し、アンの自宅で待っていた1号に預けると、自分の執務室にテレポートで帰還した。

「お帰りなさいませティアラ様」

するとティアラに仕えている天使プリシラがお辞儀しそう言ってきた。

「ただいまプリシラ」

ティアラはプリシラにそう返事すると執務椅子に座った。

やっと落ち着けたわ……。

「お疲れの様ですわねティアラ様」

そう言いながらプリシラはティアラの前にお飲み物とお菓子を配膳する。

いつもそうなのだが今日もティアラは忙しくどこかくたびれていた。

「そうなのよ~。嫌になっちゃうわ」

(原因はお分かりでしょうに……)

「もう少し宇宙の規模を小さくなさるか部署や長官などを増やしてみてはいかがですか?」

ティアラがいつも大変そうにしているのは宇宙を広くし過ぎなるべく自分で決済していたからだった。

なので当然宇宙を狭くし自分で目を通す仕事の量を減らせば自ずとそれだけ楽になるのだ。

「ダメよ、手は抜けないの。頑張るって約束したんだもの」

ティアラはアベルとの約束を破らないためにも自分に出来る限りのベストを尽くす事が座右の銘になっていた。

2/5.「ご報告がございます」

「さようでしたね。しかしお寛ぎの間が無く申し訳ございませんが、ティアラ様ご報告がございます」

プリシラはティアラに謝罪した。

「いいのよ、いつもの事じゃない。――で、その報告って何なのかしら?」

(良い報告が聞けると良いのだけど)

「アン様の勇者の魂の追跡は現在継続中ですが手がかりがございません。またアン様の勇者の魂が誘拐された事やアン様のその関与の仕方、そもそもなぜそれが誘拐だと断定出来るのか、その他アン様が天界を彷徨(さまよ)っていた事といった情報の伝達が早過ぎます」

そうよね、早過ぎるし色々とおかしいのよ。

「暗殺」なら分かるけど「誘拐」まで直後に情報が知れ渡っているのはおかしいわ。

闇組織がわざと情報を流出させた可能性もあるけれど、そうとは思えない。

身内にスパイがいるとは思いたくないけど……。

先ずはアンの成年パーティーの参加者を調べてみるしかないわね。

これは女の勘だけど、犯人はどこぞの女神かしら。

だって昔のわたくしだったらアベルの魂なら盗んでるもの。

今のわたくしでもそうね。

ま、あの魂がアベルの魂だと気づいているのはきっとわたくしだけでしょうから、気に入らない子が優秀な勇者を手に入れたからむしゃくしゃして盗んでしまったといったところでしょうか。

アンはあの性格ですから反感も大なり小なり買っているでしょうし。

むしゃくしゃして盗んでしまうだなんて今のわたくしには到底 考えられませんが、昔のわたくしだったら……。あり得ないとは言えないわね……。

それに、成年の女神ならわたくしのあのパーティーの意図に気づかない訳がないでしょうから、犯人はきっとまだ若い子だと思うのよねぇ。

成年パーティーといった銀河内の行事は銀河担当の神が銀河内の神々をまとめて導いているので、世界神が一女神の成年パーティーを主催するのは前代未聞の事であり、出席したほとんどの成年の神々はアンの後ろには世界神が付いているという意図を理解していた。

3/5.「『』を調べてみて」

「先ずはアンの成年パーティーの参加者を調べてみて。特にアンの同世代の女神から」

そうしたらすぐに見つかる気がするわ。

「かしこまりました。――ところでその、ティアラ様。申し上げにくいのですが」

プリシラはティアラの命令を承知したが訊き辛い事だが尋ねたい事が有った。

「いいのよ。言ってちょうだい」

わたくしは言いにくい事でもちゃんと言ってほしいのよ。

「これは公務ですか?それとも私務ですか?」

公務なら公的な部署を利用できるが私務なら自分達のチームで対応しなければならないのでプリシラはこの案件がそのどちらなのかをハッキリとさせておきたかった。

「公務と私務の両面はどうかしら?公務で踏み込めない所は私設の天使達で踏み込むのよ」

カトラスのような自己責任主義の世界神がいる一方で、ティアラは自由主義と管理主義の両面体制で世界を運営している。

つまりティアラは神々による犯罪や治安悪化を許してはいなかった。

「それは名案ですね。早速取り掛かってまいります。――それでは失礼いたしました」

――プリシラは早速ティアラの命令を下に伝達するためお辞儀してそう言うと退室していった。

わたくし、貴方に誇れる女神になれているかしら……?

ティアラは昔なら今のアンのように慌てて向こう見ずにとんでもない選択をしていたかもしれないが、アベルに目的と理念と方法論を説かれ鍛えられ、世界神になってからは「魂ならいずれ取り返せるわ」と女神として長期的に物事を見てどっしりと構えられるようになっていた。

かくしてティアラはアベルが贈ってくれたティアラを見つめながら進展を待つ事となった。

4/5.「『』はいかがでしたか?」

そして闇オークション後――。

「お帰りなさいませ。オークションはいかがでしたか?」

――プリシラは帰宅したティアラに挨拶し訊いた。

「ただいま……全然駄目だったわよ……」

ティアラは落胆(らくたん)していた。

なぜならアベルの魂を手に入れる為に自分の全てを差し出そうとしたのにその願いが叶わなかったばかりか別室で放置され重要参考人であるアーベルは失踪してしまったのだ。

「駄目だったんですね……?」

プリシラはティアラに核心を訊いた。

「ええ、駄目だったわ。落札出来たと思ったのにあの支配人のアーベル、私達を騙したのよ。それでアベルの魂を持って失踪よ。ほんと嫌になっちゃう」

ティアラは愚痴を言いながらプリシラが淹(い)れた紅茶を飲んだ。

「それは大変でしたね……」

ティアラがアベルを取り戻せなかった事にプリシラも落胆した。

「でもまだ手掛かりは有るわ。暗殺者が誰なのか突き止めればどの仲介屋を使ったのか分かるし、その仲介屋が誰と取引したのかが分かればアベルに近付くわ」

ティアラはもう長い事アベルを探し続けているしこの程度の事でへこたれる事は無くむしろアベルがいる事が分かっているし手掛かりも有る為アベルとの再会は時間の問題だと希望を持って向き合う事が出来ていた。

「そうですね。しかしアベル様が別の世界に渡っていれば厄介(やっかい)です」

プリシラは懸念(けねん)を述(の)べた。

「そうね。別の世界なら勝手な捜査は違法よ」

ティアラはだからこそ早い内にアベルを取り戻したかった。

5/5.「『』が見つかりました」

そして進展がありプリシラが報告しに来た。

「ティアラ様、アン様の勇者の件でございますが、容疑者が見つかりました」

早かったわね。

「誰だったの?」

わたくしの女の勘が当たったのかしら。

「アン様の御学友(ごがくゆう)の女神レイナ様です。こちらがその報告書になります」

あら、やっぱり女の勘も捨てたものではないわね。

「あの子だったのね。どれどれ」

ティアラは女神レイナの事を少しだけ知っていた。

ティアラはプリシラが手渡してきた報告書を受け取り、――読み始めた。

*「捜査の責任者を務めた捜査官ブレンダから「女神アン様 勇者暗殺魂誘拐事件」の本時点でのご報告申し上げさせていただきます。――私達ブレンダ班は女神ティアラ様がおっしゃった『アン様の成年パーティーの参加者を、とりわけアン様の同世代の女神様』から捜査してくださいのご命令通り同パーティーの参加者の中の、とりわけアン様の同世代の女神様から捜査を始めましたところ、急に羽振りが良くなった女神様がおり、その女神様に事情聴取を行ってみたところ大変挙動が不審でございまして、調べてみると自惑星で得たとは思われない程の資源等の莫大な資産を保有しており、不正取引を行って得たものと思われ、その時期が本事案と被っている事から容疑者が本事案に何らかの関係をしていると見て捜査を進めております。――報告は以上になります」*

そしてプリシラはタイミングを見計らいティアラが最後まで読み終えると言った。

「此度(こたび)の報告は以上になりますがいかがなさいますか?」

たまにとっても裕福な神っているのよねぇ。

全て裕福な神が違法な手段で資産を築いたとは言えないし、レイナちゃんだって真っ当な手段で資産を手に入れたのかもしれないから、たくさん資産を持っていたからって悪事に関わっていたと断定してしまうのは可哀想よねぇ。

「わたくしもレイナちゃんの取り調べにあたるわ。そのように手筈(てはず)を整えて」

わたくしもレイナちゃんに直接会って自分の目と耳で事の真偽を見極めなければならないわ。

「かしこまりました。そのように手筈を整えてまいります。――それでは失礼いたしました」

かくしてレイナが関わっているかもしれないと捜査報告を受けたティアナは自分の目と耳で事の真偽を確かめるためレイナの取り調べに自分も加わる事を決意した。

後書き

ティアラは大分(だいぶ)手段を選んでいます。

要するに綺麗な手段から採っていっているという事です。

まぁ一線は超えずに目標を達成出来るに越した事は有りませんからね。

例えば毒の成分からしてもアンリの様子からしてもアンリのお抱えの職人が関わっている事は既に分かっていますがアンリが話そうとしなかったので特に追及はしていませんが他の選択肢が無くなった時にそこを突くという感じです。

また暗黒街の暗殺ギルドや職人ギルドとも今後も良好な関係を続けていく為にも揉めないに越した事は有りませんが他に選択肢が無くなった時に強制的に情報を開示する様に迫るという感じです。

まぁ例の毒を作った職人から誰に売ったのか訊き出せば少なくとも簡単に手掛かりは掴めますからね。

しかしまぁ今回はオスカルからの「素人(しろうと)犯行説」を信じアンの同級生を突(つつ)いてみたらあっさりと容疑者が見つかったという感じです。

まぁティアラがアンの同級生からの嫉妬(しっと)も意図的に煽(あお)っていたのは目的の為とはいえ恐ろし過ぎます(怖)。